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【Special】月刊、青木真也のこの一番:7月編─その弐─春日井たけし×チョ・ナムジン「共感を呼ぶ」

Kasugai vs Jo【写真】タフな試合、立派な勝利。そのなかでも勝った春日井に青木は注文をつけた(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

Shinya Aoki背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ7月の一戦=その弐は7月15日のHEAT40から春日井“寒天”たけし×チョ・ナムジン戦を、技術面から存分に語らおう。


■『ギロチンの攻防がケチをつけた』

――では続いての一番は?

「春日井とチョ・ナムジンの試合ですね。1Rに春日井の四つからのテイクダウン――からのチョ・ナムジンのギロチン。この攻防が凄く良かったと言われた試合にケチをつけましたね」

――それはどういうことでしょうか

「チョ・ナムジンはギロチンから上をとって、フィニッシュできていた。つまり春日井は命拾いをしたんです。あのグリップのおかげで。それ以前に春日井もあの形になる状況なら、自分の肩を前方に入れて首を守らないと。その少しの反応があれば、危ないギロチンは食らわない。

でも、春日井はできていなかった。だからアゴにギロチンを引っかけられ、そこから絞められた。肩が入っているとテイクダウンした直後にもスペースもできるからパスガードにも結び付く。それがケージレスリングなんです」

――なるほどぉ。その細かなディティールが春日井選手は、少なくともあの試合ではできていなかったと。

01「加えてチョ・ナムジンのクラッチの仕方ですね。彼は左右の五指を握る……インディアングリップで組んで引っ張るようなギロチンでした。あの組み方だと体力に頼ったギロチンになります。フライ級のなかで体力のあるファイターだから、ああいう絞め方を選択しているのでしょうけど」

――青木選手なら違う?

「そうですね。手刀の部分を当てていたし。これは、多くの選手の間違いと同じです。それよりも外側、手の甲か真っすぐきた部分を当てないと。そして親指手前、四本指が外側で掴んでいるとハイエルボーにならない」

――つまりタイトにならないわけですね。

「親指も揃え、五指全てを外側にして掴めばハイエルボーになる。このクラッチはMMAのグラップリングをやるうえでタブーなんです。疲れるから。多くの局面では、僕もこの掴み方はするなと言っています。ただ、ギロチンでははまる」

――マルセロチンと同じだ。

「なおかつマウントからの仕掛けだと、四指で組んだらヒジをマットにつかせることができない。これが五指だと簡単につけることができる。だから……タイトとかそういうことでもなく、形にはめ込むだけで力を使うことなくフィニッシュできるんです。歯車が噛み合うというか、パズルがピタッとはまるようにギロチンが極まります」

――なるほどぉ。凄く面白いです。

「チョ・ナムジンはギロチンとアームロック主軸で、ケージレスリングを成立させている。きっと柔術ゲームを通過していないのでしょうね。だから細かいディティールがないのかと。それでも、しっかりと練られているスタイルで。チームMADというジムの背景が気になりますね。

04あと春日井に関していえば、これは足関節でも腕十字でもないということです。スクランブル中のギロチンというMMAの主軸にある攻防なので。テイクダウン後にギロチンを仕掛けれ、かつマウントを許した。そしてフィニッシュされる状況に近づいた。

トップをキープされたということも含め、春日井がこれからさらに上を目指すのであれば、非常に大切なことだと受け止める必要があると思います。

にしても、あの春日井の頑張る姿勢は共感を呼びますよね(笑)。ギロチンの攻防にケチはついたけど、なかなかできる試合じゃない。あの試合は共感と好感、二つの感情を見ている者に呼び起こすことができます」

■『キャリアの積み上げ方や話していることを聞いていると……』

――青木選手的にも共感を呼ぶ部分がある?

02「個人的に春日井の右ワキを差した時の小外掛け、左ワキを差したときに背後に腕を通して相手の左手を取って殴る。あの裏通しと後方へのテイクダウンというコンビネーションは、僕の好きな形なんです。だから、共感というのは僕の感情ですよね(笑)」

――似たスタイルかもしれないですね。

「四つが強い。それを自分の型にしている。それが春日井の強さ。こうなったら、フィニッシュにいけるというハイスパートな流れを持っているのも良いですね。

ぶっちゃけあんまり頭が良くないんですよ――きっと」

――う~む、青木選手が発した言葉で、かつ対象が春日井選手なので自分も書かせていただきます(笑)。

「これまでのキャリアの積み上げ方や話していることを聞いていると、そう思います。だからUFC、UFCって言っているけどオプションを持っている方が良い。でも、試合に対する姿勢はどれだけやってきたのかというのが伝わってくる選手です。

03バックを取ったらフィニッシュという流れがある。そこを信じられるだけのことを積んできている。それがあると試合が創りやすくなります。この一芸がある選手なので、僕は春日井に乗れます。

同様に僕がエドゥアルド・フォラヤン戦でテイクダウンから抑えたにも関わらず逃げられ、相手に流れを譲ったことがあるように、春日井もあのパターンを逃げられることがあるかもしれない。自分の型を持っている選手と、そうでない選手の戦いではそういうことが起こる。それがMMAの妙で、だからMMAは面白いんです」

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