【Interview】MAX増沢<03> 「グレイシー柔術という誰もが使える柔術の魅力を伝える」
【写真】「ホームタウンの錦糸町」に拘り道場を移設したMAX増沢。生活と密着した柔術もLAで学んだものか
マックス柔術アカデミー& ヨガスタジオ主宰の増沢”Max”慶介。90年代にグレイシー柔術と出会い、その後グレイシー・アカデミーを離れ、カイケ柔術へ。
競技柔術も経験しながら、米国で学んだグレイシー、そしてカイケの柔術を伝える、MAX増沢の今とは。
<MAX増沢インタビューPart01はコチラから>
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――マックスさんも直接カイケに誘われたのですか。
「いや、カイケはそういうことはしなかった。ただマイク・ローズら当時強かった選手の多くがカイケの方に行ってしまったので。その時は自分も人生を賭けて柔術をやろう、究めようと思っていたから。ここは後には退けないな、と。(※マイク・ローズは当時の重量級有望株。カイケ道場移籍後は、茶帯時代のヒーロン&ヘナーと勝ったり負けたりを繰り返した。ちなみに当時、茶帯同階級でいつも彼ら3人の後塵を拝していたのが、後に世界王者になるラファエル・ロバト・ジュニアだった)」
――マックスさんはカイケ道場に移籍し、仕事を辞めて柔術修行に専念したのですね。カイケ先生は自らの師ヒクソンのことを語ることもあったのですか。
「具体的にはあまりないんですが、俺より全然上だ、ということはよく言っていましたね」
――そのヒクソンは最近新連盟を作り、また今までもっぱらセミナーで伝えてきた自らの理論や技術を、動画で公開しました。
「実は数年前にヒクソンのセミナーを受けたのですが、これがなんというか、すごく抽象的な内容だったんですよ。コネクション(接触)ということをしきりに強調して。いかに相手に力を伝えるか。そのためにはマットとのコネクトも必要だ、と。立ち方から相手の手の引っぱり方からスイープまで、すべてコネクションの説明だった。
受けた当時は難しいなと思ったんですけど、時間が経つにつれて納得できて。ホントにこれが最も根源的なことだなと実感するようになったんですよ。コネクションがなければ技なんかかからない。大切なのは技の種類なんかじゃなく、いかに相手に力を伝えるか、いかに自分のベースや、相手との距離を作るかだなって。
先日のヒクソンの映像では、当時のセミナーと同じことを『インビジブル(見えない)柔術』等の、当時は使ってなかった言葉で説明していました。さらに理論が発展したということでしょうね。その理論を使って、ああやってヒクソンがセルフディフェンス技術を実演したことの意味は大きいと思います」
――柔術の根源にはセルフディフェンスあり、と。
「そうですね。セルフディフェンス自体教えていない柔術道場も多いでしょうし」
――それにしても、まだ青帯だった当時、すでに柔術家として生きて行く決意をしていたのですね。
「柔術は、私みたいにアダルトの世界一になりたいという高く激しい欲求は持っていない人間にも、体重、年齢層、スキルが同レベルの人々と競い合い、強くなれるという実感を与えてくれました。これだけ充実した生活をさせてくれた。仕事や家庭を尊重しながら、身の丈に合ったやり方で強くなれる。こんな素晴らしい経験を自分は、日本で伝えることができるんじゃないかと思ったんです」
──それだけ柔術に惚れ込んでいたのですね。
「もともとサラリーマンをやりたかったわけではないんですよ。判子屋の息子として育ったから、子供が生まれたらできるだけ親子一緒にいたいと思っていた。それでもサラリーマンになったのは、海外赴任をしたかったからで。それは狙い通りできた。では次にどうするか。もう30歳を過ぎている。ここで人生変えないと。35歳までに何かを成し遂げないと。そう思いながら日本の柔術界を外から眺めると、正しいグレイシー柔術……という言い方は良くないかですかね……。あくまでグレイシーの視点から、教えている人はいなかったように見えたんです」
――カイケの下で内弟子修行をしたマックスさんは、やがてパンナム大会優勝を経て紫帯となり、日本に帰国されて10年前に菊川に道場を設立して今に至ります。今回、その10年やってきた道場を引き払って錦糸町に新道場をオープンされたのは?
「いろいろ理由はありますが、ひとつには今までの道場が2階だったので、外から見えないんですよね。すると何をやっているか外からは分からない」
――外から見ると怖いと思う人もいますよね。マックス先生も入門時は、安生の如く殴られることまで覚悟したわけだし。
「だから来てくれた人はまず出迎えてあげる。話しかける。そういうフレンドリーな雰囲気を外からも見せたいと思いました。そして何よりホームタウンの錦糸町に作りたかった。子供と一緒にいる時間を作るのが、私の人生の目標だったので」
――今回は新しいマットの導入にすごく拘ったそうですね。
「そうですね。DOLLUMUR(ドラマー)という、米国で最も人気のあるマットです。何年も前に(ギの販売で有名な)ジョン・オウアノのNew Breed道場に行った時、その感触が忘れられなくて、今回ぜひとも導入したかった。でも向こうに海外注文を受ける体勢がそれほど整っていなかったようで、無事に届くまでいろいろ大変でした。そこで今後は自分がエージェントとして日本での注文を受けさせてもらうことにしました」
――実際使ってみていかがですか。
「本当に気に入っています。衝撃吸収性が抜群で、表面のたゆみもないから掃除も楽で、何より設置が簡単。練習後丸めて端に置いて、練習時にまた設置することもできるので、ダンス等、固い床が必要な教室とのスペース共有も可能となります」
――日本でこのマットに興味のある人は、info@maxjj.comに問い合わせれば日本語でスムースに注文できるということですね(笑)。新装マックスアカデミーの特徴は、どこにありますか。
「やはり、グレイシー柔術という誰もが使える柔術の魅力を伝えることができることですね。年齢でも体格でもなく、過去の格闘技歴も関係なく、もちろん子供も女性も。ピュアソースからグレイシー柔術を学んだので。等身大の気取らない、居心地のいい空間を目指しています。健康増進、ストレス解消、人と会話すること、あらゆる目的で柔術をしに来てくれる人々を受け入れたいです」
――それはもともとグレイシー・アカデミーにあったものですか。
「そうですね。エリオを見ていたから、老人になってうろうろしている人がいるのはすごく大事だと思うし、そういう人をリスペクトする環境を作りたいですね」
――今日は色々と興味深い話、ありがとうございました。