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【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月編─その参─シャオリン×ケンフロから北岡悟と愛を語る─01─

Aoki & Kitaoka【写真】急遽、実現した青木×北岡対談。AK砲対談と昔懐かしいフレーズを用いたい──純度100パーセントの本音トーク(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ──作業の都合でかなり遅くなってしまいましたが──5月の一戦=その参は何と4月のワールドプロ柔術からヴィトー・シャオリン・ヒベイロ×ケニー・フロリアンの柔術マッチに──と思いきや、その主題は攻防でなく格闘幸福論に転じ、ロータス世田谷の金曜YBTでの練習を終えて、帰り支度をしていた北岡悟も交えて、語らうこととなった。

思わぬ展開の議題は、北岡の刹那的にも感じる格闘技愛に。本音トークどころか、本音しか出てこない──もはやプライベートトークの様相を呈した対談だからこそ、両者の格闘技への想いが詰まっていた。

【「北岡さん、愛ですよね?」(青木真也)】

──日沖選手のKO負けに続き、青木選手が選ぶ5月の一番。最後の1試合は何になりますか。

「これは5月でなくて、しかもMMAでもなくて申し訳ないのですが、アブダビ・ワールドプロで行われたシャオリンとケンフロの柔術マッチですね」

──そこに来ますか(笑)。

「凄く良いじゃないですか。あの試合がリスペクトされて実現するって」

──今回は試合内容云々よりも、やはり格闘技幸福論に話が向いていますね。

「だってシャオリンですよ。今回、シンガポールに長南(亮)さんも来てくれて、レアンドロ・イッサが『柔術の試合に出るんだ?  俺もMMAを引退したら柔術に出たいんだよな』って話しているんですよ。その空気感が凄く良くて。

でも、俺はそれはできないなって思いながら眺めていたんです」

──青木選手はそうなれない?

「僕は柔術にそこまで熱くなれないので。やっぱりノーギが好きなんですよね。でも、柔術界にはシャオリンとケンフロをレジェンド対決で組む空気がある。それは良いですよね」

──ケニー・フロリアンに聞くと、アブダビへ行く飛行機もビジネスクラスを用意してくれるそうです。そしてFOXのUFC関係の仕事を1週間休暇扱いにして、シャオリンと戦ったそうです。1週間前にノロウィルスに掛かり、体調は最悪だったのに(笑)。

「あの場があるから、そういう風になれる。僕、桜庭(和志)選手と戦った時、皆には真意が伝わっていなかったかもしれないけど、どこまでいっても愛なんだって言っていたじゃないですか?」

──確かに。あの時点で、青木選手のJ-MMAからの解脱が始まっていたのですね。

「愛がない、愛が薄いと感じていました。シャオリンもケンフロも成功者です。かたやNYにジムを出し、ケンフロはUFCのコメンテイターとして活躍している」

──ケンフロは前の家を3億5000万円で売り出して、今は「少しゆっくり暮らすんだ」とビーチ沿いに引っ越したようです。

「MMAにも柔術にも、愛が根底にあってビジネスが成り立ったと思います。そのケンフロが道着を着て、懸命に勝ちに行ってシングルを仕掛けたところで、クロックチョークでシャオリンがぶった切る。もう、あのマッチアップで十分。愛、愛の固まりですよ」

──そこには対して、日本は……という気持ちが見え隠れします。

「愛が薄い。愛がない」

──でも愛だけでは食えないですよね。

「そうなんですけど、食えたからって愛がないと凄く寂しいですよ。チャトリが格闘技をやっているのって、そういう事だと思いますよ。愛なんですよ。

北岡さんなんて、まさにそうですよ。愛を求めている。愛ですよね?(と北岡に尋ねる)」

北岡 えっ、何?

「格闘技に愛を求めていますよね?」

──もう、北岡選手もこっちに来て、一緒に話しましょう。格闘技への愛、格闘幸福論について。

北岡 愛? 



【「愛のない奴らとの勝負」(北岡悟)】

──北岡選手の格闘技愛は今、非常に刹那的に感じます。

北岡 あぁ、そこですか。青木も試合前なのに、そこに関してLINEが来ていましたね。

「そこね、僕もそうだし……高島さんも北岡悟だから、そこまでやるのかって思っちゃうんです」

北岡 高島さんにもメッセンジャーで、プロの選手が増えて現状がこうなったという報告をしたら、マネージメントフィーを取っているのかとか……、将来を考えろとか言ってきて。もう放っておいてくれって思いましたよ。

ジムを出した時に記事にしてくれて、俺のやっていることを報じてくれたから儀礼的に報告をしただけなのに。ほんと、結論は放っておいてくれって話ですよ。

「究極、放っておくのも愛なんですよ」

北岡 そんな心配されても、こっちのやっていることに口を出しているだけで。ああしろ、こうしろって言われたくない。

「いや、それも分かるし言う気はない。自分達が何かできるわけじゃないんだけど、少しでも自分が好きなモノ、良いと思うモノに対して、豊かに生きてほしいっていう気持ちだと思うんですよ」

北岡 僕は豊かに生きているから大丈夫です。

「なんだけど……生き甲斐として豊かに生きてほしいし、経済的にみても豊かに生きてほしいって話で。だから、RIZINでなくてDEEPやパンクラスで戦っても良いんじゃないかって、僕なんかも思うし、それは高島さんも思っているだろうし。

結局、それは北岡さんがやってきたことを尊敬しているし、上から目線になっちゃうけど認めているからなんですよ」

北岡 う~ん、なるほど。

「そうですよね?」

──今日の格闘技への愛という部分で話せば、北岡選手は格闘技に愛があるから、愛のある人と戦っていかないと精神的にきついのではないかという気はしています。

「そう、それを俺も思うわけですよ。北岡さんに対して」

北岡 だから真面目な話、そういう愛のない奴らとの勝負なんです。

「それも分かるけど……」

北岡 それがテーマ。

「俺が思うのは、だったらもっと北岡さんのことを認めてくれる……例えば、4月に試合を組んでくれる人とちゃんとやっていくほうが良いんじゃないかって思っちゃうの!!」

北岡 う~ん、言わんとすることは分かります。

「自分が好きな人たちと、そういうコミュニティで、気持ちの良い空間で戦っていく方がって」

北岡 それも知っています。分かっています。僕もジムをやっていることで、それをより考えるようになっていますし。僕のジムに来るヤツは、本当に僕のことを慕っていると思う。本当にかなり心地良いし。

何よりも皆、一生懸命で。凄く気持ちが良い。ただ、それだけで満足しているわけじゃない。分からない人には分からないっていうのも理解している。それも覚悟して勝負しているので。

「そうだ、心地よい空間であってほしいとのいうはありますよね」

北岡 だから小さな世界にいるなっていう葛藤もあるから、一応僕なりに勝負したいんです。やっぱり、そうすると日本だとRIZINになる。

──青木選手もそういう時期があると思うのですが、不満もパワーになる。反骨心が自分の背中を押してくれる。

北岡 ハイ。

──同時に年を重ねると、反骨心が力にならないという自分の現状を踏まえて、北岡選手に今の間にっていう老婆心から色々と言ってしまうんですよね。現役としてやっていける間に蓄えを残してほしいと。蓄えがなかったら、ゴン格が潰れた時点で、自分の家族なんて路頭に迷っていたでしょうし。ただし、安定を北岡選手に求めると格闘家として弱くなってしまうだろうなとは思うのですか。

北岡 弱くなるというか、それができるならとっとと早いうちに安定させていたと思います。これは青木に言われたことがあるのですが、『リスクのある方を選んで生きている』と。本当にその通りで。僕は自分の法則のなかで生きているので、そこを他人に口を挟まれて、崩す気はない。

「それも分かるけど、皆ね……北岡さんに……、そうだな、でもそうやって言ってもらえる空間も気持ち良いもんなのかもしれないな」

北岡 高島さんが言っていることは正解、当たっていると思っています。でも、言うことを聞くつもりはないです。

「いや、聞かなくて良いのよ。だって、僕の言うことだって聞きゃあしないんだから。だから、それで良いんだけど、そういうことを心配してくれる人がいる空間が心地良いわけで」

北岡 言ってくれる人がいるのは良いこと。それも分かっているけど、それだけのこと。そうやって正論を言われても、イライラするだけだし(笑)。途中でため口で返答しちゃって、丁寧語に打ち直したり。

──ハハハハ。

「北岡さんの場合は、本当に格闘技に愛や幸せを求めているから」

北岡 幸せを求めているわけじゃなくて、こうすると決めたからこうしているだけで。

<この項、続く>

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