【VTJ 6th】フライ級T決勝戦に臨む、扇久保博正 「僕らはここからですよ、本当に」
【写真】27歳、海外志向が強まる日本のトップファイターのなかで谷間の世代といえる扇久保。VTJ優勝の活路を開くことができるか。注目のシーザー・スクラヴォス戦だ(C)TAKUMI NAKAMURA
10月4日(土)東京・大田区総合体育館で開催される「VTJ 6th」。今大会では2月23日の「VTJ 4th」からスタートしたVTJフライ級トーナメントの決勝戦として扇久保博正×シーザー・スクラヴォスが行われる。昨年、堀口恭司に敗れて修斗世界フェザー級(※60キロ)王座から陥落した扇久保だったが、VTJフライ級トーナメントでは春日井健士とカナ・ハヤットを撃破して決勝進出を決めた。
19歳でプロデビューし、キャリア8年目となる27歳の扇久保がトーナメント優勝への想いを語った。
――前回のトーナメント準決勝=カナ・ハヤット戦は1R1分20秒、リアネイキッドチョークで一本勝ちという秒殺勝利でした。ほぼノーダメージだったと思うのですが、練習はすぐにを再開されたのですか
「はい。試合の次の日から練習していました。ほとんどオフをとらずに練習を続けていたので、途中で体調崩しちゃったんですけど(苦笑)、継続していい練習が出来たと思います」
――前回の試合の良い状態をキープしたまま練習を続けたかったのでしょうか。
「そうですね。次がトーナメントは最後ですし。週6日でみっちり、朝は筋トレして、昼に走って、夜にジムで練習の繰り返しでした。だから家にいる時間は寝てるだけで、ほとんど家族サービス出来なくて(苦笑)。でもそれだけこのトーナメントに懸けています」
――ご自身の試合映像はご覧になりましたか。
「はい。作戦通りに戦えたかな、と。相手にビビることはなかったと思います」
――ハヤットはかなりパンチが強い選手で、結果的には秒殺勝利でしたが、試合前はかなり警戒しているように見えました
「正直、怖かったですよ。(エドゥアルド・)ダンタス以来の外国人選手だったし、日本人選手とは違う怖さがありました。よく言うフィジカルの違いとか、どんなもんなんだろう?って。ただ今回の試合に限っていえば、外国時選手特有のフィジカルの強さを感じることはなかったです」
――フライ級に階級を落として2試合、身体は125ポンドにフィットしてきましたか。
「身長とか体格的なことを考えると、フライ級が自分には合っていると思います。バンタム級になるとリーチ差もあるので、今思えばやりづらかったと思います」
――決勝戦で対戦するスクラヴォスにはどんな印象を?
「昔の試合映像もチェックしたんですけど、気持ちが強いなと思いました。相手の打撃をもらっても前に出てくるし、寝技になっても強い。穴がなくて強い選手だと思いますね。準決勝で神酒(龍一)選手とやった試合も、まさに印象通りの試合でした。圧力と手数で前に出続けるっていう。ただ神酒選手がスロースターターな部分があるので、僕が見た感じでは先にスクラヴォスにペースを取られて、そのまま最後までいっちゃったのかな、と。僕は逆に最初からバーン!といっちゃうタイプなんで、それが試合でどうなるか、でしょうね」
――スクラヴォスは良く言えば何でも出来るタイプで、悪く言えば特徴がないタイプだと思います。
「あぁ…そんな感じですね。でも色々と調べてもらったら、試合中に顎が折れても最後まで戦ったとか、そういうエピソードが多いので、気持ちの強さを一番警戒しています。僕が後半失速したところでパッとサブミッションに入られたりとか、そういう展開もありえると思うんですよね。だからピンチになったところから挽回する練習も増やしていますし、総力戦じゃないですけど、苦しい試合になる覚悟はできています」
――ずばりどんな展開をイメージされていますか。
「僕は決してスタミナがある方ではないので、パっと極めて勝ちたいです。でも絶対に苦しい試合になるという覚悟はあります。その上で行ける場面が来たら思いっきり行きます」
――扇久保選手自身はトーナメントの2試合で動きが良くなっていると感じている?
「いい動きが出来ている実感はあります。やっぱり試合は3~4カ月に1回はやった方がいいですね。試合間隔が空いちゃうとどうしても気持ち的に…。今年は試合が続いていて、メンタル的にもいい状態です」
――扇久保選手は連戦する方が気持ちが乗ってくるタイプのようですね。
「はい。去年、堀口(恭司)選手に負けて、トーナメント1回戦の春日井(健士)戦でも最終ラウンドに心が折れて……ずっと時が止まっていたんです。『俺、もうダメだな』って、自分に自信を持てない時期が続いて。でも前回の試合で勝つことが出来て、少しだけ時が動き出した感覚です」
――自信をなくしたのは堀口選手に負けた試合からですか。
「そうですね。あれ以降はなかなか戦う気持ちが作れなかったです。試合が終わってから手首を手術したこともあって、2013年は自分にとっては辛い一年でしたね」
――そのタイミングでVTJフライ級トーナメント出場が決まったことは、扇久保選手にとって気持ちを作るきっかけになったかもしれないですね。
「本当にそう思います。もしトーナメントに出ていなかったら、また戦う気持ちにならなかったかもしれないです」
――またハヤット戦後の勝利者インタビューでは『勢いのある若い選手が多いけど、自分もまだ若くて上を目指しています』という言葉もありました。まだまだ自分に注目・期待してほしいという気持ちがあったのですか。
「それはずっと思っていたことですね」
――それこそ良い時期も悪い時期も経験しているから扇久保選手だからこそ底力があると思います。
「僕らはここからですよ、本当に」
――例えば扇久保選手と同時期にデビューした選手の動向など気になりますか。
「自分と同じ年(2007)に新人王になった選手で今でも活躍している選手は少ないですね。一つ前の年(2006)は室伏(シンヤ)選手や上田(将勝)選手がいるんですけど」
――扇久保選手はまだ年齢も27歳、当然、格闘家としてもう一花咲かせたいですよね。
「もう一花どころか、僕は全然まだまだですよ。格闘技で稼げているわけでもないし、UFCに行って稼ぎたいです」
――競技者としても今の方が強くなっている実感はありますか。
「もちろん勢いやコンディションは若い頃の方があったと思います。でもメンタルに関しては間違いなく今の方が充実しています」
――扇久保選手は気持ちがしっかり作れていれば身体も動くタイプなのでしょうか。
「そうですね。だから今はいい状態で試合が出来ています」
――トーナメントは優勝と準優勝で、その後のキャリアが大きく変わります。何が何でも優勝しなければ、という気持ちはありますか。
「優勝と準優勝は全く意味が違うことは僕も理解しています。でも必要以上に難しくは考えていないというか。それこそ昔の自分だったら試合前になると、とことん気持ちが落ち込んでいたんですけど、僕も色んな経験を積んで、今はもう一生懸命練習して試合をするだけだと思っています。格闘技はどちらかが勝って、どちらかが負ける。そういうものじゃないですか。だからそこで思い悩んでもしょうがないわけで、それだったら一生懸命やることをやって全力で戦う、と。本当にそれだけですね。自然体のまま戦って、いい結果を残したいです」
■ 対戦カード
<VTJフライ級T決勝/5分3R>
扇久保博正(日本)
シーザー・スクラヴォス(米国)
<145ポンド契約/5分3R>
リオン武(日本)
ISAO(日本)
<155ポンド契約/5分3R>
弘中邦佳(日本)
キム・ドンヒョン(韓国)
<145ポンド契約/5分3R>
宇野薫(日本)
ラージャ・シッペン(米国)
<145ポンド契約/5分3R>
高谷裕之(日本)
高橋遼伍(日本)
<125ポンド契約/5分3R>
マモル(日本)
飛猿☆No.2(日本)
<135ポンド契約/5分3R>
小野島恒太(日本)
佐藤将光(日本)
<128ポンド契約/5分3R>
鈴木隼人(日本)
福田龍彌(日本)
<145ポンド契約/5分3R>
大澤茂樹(日本)
三上譲治(日本)
<155ポンド契約/5分3R>
沼尻和之(日本)
大原樹里(日本)
<145ポンド契約/5分3R>
内藤太尊(日本)
林太陽(日本)
<145ポンド契約/5分3R>
平川智也(日本)
金子大輝(日本)
<女子105ポンド契約/5分3R>
NACHI(日本)
浅倉栞南(日本)