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【2014-2015】菊野克紀「アライアンスで高阪さんに習ってきたことが出せた」

Katsunori Kikuno【写真】笑顔で2014年を振り返る菊野。彼のMMAがどのように進化するか、2015年も非常に興味深い(C)MMAPLANET

2014年が終わり、2015年を迎えようとしている。この2014年を振り返り、2015年に臨む──MMAPLANET縁のファイター達の声を年末年始特集としてお送りしたい。

第2弾はUFC初年を2勝1敗で終えた菊野克紀に2014年を振り返り、今後を語ってもらった。階級変更、初めてのフェザー級での減量顛末、そして菊野の代名詞となりつつある沖縄拳法空手を彼はどれだけ生かせて戦ったのか。

──UFCシンガポール大会の勝利でスタートを切った2014年でした。

「勝てたということが何より良かったです。UFCという舞台に出ることができ、何とか勝てた。取り敢えず1勝できたことは嬉しかったです」

──対戦相手のクイン・マルハーンはライト級のなかでも大きな選手だったと思います。あの時点でフェザー級転向を考えることはなかったですか。

「正直なところ、ずっと頭にありました。どう考えても自分は小さいですし。ただ、負けるまでは落とす必要もないかと思っていました」

──その階級変更、5月のトニー・ファーガソン戦の敗北で踏ん切りがついたと。

「完敗でした。初めてのKO負けですし、真面目に考えないといけない状況になりました」

──ライト級という階級に対するこだわりは?

「それは全くないです。UFCで勝つことが大切なので」

──階級変更に関して、体重を落とすことを勧める声は周囲からもありましたか?

「そう言われることもありましたし、落とすことが良いのか分からないという声もありました。だから結果で判断するしかないという形でした。UFCからもフェザーに落とす選択肢があることを示唆されてはいました」

──9月のUFC JAPAN、サム・シシリア戦前にゴン格の取材で練習を拝見させてもらい減量について尋ねた時は、順調で問題がないということでした。その後、かなり苦戦したという話も計量当日に伝わってきました。

「計量の1週間前の時点で、ほんとに少し食べただけでボンっと増えてしまって(苦笑)」

──食べても良い計算のなかで摂った食事量だったのですか。

「そうですね、大丈夫だと思って食べたら思った以上に戻ってしまって……。そこから疲れを抜かないといけない期間に入ったのに、動かないといけなくなり焦りました。水抜きは4キロだったので6キロぐらいでいたときに、休みの日だったこともあり、少し息抜きというか……」

──チートデーが仇に……。

「1キロほど増えてしまいました。4キロ水抜きで落とすので、脂肪を落とすのが2キロから3キロに増えてしまって。そのためには相当、動かないといけなくなりました」

──追い込みも終わった最後の週に……。

「だからちょっと……焦りましたね。そこから塩抜きというのをしました。塩抜きはしたことはなかったのですが、体に塩分があると水を蓄えてしまうので」

──ソディウム……塩化ナトリウムは水分を作り出すと言われていますね。

「摂取する水分も塩化ナトリウムが入っていないものを選び、奥さんにも協力してもらい食事も塩分を抜いてもらいました。塩抜きの方法を知っている方にやり方を聞いて、塩分をカットするようにしたんです。そうしたら、何とかなりました(苦笑)。同時に塩抜きの効果があって、水抜きが簡単にいきました。限界まで来ているなかで、最後にガンと落ちて。

ただ、その最後の水抜きの時、宿泊先のホテルのお湯がぬるくて。最後は半身浴、お風呂に浸かって水を抜くのですが、心地良い温度で汗が出ない。サウナルームは、もう皆が行っているから満員で(笑)。あれは想定外で、自宅に戻って汗を出そうかとも考えたのですが、その時間もない。焦りました。山城(美智)先生に連絡をしたら、すぐ近くのホテルに泊まっておられて、『熱いお湯が出る』と。山城先生の部屋に行って、バッと汗を出したんです」

──常に泰然としている菊野選手なので、その焦ったところも目にしたかったですね(笑)。今となっては、ですが。

「ハハハ。やはり、当日は時間も限られていますし、2時間で2キロ落とさないといけない状況だったので焦りましたね。ただ、コンディションはとてつもなく良かったんです。計量をクリアーしてから、水分と食事を摂って7キロ戻せました」

──7キロというのは普段から節制している選手のなかでは多い方かと。

「ライト級で試合をしていた時も73キロ、フェザー級でも73キロ。とても良かったです」

──菊野選手の体格は変わらず、相手は小さくなる。狙い通りにいったわけですね。

「そうですね(笑)」

──では試合の満足度は?

「コンディション的には、動きは良かったです。できなかったこと、色々と反省点はありますが、コンディション的にはとても良かったです」

──寝技でフィニッシュしました。

「良かったと思います。拘らなかった。自由に動けたというか……。殴って、組んでテイクダウン。焦らずにポジションをキープしつつ、狙いにいったら極まった。これまでアライアンスで高阪(剛)さんに習ってきたことが出せたなって感じですね」

──MMAで勝利するうえで、沖縄拳法空手を取り入れている菊野選手のメリットは、ほぼ全員のファイターが沖縄拳法空手を理解していないことだと思います。

「ハイ」

──沖縄拳法空手をMMAに生かす。この1年でどれぐらいの目標を達成できましたか。

「沖縄拳法空手を生かして勝つことが試合でなかなかできていないので、本当にまだまだだと感じています。ただ、練習では強くなっているという実感はあるんです。それを試合で、高いレベルの相手に生かし切れていないという状況ですね」

──それは対戦相手が強いという一点が原因なのでしょうか。

「緊張感や力みで自分の力を試合で出せなかったという感じはしていません。単純にサム・シシリアも速いなと感じました。反応が良かったです。やはり強かったです」

──当てた時の威力は絶対だけど、その当てることが相手が強くなっているので困難になっているわけですね。

「どれだけ威力があっても、適切な距離、角度、タイミングで当てないと効かせきれないので。そこがレベルの高い相手だと難しいです」

──サム・シシリア戦以降、レベルの上がった対戦相手に当てるためにトレーニング内要が何か変わったということはありますか。

「狙い過ぎるところがあったので、当てない攻撃を練習しています。中間距離で手を出して、結果的に3発目、4発目で当たれば良いという練習をしています」

<この項、続く>

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