【ADCC2013】クロン・グレイシー、全試合一本勝ちで完全優勝
19-20日(金~土・現地時間)、中国の北京でアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション選手権が開催された。神童マルセロ・ガウッシア引退後の77キロ以下級は、父ヒクソンの姿勢を受け継ぎ、終始攻め続ける姿勢を見せたクロン・グレイシーが全試合一本勝ちで初優勝を果たしている。
【77キロ以下級】
優勝 クロン・グレイシー(ブラジル)
準優勝 オターヴィオ・ソウザ(ブラジル)
3位 JT・トレス(米国)
<1回戦>
クロン・グレイシー
Def. by RNC
アンディ・ウォン
優勝候補筆頭クロン・グレイシーの1回戦の相手は、台湾のアンディ・ウォン。実はこの2人、2006年にLAで行われたプログラップリングイベント「X-mission」でも対戦しており、その時は競った内容の末にクロンが4-0でポイント勝利している。あれから7年、クロンは開始早々スタンドでバックを奪うと、ウォンを投げ捨ててチョークで圧勝。成長ぶりを見せつけた。
<2回戦>
クロン・グレイシー
Def. by RNC
ゲイリー・トノン
クロンは2回戦では、米国のゲイリー・トノンと対戦。トノンは初戦で日本の北岡悟と対戦し、北岡の足狙いを凌いでバックを奪い、チョークで一本勝ちを収めている。グレイシー・エリート・チームに所属し、まだ大学生ながら去年のノーギ・ムンジアルの茶帯ライト級で優勝し、GSPのトレーニングパートナーを務めたこともあるグラップラーでキーナン・コーネリアス、AJ・アガザームらともに米国を代表する若手選手の1人だ。
クロンはそのトノンに対し、序盤でバックを奪うとマウントに移行。完全に制圧した上で腕十字を極めにかかる。しかし、トノンは腕を伸ばされながらも動き続けて脱出。大いに場内を沸かせてみせた。加点時間帯が来た時に上にいたトノンは、両足担ぎを仕掛けたところからバナナ・スプリット(股裂き)を仕掛けるのと同じ要領でダイブすると、なんとクロンのバックを奪うことに成功する。ポイントリードされた状態で四の字フックを入れられてしまい、絶体絶命のピンチに陥ったクロン。しかし、北岡を倒したトノンのチョークを粘り強くディフェンスし、体をずらし続けて正対に成功する。
トノンの足狙いに乗じて上を奪ったクロンは、パスガードの猛攻を仕掛ける。たまらず背中をみせたトノンのバックに付くと、飛びつくように強烈なチョーク。トノンはたまらずタップし、クロンが大逆転の一本勝利を収めた。クロン必殺の腕十字を凌ぎあわやの場面を作ったトノンと、凄まじい攻撃力と、本人の言うところの「ウォリアースピリット」を発揮して劣勢を挽回してのけたクロン。今大会のベストバウトといえる内容だった。
<準決勝>
クロン・グレイシー
Def. by 腕十字
JT・トーレス
クロンの準決勝の相手は、ルーカス・レプリを倒したJT・トーレス。自ら下になり仕掛けていったクロンは、やがてJTの足を取りヒール狙い。JTが防いで体勢を立て直すも、バランスを取ろうとして床についた腕を取って十字でタップを奪う。ポイントを稼ぐのではなく、あくまで一本を狙いに行くという父から受け継いだ柔術にて見事に進出してみせた。
もう一つのブロックから勝ち上がったのは、今年のムンジアル黒帯ミドル級王者オターヴィオ・ソウザだ。2回戦で前UFCライト級王者のベンソン・ヘンダーソンを下すと、準決勝ではレオ・ヴィエイラと対戦。バックポイントを奪って勝利した。今回のレオは一回戦の山田崇太郎戦、2回戦のAJ・アガザーム戦と、相手のテイクダウン狙いを切り返して優位な体勢にもって来るという省エネ戦法に終始していた。
<決勝戦>
クロン・グレイシー
Def. by ギロチンチョーク
オターヴィオ・ソウザ
凌ぎを削り合うライバルといえる両者。去年行われた第1回メタモリス柔術では、クロンが終盤に腕十字を極めて一本勝ちしている。今回も激しい試合が期待されたが、試合は延々とスタンド戦が続く。前に出て行こうとするクロンに対し、下がり気味のソウザ。会場が静まり返るなか、業を煮やしたクロンのセコンドの父ヒクソンが、ソウザのことをチキンと罵る声が響く。さらにヒクソンがソウザをからかってニワトリの声真似をはじめると、レジェンドらしからぬ一方で、いかにもヒクソンらしいともいえる振る舞いに場内からは笑い声が起る。
この暴言を意に介さず、引き続きやや消極的なスタンド戦を続けていたソウザだが、15分過ぎにテイクダウンへ。クロンはすかざずワンアーム・ギロチンをカウンターで合わせる。青木真也も仕留めたこの技で瞬時でタップを奪ってみせ、ADCC初優勝を決めた。これまで世界最高峰の選手と互角の戦いを繰り広げながらも、ポイントにこだわらず一本を狙いに行くスタイルが災いしてか、なかなか世界タイトルに手が届かなかったクロン。それだけに、自身のスタイルを貫いて全試合一本勝ちの優勝は見事なものだった。