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【Interview】MAX増沢<02> 90年代後半のグレイシー・アカデミー、そして別れ

SONY DSC【写真】両手で首を絞められた時の防御方法。これぞ護身術としての柔術(C)ISAMU HORIUCHI

錦糸町に拠を移したマックス柔術アカデミー& ヨガスタジオ主宰の増沢”Max”慶介。彼と柔術の出会いは、ブラジリアン柔術ではなくグレイシー柔術だった。

そんな増沢氏にグレイシー柔術との出会いを語ってもらったが、続いて90年代のグレイシー・アカデミーと、そのアカデミーを離れた真意を訊いた。
<MAX増沢インタビューPart01はコチラから>

――マサ・マルコメの非礼に、普段は出さない奥の手をホリオン魔王が使ったと(笑)。

「ホリオンはそもそも、よく色んなクラスをチェックしに来たんですよ。ビギナーのクラスに口を挟んで、そのままテイクオーバー(※乗っ取る)してしまうこともしばしばで。するとクラス担当していた紫帯はショボーン、みたいな(笑)。まあホリオンは教科書だから。技の形も綺麗だし、説明ももの凄く上手いし、みんな納得させられる。やってみるとそんな簡単じゃないんですけど。あの人は教科書中の教科書ですね」

【写真】増沢氏が教科書中の教科書というホリオン・グレイシーと。ハーフガードもバタフライガードもなくても、ホリオンの手ほどきを受けた経験は本当に貴重だ(C)MAX MASUZAWA

【写真】増沢氏が教科書中の教科書というホリオン・グレイシーと。ハーフガードもバタフライガードもなくても、ホリオンの手ほどきを受けた経験は本当に貴重だ(C)MAX MASUZAWA

――ホリオン閣下といえば、あの相手の三角絞めを誘発するが如きパスガード、俗称『ホリオン・グレイシー・パス』が有名ですが。

「最初に教わるパスがまさにあれなんですよ。ちょっと腰の位置を下げて、できた股の隙間に腕をこじいれて、そこを支点にぐいっと。正しくやれれば威力が大きい。ただ危険もあるので、私は今現在、ビギナーには教えないですね。それでも上級者には『こういうやり方もあるよ』って教えることもあります。膠着を打開する手の一つにもなり得るし」

――なるほど。下からはやっぱりクローズドガードが中心ですか。

「基本はクローズドですね。オープンガードって習った記憶があまりないんですよね。ガードを開くのは、シザースイープ等を仕掛ける時くらいで。スパイダー(ガード)はもちろん、バタフライ(ガード)も習った記憶は無いなあ」

――ハーフガードからの攻撃は?

「ないですね。背中をべったり付けた状態から、相手の首を抱えてクローズドに戻すとか、そういうのくらいで」

――横を向いてハーフでスイープという発想はなかったと。足関節はどうでしたか。

「ホイスはアキレス腱固めを教えていましたね。相手のガードが開いた時の一つとして。あとセルフディフェンスの技術で、立った状態からのニーバー(膝十字)を。カイケはトーホールド(足首固め)も教えてくれました」

――ホリオン、カイケ、ホイスらがスパーの相手をしてくれることはありましたか。

「それはないですね。彼らに限らず、クラスをその日担当している紫帯もスパーをしない。でも別のクラスに生徒として出ている時はやってくれて。強かったですね」

――当時は、エリオ・グレイシーもいたと伺っています。

「クラスを見に来たりしていましたね。あと当時のアカデミーは一階がオフィスやジュースバーで、そのへんでうろうろしていたり。あれは何をしていたんだろうなあ?」

――うろうろしてくれるだけでありがたい存在ではありますね。

「そうそう。あとはヒーロンやヘナーも当時中学生くらいで。ただ彼らは朝から練習しているから、通常のクラスに出ることは少なかったかな。一度順番でスパーをしていて、次は自分がヒーロンと当たる番だと楽しみにしていたら、ヒーロンが仲のいい生徒を指名して『俺は次はあいつとやりたい』って。結局こっちはヒーロンとできなかったので、『なんだアイツムカつくなぁ』、って(笑)」

――まあ中学生ですからね(笑)。そんな個性的な面々がいたグレイシー・アカデミーでしたが、そのうちカイケが独立し、多くの生徒の離脱者が出てしまうんですよね。

「やっぱりカイケはホリオンに利用されていたという気持ちが強かったみたいで。最後の方はクラスでも本人はイライラしていて。で、そこにホリオンが口を出してきてクラスをテイクオーバーしちゃったりすると、カイケが怒って帰っちゃったり」

――そうして独立したカイケに、マックスさんも含め多くの生徒がついて行ったのは、やはりホリオン殿下のクラス運営に不満があったからでしょうか。

「私も最初は基本の練習で満足していたんですけど、だんだん体力的にも余裕が出て来て、テクニックも身に付いて来た気がしてきた。すると1時間のビギナークラスでは物足りない部分が出て来て、90分のミックスクラスを教えてくれるホイスやカイケが好きになっていったんです。ホイスのクラスなんかは、本人がよく笑うし生徒達を盛り上げてくれるし、雰囲気が良かった。

でもカイケがいなくなって、ホイスも当時は桜庭戦で怪我をして教えられなかった。ホリオンが教えてくれるクラスでは、どうにもスパーリングをやらせてくれる時間が少なくなっていきましたね」

――確かカイケの独立後、ホイスもほどなくグレイシー・アカデミーを離れたんですよね。ホイスについて行こうという気は?

「ホイスも当初は、カイケがグレイシー・アカデミーのすぐ近くに道場を出して、上級の生徒達の多くも離脱したことに怒っていたんですよね。でも結局、自分も独立したという(笑)。で、本音をいえば私もホイスの下に行きたい気持ちはあった。でもホイスは道場を持たず、自分のネットワークをセミナーで巡回する方法を選んだ。これだとフルタイムで修行することは難しいな、と」

<この項続く>

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