【Grachan84】キルギスでの練習を経て宮島夢都希と再起戦。小林大介「シェイドゥラエフのように」
【写真】前回のタイトルマッチから繋がった縁でキルギスにてシェイドゥラエフと(C)DAISUKE KOBAYASHI
26日(水)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるGrachan84で、小林大介が宮島夢都希と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
今年2月、小林は初のタイトルマッチに臨んだ。相手はGrachanフライ級王者、小林魁斗。試合は初回から倒し倒されの大激闘となるも、最終回にマットに沈んだのは挑戦者の小林だった……。あれから半年、小林は後楽園ホールで再起戦を迎える。現在、グラチャンのフライ級でランキング2位につける小林は、ここで勝利すればベルト再挑戦の機会も早く訪れるだろう。
そんななか小林はキルギスで、RIZINフェザー級王者ラジャブアリ・シェイドゥラエフらの合宿に参加していた。小田に敗れて「シェイドゥラエフのような圧倒的な強さが欲しい」と考えた小林とキルギスを繋いでくれたのは、2月の小田との大激闘だった――。小林がキルギスで見てきたものとは(※取材は7月17日に行われた)。
負けたけどタイトルマッチを観て心が動かされ『何か手伝いたい』という気持ちになったそうなんです
――今年2月、グラチャンのフライ級王座に挑み敗れてから約半年、後楽園ホールで復帰戦に臨みます。この期間に、キルギスで練習していたそうですね。キルギスに行くことになったキッカケから教えてください。
「キッカケはRIZINフェザー級王者のシェイドゥラエフ選手ですね。去年9月のRIZIN名古屋大会に出た時(※佐藤執斗に判定勝ち)、同じ大会にシェイドゥラエフ選手も出ていて秒殺勝利していたじゃないですか(※ビクター・コレスニックに33秒でTKO勝利)。会場で観ていて『強いなぁ』と思って以降も試合をチェックしていたら、毎回相手をボコボコにしている。なぜこれほど圧倒的に強いのか、その圧倒的な強さが自分には足りない――と感じて。そこからシェイドゥラエフ選手をはじめ、キルギス人ファイターの強さに興味を持つようになりました」
――そしてキルギスに行き、直接彼らの強さを体感してこよう、と。ただシェイドゥラエフや関係者と繋がりがなければ、なかなか現地で練習するのも難しいように思います。
「それが……2月にタイトルマッチをやって、試合が終わったあと、応援に来てくれた方に御礼の挨拶に行ったんですよ。そこで『シェイドゥラエフのような凶暴な強さがあればチャンピオンになることができましたね。あれぐらい強くなるために、キルギスに修行に行こうかな』とか話をして。すると応援に来てくれていたなかの一人から『キルギス? 自分の同級生がキルギスの大学で教えていたり、キルギスの学生を日本に連れてきて仕事を紹介している人がいるよ』と言われたんです」
――えぇっ!? 突然凄い繋がりですね。
「どんどん話が進んでいき――直接教えていたわけではないけど、その知人の方が教えていた大学にシェイドゥラエフ選手が在籍していたこともあり、『昔からシェイドゥラエフのことを知っている。今もキルギスで仕事をしているので、現地の人に聞いてみる』という話になったんですよね。
そうこうしているうちに、今年4月のRIZIN福岡大会にシェイドゥラエフ選手が出る(※久保優太にTKO勝利)。その時に皆で一緒に話をしよう、ということになりました」
――応援に来られていた方も、キルギスの大学で教えていたという方も愛知県内にお住まいなのですか。
「そうです、たまたま……」
――それはもう偶然ではなく必然に近いですね。
「応援に来てくださった方が、負けたけどタイトルマッチを観て心が動かされ『何か手伝いたい』という気持ちになったそうなんです。それで、いろいろ考えてくれたみたいで――『そういえばキルギスに関係している同級生がいたなぁ』と思い出し、繋げてもらいました」
――敗れたとはいえ、小林選手がそれだけ人の心を動かす試合を見せた結果です。では愛知県在住の知人の方と一緒に福岡へ?
「はい。福岡に行って、シェイドゥラエフ選手が試合を終えたあとに話をする時間を設けてくれたんです。『練習しに行ってもいい?』と訊くと、シェイドゥラエフ選手も『僕で良かったらレスリングやボクシングを教えるよ。ぜひ来てね』と言ってくれて。その時点では、タイトルマッチで拳が折れていたので『拳が治ったら行くね』と伝えました。それで6月末から7月に入るぐらいまで、約2週間キルギスで一緒に練習させてもらいました」
ボクシングのカザフスタンのコーチとキルギスのコーチが、それぞれナショナルチームの選手を連れてきていて――
――日本からキルギスまで直行便はありません。現地につくまで時間もかかったのではないですか。
「まず中部国際空港(セントレア)から韓国の仁川国際空港まで2時間。トランジットで2時間、仁川からキルギスのマナス国際空港(キルギスの首都ビシュケクにある、国内最大の空港)まで6~7時間。空港からビシュケクにあるシェイドゥラエフ選手のジムへは、車で1時間かからないぐらいでした」
――半日以上は掛かってしまうのですね。
「さらに現地に着いてから予定と違っていたのは――2~3日ぐらいはシェイドゥラエフ選手のジムで練習する予定だったんですよ。そのあとは『合宿がある』と言われていて。その合宿参加が早まって、着いた翌日からイシク・クルという場所にある合宿所に行きました。だからシェイドゥラエフ選手のジムで練習したのは初日だけなんです」
――合宿所、というと?
「日本でいえば、味の素ナショナルトレーニングセンターみたいな場所ですね。オリンピックを目指すボクシング、柔道、レスリング、器械体操の選手が集まってくる場所で。ビシュケクから車で休憩しながら4~5時間かかったかな? そこで10日間、合宿に参加しました。

向かって右端にいるのがイリスベク・ティレノフ。階級も近いためか現地ではペアで練習することも多かったという。RIZIN太田忍戦前日の取材で「強いですよ。キルギス人選手の中では日本人選手に近い丁寧さがあるストライカーで、(太田戦は)打撃で行くんじゃないですか」とティレノフを評していた(C)DAISUKE KOBAYASHI
凄いのはビシュケクが標高800メートルぐらいで、イシク・クルは一番低くても1600メートルだったんですよ。そこで山に走りに行ったり――合宿のテーマがスタミナ強化やボクシング技術を高めることだったのか、ボクシングのカザフスタンのコーチとキルギスのコーチが、それぞれナショナルチームの選手を連れてきていて。そこで打撃を指導してもらったり、合同のスパーリングに参加させてもらったり」
――現在オリンピックのボクシング競技では、中央アジア勢が強いですよね。特にカザフスタンは強豪国で。
「メチャクチャ強いです。とんでもなく強いです。その代表選手みたいで、皆がオリンピックどうこうと話をしていました。自分もシェイドゥラエフ選手のジムで練習するつもりだったので、オリンピック代表クラスと練習するとは思っていませんでしたね(苦笑)」
――標高1600メートルでの走り込みなど、いきなり参加して、ついてくことはできましたか。
「それが――ついていけたんですよ」
――おぉっ!!
「山の上だから、ヘタすると標高3000メートルぐらいだったんじゃないですか」
――10日間ほど合宿に参加して、スタミナなど上がりましたか。
「言っても2週間ぐらいなので、そんなに効果があるかどうかは分からないです。でも日本に戻ってきてからは、練習していても息が整うのは速い気がしますね。それとキルギスで合宿中は、体の調子も良かったです」
――それはキルギスの空気か、食べ物か、あるいは練習スケジュールの組み方によるものなのか……。
「全部ですね。全部のバランスが良いんだと思います。低酸素の場所で運動していると、体の回復にも良いはずですし――あと合宿所から徒歩2~3分のところにイシク・クル湖があるんですよ。練習が終わったら汗だくのファイトパンツのまま、上半身裸のまま順番に、湖に飛び込む。トレーニングして体が温まった時に湖で、皆すぐに体を冷やしてから部屋に戻ってすぐご飯、みたいな生活でした。もちろんトレーニングの疲労も筋肉痛はありますけど、体がだるくなることもなく、むしろ体の調子が良くて」
――周囲の環境を生かしたトレーニングですね。
「食事は、朝昼晩と毎回しっかりと肉が出てきます。しかもそれが旨くて(笑)。さらに発酵食品ですね。ケフィアという乳飲料(※ロシアのコーカサス地方に伝わるヨーグルト)やチーズ。加工されていないハムやソーセージとかもあって、腹の調子も良かったです」
――なるほど。練習はスタミナ系とボクシングのトレーニングが中心で、MMAの練習はどうでしたか。
「MMAとして総合的なものは、初日にシェイドゥラエフ選手のジムでやったぐらいですね。グラップリングやレスリングは自分たちだけで、合宿所で数回やったかなという感じです。皆、レスリングと体が強いという印象でした」
――では、今回のキルギス遠征で得たものとは何でしょうか。
「何か、と訊かれたら難しいんですよね……いろいろありすぎて(苦笑)。というのもキルギスに行ったのも選手目線、選手を教えるトレーナー目線、さらにジムの代表や経営者目線で見てこようと思って」
――選手目線でお願いします。
「……それは次の試合で見せます(笑)」
――アハハハ。同時に選手としてだけでなく、トレーナーや経営者の目線でも得られるものがあったということですか。
「そうですね。オリンピック代表のコーチも来ていたので、参考になりました」
どんな展開になっても勝つ。そういう強さがあれば、一方的に試合を終わらせることができる
――前回のタイトルマッチがキルギス遠征に繋がったということですが、確かに倒し倒されのシーソーゲームで、見ている人も感動する試合だったと思います。
「ありがとうございます」
――小林選手としては左ヒザ、左ミドル、左ハイなど左の攻撃が当たる。当たっては相手が組めない距離に戻る、というのは作戦どおりだったのでしょうか。
「本当は寝技で上を取る、ポジションを取っていくというイメージでした。でも1Rが終わったあとのインターバルで『打撃が当たっているから、ダメージポイントを取っていこう』という話になったんです。今のMMAではダメージポイントのほうが優勢じゃないですか」
――確かに。
「1Rでは僕がチャンピオンのパンチを受けて尻もちを着いたというか、ちょっとヨロけてしまいました。2Rには僕が右フックでダウンを取り返しましたよね。ただ、僕もパンチを受けて効いているし、息が上がってきているのも感じていて。1Rは取られた、2Rは取った。3R前のインターバルでセコンドとも『当たっている打撃で攻めよう。もう行くしかない、倒し切ろう』と」
――実際のところ最終回も序盤は小林選手の打撃がヒットしていました。フィニッシュの直前まで攻めていた。そこで逆転KO負けを喫したことが、感動を生んだ要因でもあります。見ている人を感動させた、しかしファイターとして負けは負け……その狭間でいかに気持ちの折り合いをつけるのかが重要になってくるかと思います。
「もちろん試合は勝つために練習するし、自分が勝つと信じて臨んでいたから、悔しい気持ちが一番です。それと、もし負けるとしたらパンチを食らってしまった時だなとは考えていたので、そのパターンにハマっちゃったような感じですね。
そんななかで自分は、2Rには相手に尻もちを着かせていたわけじゃないですか。打撃の攻防では僕が一方的に当てて、相手は鼻血も出ていたし顔も腫れていて。だけど倒せなかった。『倒していたら終わりやん。もっとフィニッシュ力をつけなきゃいけない』と思いましたね。それがキルギス遠征に繋がるんです。
パンチが当たったら終わり――自分にそういう強さがないから、もつれにもつれて、結果は負けている。シェイドゥラエフ選手って、そういう強さがあるじゃないですか。パンチ一発で試合を終わらせるし、組んだら相手を持ち上げて投げたら、相手はその投げで怪我しそうなぐらい強くて。さらにグラウンドになったら、相手にとっては抜け出すことのできない地獄が始まる。つまり、どんな展開になっても勝つんですよ」
――はい。
「自分にもそういう強さがあれば、そもそも見ている人が感動するとかもなく、一方的に試合を終わらせることができる」
――ここまでお話を聞いていると、もう次の試合は相手がどうこうではないと感じました。自分がどれだけレベルアップして、その自分を試合でどう見せるかであって。
「そうなんです。だから、どう言っていいのか難しんですよね。もちろん試合は勝ちに行きます。2月のタイトルマッチの経験と、キルギスの経験を経ての試合になるので、この期間に自分が何を得て来たのかを見せたいです。ぜひ試合を見てください」
■視聴方法(予定)
8月26日(水)
午後6時~ GRACHAN放送局、GRACHAN公式YouTubeメンバーシップ
■Grachan84 対戦カード
<バンタム級/5分2R>
房野哲也(日本)
二之宮徳昭(日本)
<バンタム級/5分3R>
伊藤空也(日本)
ヒクソン・ザ・キング(ブラジル)
<フライ級/5分2R+ExR>
小林大介(日本)
宮島夢都希(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
三澤陽平(日本)
渋谷カズキ(日本)
<フェザー級/5分2R+ExR>
藏ノ介(日本)
佐藤生穏(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
増田比呂斗(日本)
河合亮(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
AXEL RYOTA(日本)
小松原翔太(日本)
<ストロー級王座決定リーグ戦/5分3R>
丸山大輝(日本)
三笠貴大(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
YO-HEI(日本)
おはぎ(日本)
<アマチュア・フェザー級/3分2R>
野田頭柊馬(日本)
水口太陽(日本)




















