【PFL2026#13】41歳、クリス・サイボーグのMMA LOVE「シュートボクセで身につけたメンタル」
【写真】もう達成欲も承認欲求もないはず。あるのはMMAへの想いだけのようなサイボーグだった(C)MMAPLANET
22日(土・現地時間)、フロリダ州タンパのベンチマーク・インターナショナル・アリーナで開催されるPFL2026#13「Tampa」のメインで、クリス・サイボーグがケトレン・ヴィエイラを相手にPFL世界女子フェザー級防衛戦を戦う。
Text by Manabu Takashima
2005年のMMAデビューから21年。まだ確立してなかった女子MMA界にあって、シュートボクセでこの世界を代表するファイターに揉まれて育った。Strikeforce、Invicta FC、UFC、Bellator、そしてPFLと女子MMAメジャータイトルを全て手にしてきたサイボーグ。ムンジアル(紫帯)、アブダビ、ムエタイ、そしてボクシングとあらゆる女子コンバットスポーツの舞台で活躍してきた彼女も、41歳を迎えた。
来るべき引退の日を確実に理解しながら、今もMMAを楽しんでいるというクリス・サイボーグに試合前の心境を尋ねた。そして、この世界で長年汗を流してきたファイター、さらにいえば結果を残し続けてきた選手にしか言葉にできないような、静かな闘志のMMAを想う気持ちが伝わってきた。
41歳になった私は彼女より危険なファイター
――クリス、今週末にケトレン・ヴィエイラを相手にPFL世界女子フェザー級王座の初防衛戦を戦います。今の気持ちを教えてください。
「最高の気分ね。ハードなトレーニングを続けたファイトキャンプも問題なく終わって、凄くハッピーだわ。今回の防衛戦の相手ケトレン・ヴィエイラは、このスポーツで名前のあるファイターだし、戦うことを凄く楽しみにしている。自分を試す試合になるでしょうね」
――そのヴィエイラの印象を教えてもらえるでしょうか。
「まず、彼女はMMA界の多くのレジェンドと戦い、倒してきている。バンタム級で戦うことを止めて、フェザー級にやってきた。凄くハイレベルなファイターだと思っている。ずっと以前に会ったことがあるけど、彼女は今やブラジルを代表して戦うファイターの1人になっているわ。
柔術と柔道の黒帯で、打撃もできる。コンプリートファイターで、凄く手強い。タフな試合になると思う」
――決してパワフルではないですが、重心の移動でパンチに力を伝えるような打撃もスムーズです。
「とにかく、どの局面でも強い。ただ、41歳になった私は彼女より危険なファイターよ。21年もMMAを続けてきて、この間ずっと学んできた。もし21年前の私の試合を見ると、どれだけ別人になったクリス・サイボーグの今があるか分かってもらえるはず。ケトレンは手強い相手だけど、私の方が危険なファイターだと証明するつもりよ」
――その21年前にクリチバのシュートボクセ・アカデミーを取材で訪れた時、20人以上の男の選手に交じってクリスが激しい練習をしていたのを今も覚えています。何よりミットとプロテクターをつけて、ヴァンダレイの蹴りを受けていたのは衝撃的でした。
「私は2004年、19歳の時にシュートボクセでトレーニングを始めた。でもMMAのことは全く分かっていなくて、ヴァンダレイ、ニンジャ、ショーグン、誰も知らなかった(笑)。彼らが有名なファイターなんて、全く分かっていなかったわ(笑)。そんな私はシュートボクセで、全てを学んだ。
多くのMMA界のレジェンドが、シュートボクセでキャリアを始めて、私はその場に一緒にいることができた。それから多くの人が、女子MMAファイターが如何にモチベーションを保ち続けることができたのかと尋ねてくるけど、あの頃にシュートボクセでこの世界のトップファイターと毎日のように厳しい練習を続けてきたことで、どんな時でも戦えるマインドが備わったのよ。
対戦相手の情報なんてない、試合映像もないところで戦っていたけど、日々の厳しいトレーニングが私の気持ちを強くしてくれた。シュートボクセで身につけたメンタルの強さが、私のキャリアを支え続けてくれたの。
当時、私の夢は日本で戦うことだったわ。シュートボクセは日本で本当にビッグネームで。日本のファンは他とは違う。ファイターを尊敬してくれる。でも、PRIDEでは女子の試合は行われていなかった。RIZINになってギャビ・ガルシアが日本で戦っているけど、私には夢のままになっている……」
――私はクリス世代のファイターのインタビューをすると、必ず引退について尋ねていると思います。でも、クリスにはしません。クリスが引退する姿が、まるで目に浮かばないからです(笑)。
「ハハハハ。私は41歳になった。でも、今の方がMMAを上手く戦えている。体のケアをして、スマートな選択ができるようになった。アスリートは、その時々のライフスタイルに合わせてトレーニングするようになる。MMAを始めてから学んだ全てが、今に生きている。だから、21歳の私よりも今の私の方が強いと断言できる。
この試合が私の最後の試合になるとは考えていない。ただPFLとの契約上では、最後の試合になる。でも引退云々を考えて、プレッシャーにしたくない。チームとしっかり調整をしてきたわけだし、今はこの試合に集中する。そして、この試合が終わると、私には孫ができる(笑)。きっと色々なことが変わるはずよ。今回の試合を終えて、家族、チームのことを考えたい。
引退後には色んな計画が待っている。とにかく、今は今やるべきことに100パーセント集中するわ。そうやってここまでキャリアを築いてきた。だから、今回も同じ。これからのことは試合が終わってから、整理していくわ」
――過去4年、MMAは3試合。対してボクシングは8試合戦っています。
「イエス。私はムエタイ、柔術、グラップリング、レスリングとMMA以外の試合に出てきた。そうそう一度、日本に行ってTV番組でレスリングをしたことがあるわ(笑)。ただ、ボクシングだけは試合に出たことがなかった。だからボクシングにトライしたの。
最初は1試合だけ経験できれば良いと思っていた。でもその1度の試合が、もっとボクシングを戦う機会を得られるきっかけになった。チームに多くのオファーが届くようになったわ。MMAは1年に1試合というペースだったけど、ソファに座って過ごしたいとは思っていなかった。もっとアクティブでいたかったし、ボクシングをすることでファイターとしても成長できたわ。
ただ、一番の理由はステイ・アクティブだった。なによりボクシングを始めると、練習でも試合でもそこにサイボーグはいなかった。ただのビギナーになって、多くのことが吸収できた。あの時、シュートボクセでMMAを始めた頃の感覚が戻ってきたの。学ぶ姿勢を思い出せた。
そうね……今回の試合が終わっても、ボクシングの試合はもっと続けていく。それは絶対ね。とにかくボクシングが楽しくて。ボクシングからMMAを戦うのと、MMAからボクシングを戦うのは全然違うわ。それは断言できる。学ぶことが多いのは同じ。でもレスリングや柔術というまるで違う練習が必要になるのと、パンチを突き詰めるのは違う。練習をして、試合をするたびに成長が感じられる」
5Rあればフィニッシュできる。21年のキャリアが、そう言っている
――もう絶対に引退なんてないですね(笑)。
「過去3年、ずっと試合をするたびに『これが最後か』って言われ続けてきた。それに41歳になれば、またそういう話になるのは当たり前で。でも、私はこれからの人生も好きなことをやっていくだけ。私にとって、MMAを続けることは別に犠牲を伴っているわけじゃない。私がコレを愛しているから、続けているわけで。
同時に私の人生のチャプターが変わる時は、すぐにやってくる。それは理解している。MMAやプロのファイトから引退する日は、絶対にやってくるから。ある日、突然思うわけではなくて、その日が来ることを既に受け入れている。でも、プロの試合から足を洗っても、何か競技は続けることになるでしょうね」
――押忍。目にする機会は、絶対に少なくなっているクリスのMMAですが、今回の試合でどのような姿をファンに見せたいと思っていますか。
「5Rあればフィニッシュできる。21年のキャリアが、そう言っている。一本でもKOでも、どちらでも良いからフィニッシュはしたい。だからといって急いで戦うことはない。正しいタイミングが訪れた時に、仕留めに掛かる。それがサイボーグのファイト、私が愛して戦ってきたMMAよ。そして勝利を家に持ち帰ることね。
試合を戦うことが、私の人生だった。そうやって生きることができて神に感謝している。最後までエンジョイして戦うから、その姿をファンには見て欲しい」
■視聴方法(予定)
8月23日(日・日本時間)
午前7時15分~ U-NEXT
■PFL2026#13 対戦カード
<PFL世界女子フェザー級選手権試合/5分5R>
クリス・サイボーグ(ブラジル)
ケトレン・ヴィエイラ(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ガジ・ラバダノフ(ロシア)
トレーシー・リーダー(米国)
<女子フライ級/5分3R>
タイラ・サントス(ブラジル)
サブリナ・ソウザ(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
ルーク・トレイナー(英国)
ローランド・ダンラップ(米国)
<140ポンド契約/5分3R>
マルシルリー・アウベス(ブラジル)
ンコシ・ンデベレ(南アフリカ)
<バンタム級/5分3R>
マゴメド・マゴメドフ(ロシア)
ダニエル・マルコス(ペルー)
<バンタム級/5分3R>
モブサル・イブラヒモフ(ベルギー)
ジャビッド・バシャラット(英国)
<ライト級/5分3R>
ダコタ・ブッシュ(米国)
マルケス・フォレスト(米国)
<ライト級/5分3R>
ナタン・シュルチ(ブラジル)
ランドリー・ワード: 155.6ポンド(70.57キロ)
<ライトヘビー級/5分3R>
ヴァレンティン・モルドフスキー: 206ポンド(93.44キロ)
マカシャリプ・ザイヌコフ(ロシア)
<ライト級/5分3R>
ジノ・ファン・スティーヌス(スペイン)
ロバート・ワトリー(米国)
<ウェルター級/5分3R>
フロリン・ゼンデリ(アルバニア)
オムラン・チャバン(フィンランド)
<ウェルター級/5分3R>
オーウェン・シェリダン(アイルランド)
ジェームス・ヴェイク(ニュージーランド)
















