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【Pancrase281】クロスヒールと、その後の北岡悟<01>「分かるんですよ。組んだら──勝てるとかって」

satoru-kitaoka【写真】試合前のダークサイドではなく、ホワイティな北岡悟だったが根底には「MMAなめるなよ」オーラはしっかりと感じられた (C)MMAPLANET

2日に開催されたPancrase281で、レオナルド・マフラをクロスヒールで破った北岡悟。思いもしない決まり手、練習してきた流れでない試合での勝利に北岡は何を想うのか。

そしてマイクアピールからの今後の活動について、試合前の黒・北岡でなく──勝利後の白・北岡モードの彼に尋ねた。


──レオナルド・マフラ戦、クロスヒールでの一本勝ちから3週間が経ちました。

「もう、とっくの昔のような感じです(笑)。クロスヒールでの一本勝ちは……練習したことが出せない勝利で、やっぱり引き込んでしまったので……」

──引き込みに関しては、一本勝ちでも気になるところなのでしょうか。

「DJが怒るだろうなって(苦笑)」

──そもそも、作戦はどのようなものだったのですか。

「作戦的には相手は綺麗なムエタイを使う選手で、立ち方がキックボクシング的だというのは分かっていました。なので手が前に出てくると止まらない。打撃で僕がラリーできる相手ではない。ただし、これはMMAなので。僕も強いパンチや蹴りが全く出せないわけじゃないけど、彼とキックボクシングはできないし、やる必要もない。だから立ち会った時にどうなるのかな──と試合前から思っていました。

結果論でいえば、僕のほうがしっかりと立つことができて、向こうが崩れてくれました。で、触りに行った時に切られたんですけど、手を持つことができていたんです、確か。

で、なんか分かるんですよ。組んだら──勝てるとかって。だから触れるところまでいったので、引き込めば寝技の形にはもっていけると分かったというか……」

──つまり引き込んでヒールにいきましたが、それはテイクダウンをとってトップコントロールしなくても、勝てるという感触があって持ち込んだということなのですね。

「ハイ、瞬時にして組めば勝てると思いました。これも結果論ですが、レオナルド・マフラという選手には引き込んでヒールに入っても正解だったんです。結果論、そしてあの時の瞬間の判断としては。

でも本当はちゃんとテイクダウンして、ちゃんと上を取って勝ちたいんですけど」

──いみじくも『ちゃんと上を取って』という言い方をされましたが、格闘技としては『ちゃんと下になって』という戦いが存在するわけですよね。

kitaoka-vs-mafla「う~ん、でも下になるのはリスクの問題がありますからね。それにヒールの形を作る時にヒジ打ちを落とされているのも事実ですし。ただし、そこを言うと一発殴られても技を作るという覚悟があって仕掛けています。

だから、何か痛かったとかヒジを貰ったという記憶すらないんです。あとからファイトパスで試合を見たら当たっているように見えるんですけど効いていないし、逆にアレを落としてきたから足を捉えることができたんです」

──私はバルコニーから試合を見させていただいていたのですが、ヒジ打ちよりも北岡選手の極めのほうにばかり意識はいっていました。

「それだけ向こうには勢いがなかったということじゃないかと思います。あのヒジ打ちがあったから、足を持って来やすくなりましたから。

Xガードで作って、彼の右足を内ヒールで取って。足の取り合いをしても負けないという自信はありました。昔はヒールを極めるにはヒザの角度をつけないといけないという感じでしたが、今回のはストレートで極めたはやりのタイプですね」

──エディ・カミングスやホウジマール・トキーニョ流の?

「そうです、そう!! 彼らの動画なんかを見て、たまに練習でトライしていた技術なんです。足は少しやってみても良いかと事前に思ってはいましたが、いけるという感触がなければいっていなかったでしょうね。

と同時に僕も足関節に関しては周囲が思っているほど、それで取ってやるぞとかっていう気持ちではなくて、餌を撒くというか……コンビネーションの一つなんです」

──スイープ、あるいはバックテイクの?

「ハイ、その通りです。つまりマフラも危機察知能力が低かったというか、言ってみれば戦極の頃の僕の相手だったら、あの形にならないよう懸命に対処していたと思います。僕のこともあまり知らなかったようですし。いますよね、あまり他に興味がなくて強い人って。そんな感じで13勝2敗とかなんで弱い相手ではなかったですよ」

──なるほどぉ。いや、深い。格闘浪漫の部分ですね(笑)。

「マフラが戦ってきたMMAにはない形だったんだと思います」

gamrot-vs-pezinho──前夜にKSW36のストリーミングをチェックしていて、ライト級王者のマテウス・ガムロがヘナト・ペジーニョとの防衛戦で北岡選手と同じように右足に内ヒールを仕掛け、左足を被せてきたところでクロスヒールという展開を見せていたんです。ペジーニョはここで左足を抜いて修正を図ったところで、そのまま最初の狙いの内ヒールを極めたのですが、北岡選手も同じ流れのなかでクロスヒールで勝って、24時間以内にクロスヒールの仕掛けを2度も見られたことに驚きました(笑)。

「へぇ、もう僕のような選手もあんまりいなくなってきたと思っていたんですが、面白いですね。いや、ホントにマフラは反応していなかったというか、僕もクロスヒールなんて試合で極めたことがなかったんですけど、『掛けてみるかぁ』ぐらいの感じで仕掛けると、バキバキいっていました。

そのまえの足の入りが凄く良かったので、ヒザが鳴りまくって即タップしましたね」

──クロスヒールはRINGSでくるくる回る展開は見たことがあったのですが、サンボはともかく打撃有りの実戦で極まったという記憶はありません。

「きっと修斗やパンクラスだったら、探せばクロスヒールで極まった試合があるとは思うんです。でも、20年ぐらい遡らないと……今のMMAでは僕の記憶にはないです」

<この項、続く>

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