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【Grachan30】4年2カ月振りに実戦復帰の理由、昇侍―01―「格闘技は潰しがきく」

Shoji【写真】将来への不安が解消すると、その行動力は加速する (C)MMAPLANET

13日(日)に東京都大田区の大田区産業プラザPIOで開催されるGrachan30。同大会で昇侍が4年2カ月振りに実戦の舞台に戻ってくる。

キックでも活躍したストライカー、元ライト級KOPでDEEPではフェザー級王座にも挑戦している彼は30歳で格闘技から身を引いた。

ヨアキム・ハンセンの教え子、ジャイカブ・グルゼゴーゼックと対戦するにあたって、MMAから離れた理由と再び戦うことを決意した背景を昇侍に尋ねた。


――4年2カ月ぶりの復帰戦が、近づいてきました。その前に2013年6月のチェ・ドゥホ戦で昇侍選手が引退を決めた理由を今一度教えてください。

「ちょうど30歳になる年で、自分の将来を本気で考えなるようになりました。格闘技はリスクが高いスポーツで、アルバイトをしながら選手をメインに生きていくは体だけでなく社会的にもリスクがあります。ファイターは僕より実績のある選手でも将来の保証がないのが現実でした。自分はかなり先々の方を考える方だったので、そのリスクと格闘技を続けることを天秤にかけたんです。

そうしたら格闘技を続けるには圧倒的なチャンピオンに君臨するか、UFCで実績を残すしかないという結論に至りました。僕は本気で世界のトップで戦うことを目指していたので、チェ・ドゥホに勝てないなら先はない。

日本でトップになっても、それでは食っていけない。現状のままでいても、それは人生におけるリスクを高くしていくことでしかないと判断したんです」

――現状維持では、最終的に取り返しがつかなくなると?

「ハイ。それだけ厳しい世界だと思っていました。でも、格闘技は好きだし、続けなかった。僕の高校の時の野球部の同級生で大学4年の時にドラフト1位でプロになった友人がいます

その彼ですら、活躍できなくて戦力外通告を受けました。で、トライアウトで拾われて違うチームでギリギリ生き乗っています。それがプロの厳しさ。いくら野球が好きでも、それだけでは続けることはできない。

それだけもらっている額が高額なんで、現役でいるにはシビアな現実を突きつけられます。格闘技はその点、敷居が低い。実入りも少ないけど、続けようと思えば続けられる。でも、将来を考えると続けるだけになる。チェ・ドゥホ戦は僕が、世界のトップとして活躍できるかどうかトライアウトだったんです。

そして結果を出せなかった。周囲はもってやれると言ってくれる人ばかりでしたが、そこは腹を決めて戦ったので格闘技から離れたんです。僕の中での戦力外通知、だから引退という表現を使いませんでした」

――そういうことだったのですね。格闘技から離れた後、チェ・ドゥホの活躍は追われていましたか。

「誇らしかったです。UFCで活躍しているチェ・ドゥホが『昇侍との試合は、もうダメだと思った。本当に厳しい試合だった』と言ってくれていて。自分のやってきたことに対し、胸を張れるという部分もありました」

――またできるという風には思うことは?

「なりました。でも、もう決めていたので。ラーメン屋で修行もしていましたし」

――それが、またMMAの試合に出ようと思ったのはなぜでしょうか。

「ラーメン屋で2年ほど修行していたのですが、スポーツをしないことが凄くストレスになっていました。ずっと好きなことをやってきたので、将来のことを考えての判断だったのにストレスを溜め続けて……。

だから千葉から東京に戻ってきて、今所属しているトイカツ道場で格闘技の仕事をしながら、また戦える時が試合に出たいと思うようになったんです」

――そこで将来への不安は解消できたのでしょうか。

「トイカツ道場では池袋と渋谷の宮益坂の2店舗で代表をさせてもらっていて、自分の好きな業種で安心して働くことができる。そういう信頼感を持つことができました。

格闘技では食えない。そんなイメージをトイカツ道場と戸井田(カツヤ)さんが払拭してくれました。格闘技でも儲かる。自分は将来的に故郷である三重の名張市出身に戻り、ジムをやろうと思っています。近鉄だと鶴橋から1時間ほど、三重といっても大阪のベッドタウンです。

格闘技を続けても潰しがきく。フィットネスに割り込む、ビジネスチャンスはいくらでもあるので、もう一度試合に出てまた、上を目指そうと思います」

<この項、続く>

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