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【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月編<その参>島村裕×なおKING&インディMMA論

Yutaka Shimamura【写真】このフィニッシュで島村裕への注目度は明らかに変わった。これも技の持つ、力だ(C)MMAPLANET

過去、1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ3月の一戦=その参は2月26日のGrachan28から島村裕×なおKINGを語らおう。

島村が見せたローリングサンダーこと腹固め、もしくはヒジ固め、そして脚固めでもある技術から、いわゆるインディーMMAへの見解を青木が話した。


――では、この一カ月の注目試合最後の一戦は?

「あのグラチャンであった……腹固めで終わった試合ですね」

――おぉ、ローリングサンダー!! 島村裕×なおKINGの一戦ですね。

「あの技、柔道では腕ひしぎ脚固めとされるみたいですね」

――島村選手自身は腹固めからきていると言っていました。

「はい。サンボで亀の相手の腕を取る、ヒジ固め的でもあるし。何年か前のサンボの世界大会の決勝で極まっていて、興味をもって研究していた時期があるんです。言ってみれば、キムラです。極まった形は」

――体を起こすだけにとどまらず、足を伸ばして肩がもげそうに見えます。

「アレね、きっと……手でやると良心があって、あそこまでできないですよ。心が痛む、手で極めるのは」

――つまり、青木選手も心が痛んだということですか?

「聞こえますからね。アームロックなんて絞れないですよ」

――今更ながらですが、それなのに中指を立てたわけですね。

「それは……試合だから。試合だから、しょうがない。でも、練習では良心があります。腕×腕は大変。足でやると一気にいける。良心の呵責とか考える暇もない。一気に極め切ってしまう。躊躇なく、いける。大したものです」

――べリべリと筋線維がはがれる音がするそうです。

「分かる、その感覚。でも、アレは怖いッスよね。傍であの極まり方を見ていると。柔道でも流行しているんですけどね。日本だと僕らの世代で、谷亮子なんかとやっていた土浦日大に中島英里子っていう選手がいて。彼女も使っていましたよね。10年、15年前の技がまた流行っている。そういう風に回ってきている技の一つですね」

――MMAでも有効だと考えられますか。

「使えます。ただスクランブルとかで、シングルを取ってきた相手には使えるんだろうけど、仕掛けられるシチュエーションは決して多くはないと思います。

誰しもが使って、凄く流行する技ではないでしょうね。見た目のインパクトも強くて、今回の試合で話題になっていますけど、最終的にはフィニッシュのメインストリームになる技ではない。

最終的には警戒されるようになると、カドワキチョークのような形になっていくのではないかと僕は思っています。極めでなく抑えてからのフィニッシュに。

それでも柔道で流行っている技がMMAで見られる点が面白いですね。ただし、Grachanという場だから出る技なのか……」

――戦いのステージが挙がれば、対戦相手も食わなくなる?

「それはしなしの首投げほどではないけど、そういう種類の技のようにも思えます。と同様に、僕は島村選手のことは全然知らなかったけど、吉田道場出身で武大卒業してMMAであの技を使う。素晴らしいことだと思います。

それがまたGrachanというプロモーションの良さではありますよね。キャリアを創り上げやすいプロモーションです。Grachan、HEAT、そしてGladiatorという大会は。自由度があるプロモーションは、それはそれで面白いです。

DEEP、パンクラス、修斗――御三家以外のタイトルは認めないっていう人もいるけど、僕は認めてあげたい。そして、御三家からそこで戦うよういなった選手に関しては、麻薬に手を出したという感覚です」

――それはいけないことだということですか。

「いえ、もう戻れないってことです。岸本なんかは頭が良いから、最後の勝負だということでそういう道を選択したんだと思います。それで、強い選手と国際戦を組んでもらっているし、島村選手もここからどういうキャリアを積んでいこうと思っているのか。

脚固めを持っているっていうのは、楽しみです。大澤茂樹を目標に、そこを足掛かりにするっていうのは新しいキャリアの積み方ですよ。そういう点でも面白い。

御三家以外でキャリアを積むのも時代の流れ。そこを否定するんじゃなくて、認めていく時代になっているんだと思います。御三家だ、インディーだっていっても個人戦。実際に戦うとどなるのか、分からないし。

そういう部分でも島村裕っていう選手は技、そしてキャリアの積み方でも注目です。そして昔からある技がリメイクされたように使われる点も、非常に面白いと思いました」

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