この星の格闘技を追いかける

【UFC191】対照的なキャリアを積んできた元世界王者対決オルロフスキー×ミア

Arlovski vs Mir【写真】ベテラン元世界王者は予想通り殴り合いの演じるのだろうか。それとも…… (C)GONG KAKUTOGI & MMAPLANET

5日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナでUFC 191「Johnson vs Dodson 2」が開催される。メインは大会タイトル名にある通りデメトリウス・ジョンソン×ジョン・ドッドソンのUFC世界フライ級選手権試合だ。

世界最軽量の頂点を争うメインがスピード&テクニック、そして戦術を全面に打ち出して戦う一戦なら、セミのヘビー級元王者対決=アンドレイ・オルロフスキー×フランク・ミア戦はその対極にある戦いになるだろう。

2005年2月にティム・シルビアをアキレス腱固めで破り暫定世界王者に就いたオルロフスキー。この王座はミアのバイク事故からの長期欠場に伴い制定され、結局この年の8月に早期復帰はないということでミアはタイトルを失い、オルロフスキーが正規王者となった。時まさにPRIDEの絶頂期で、ヘビー級の頂点にあったのがエメリヤーエンコ・ヒョードル。眩いスポットライトを浴びる人類最強の男に対し、オルロフスキーは裏番長的な存在だった。

シルビアに敗れ王座を失った後もUFCで戦っていたオルロフスキーだが、UFC人気の上昇に伴い知名度が上がると、さらなる好待遇を求め契約終了とともに新天地を求めた。当時のUFCの対抗プロモーションであるアフリクションに参戦した彼は、フレディ・ローチのボクシング指導を受け、打撃に磨きをかけ2009年1月に皇帝ヒョードルと対戦。ジャブで距離を制し、アッパーで追い込むなど、あわやのシーンを見せた。しかし、飛びヒザを狙った直後に右のオーバーハンドを被弾し失神KO負けに。

皮肉にも、世紀の大逆転負けは彼の評価を実力者としてさらに高めることとなった。その結果、アフリクションに続きUFCの対抗馬となったStrikeforceと鳴り物入りで契約をする。しかし、知名度&評価の上昇とは裏腹にダメージが蓄積していたオルロフスキーはここから4連敗を喫し、メジャーシーンから姿を消してしまう。そして、中堅規模で復活したプロエリートやONEで戦ったのちにWSOFと契約、ロシアやベラルーシでの試合を挟み、ストライクフォース後の戦績を5勝1敗としたところでUFCと再契約となった。

このとき、誰が本当の意味でオルロフスキーの復活に期待していただろうか。打たれやすさを自覚し、距離をとって相手のパンチを被弾しない距離で手数を増やすという戦いでブレンダン・シャウブを破ったものの、その評判は散々なモノだった。ところが、この一戦を機に相手の攻撃を受ける場所で打撃を振るうよう一念発起したベテランは、続くアントニオ・ペイザォン戦、トラビス・ブラウン戦でパフォーマンス・オブ・ザ・ナイト、さらにファイト・オブ・ザ・ナイトを獲得する連続KO勝ちを見せている。

最高峰の場で生き残るための最後の手段と思われた乱打戦開眼だが、それまでのリスク回避ファイトにより、打たれ弱さがある程度回復したのか、パンチを被弾しふらついてもKO負けに至らず、同じく乱打戦で居場所を確保する相手を倒すという──観客を最高に盛り上げることができる試合内容で再浮上に成功した。

一方、ミアはオルロフスキーとは違いオクタゴン一本槍のMMAファイター生活を送ってきた。UFC初出場は2001年11月、プロ3戦目のこと。これから先に触れたバイク事故によりブランクを経験するも、14年間で25試合をオクタゴンで戦っている。返上を余儀なくされたベルトは、2008年にミノタウロ・ノゲイラとのTUFコーチ対決を制して取り戻すも、あのブロック・レスラーに倒され王座陥落。引き続きショーン・カーウィンとの暫定王座挑戦にも敗れながらも、2012年5月にもジュニオール・ドスサントスと世界戦を経験している。

現時点で3度目の王座返り咲きは実現しておらず、ドスサントス戦後は4連敗を喫したミアだが、特筆すべきはずっとトップ戦線で戦ってきたことだ。ちなみにカーウィン戦後の対戦相手(カッコ内は勝敗)はミルコ・クロコップ(〇)ロイ・ネルソン(〇)ノゲイラ(〇)、ドスサントス(●)ダニエル・コーミエー(●)、ジョシュ・バーネット(●)アリスター・オーフレイム(●)、MMAファイターを目指すなら、一度は戦ってみたい世界のトップレベルと拳を交換し続けてきた。

そしてペイザォン・シウバ戦&トッド・ダフィー戦で連続秒殺KO勝ちし、今回のオルロフスキー戦に臨むことになった。ミノタウロやシルビアの腕を折ったことでも、その極めの強さは十分に知れ渡っているミアだが、倒して抑える展開が困難になる一方のオクタゴンで、彼は地道に打撃の練習を重ねてきた。ラッシュに押し切られる経験をしながら、オルロフスキーと同様にキャリアの終盤に乱打戦に打ち勝つことで活路を求めることとなった。

キャリアの積み方も、そのスタイルも対照的だった両者が行き着いたサバイバル戦法。本来であれば打ち合いのなかで寝技に持ち込むことができるオルロフスキーとミアだが、彼らにもうその選択肢は残っていないだろう。ボクシングを究め続けてきた者同士の乱打戦、それは出たとこ勝負でなく、経験値に基づいた末の殴り合い──大人の殴り合いといえる、オルロフスキーとミアの生き残り合戦だ。

■ UFC191対戦カード

<UFC世界フライ級選手権試合/5分5R>
[王者] デメトリウス・ジョンソン(米国)
[挑戦者] ジョン・ドッドソン(米国/1位)

<ヘビー級/5分3R>
アンドレイ・オルロフスキー(ベラルーシ/4位)
フランク・ミア(米国/10位)

<ライトヘビー級/5分3R>
アンソニー・ジョンソン(米国/1位)
ジミ・マヌワ(英国/7位)

<ライトヘビー級/5分3R>
ヤン・ブラホヴィッチ(ポーランド/12位)
コーリー・アンダーソン(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
ペイジ・ヴァンザント(米国/7位)
アレックス・チェンバース(豪州)

<ライト級/5分3R>
ロス・ピアソン(英国)
ポール・フェルダー(米国)

<バンタム級/5分3R>
フランシスコ・リベラ(米国/12位)
ジョン・リネケル(ブラジル/8位※)

<女子バンタム級/5分3R>
ジェシカ・アンドレジ(ブラジル/13位)
ラケル・ペニントン(米国)

<フェザー級/5分3R>
クレイ・コラード(米国)
チアゴ・トラトール(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
ジョー・リッグス(米国)
ロン・ストーリングス(米国)

<ライト級/5分3R>
ジョアキム・シウバ(ブラジル)
ナザレノ・マレガリエ(アルゼンチン)

※フライ級

PR
PR

関連記事

Movie