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【Road to UFC S04 Ep03】20代のベテラン、伊藤空也「厳しい場面に直面しても、まあ大丈夫だよなって」

【写真】経験値と修羅場の数が、誰も持てるものではない伊藤の武器(C)TAKUMI NAKAMURA

24日(金・現地時間)に中華人民共和国は上海のUFC PI上海において、Road to UFC S04 Ep03 が開催され伊藤空也がカイ・シャンと対戦する。
text by Takumi Nakamura

伊藤は昨年6月にEternal MMAでバンタム級のベルトを巻き、年末12月にはGrachanバンタム級王座を戴冠し、2冠王として2025年を迎えた。Eternal王者としてDWCSからUFCという道を目指していた伊藤にとって、今回のRoad to UFC出場は思いもよらぬ形でのチャンスとなる。今年29歳、キャリア26戦を数える伊藤は格闘技人生の集大成の覚悟でRoad to UFCに挑む。


話をもらった時は『えっ!マジか!?』と思いました

――伊藤選手は昨年6月にEternal MMAでロッド・コスタに判定勝利してバンタム級王座を獲得。12月にはGrachanで同級王者TSUNE選手にTKO勝利してEternal & Grachanの2冠王となり、Road to UFC(RTU)参戦が決まりました。

「正直に言うとRTU参戦は全く期待していませんでした。今年はEternalの防衛をやることになると思っていたし、これまでの戦績や年齢的なことを考えると(RTUの出場選手に)選ばれるのは厳しいと思っていたんです。だから話をもらった時は『えっ!マジか!?』と思いましたね」

――伊藤選手の場合はRTUよりもEternal王者としてDWCS経由でUFCに行くという道をイメージしていたわけですね。

「はい。Eternalのベルトを獲った時点で、それが一番ベストだと思っていました。ただUFCに行くチャンスは限られているし、出たくて出られるものでもない。RTUは3試合勝って優勝すればUFCと契約できるという意味で、UFCまでの道が明確で手っ取り早いのかなと思います」

――伊藤選手は昨年2試合を振り返って、どのような収穫がありましたか。

「試合に対する作り方や調整、あとは試合中の気持ちのコントロール……そういうところをしっかり出来るようになったかなと思います」

――どちらの試合もタフな展開であり、粘り強く戦ってチャンスを作るような試合だったと思います。

「僕も本当はスマートに戦って勝ちたいのですが(苦笑)、キツい試合に勝てたことは強みになったと思います。RTUでもキツい展開や試合は必ずあるだろうし、僕はRTU出場メンバーの中では年齢も上で戦績も多い方だと思うんですよ。そこは他の選手にはない強みかもしれないですね。もし厳しい場面に直面しても、まあ大丈夫だよなって感じでいられると思います」

――自分の力を過信するわけではなく、自分がやってきたことに対して自信があるわけですね。

「もちろん試合に絶対はないですし、どんな試合展開に転んでも大丈夫というか、そうできる練習をしてきました」

――前回のTSUNE戦以降、新しく取り組み始めたことや意識してやっている練習はありますか。

「グラップリングの強化とボクシング。特に打撃の面では今まで以上により細かくやっていますね。RTUが決まって、特別なことをやるというよりも、今ある武器をしっかり磨いてきました。今から僕がレスリングをガツガツやるかと言われたら、それは怪我のリスクも高くなっちゃうし、それよりも弱点を克服して得意なところに磨きをかけた方がいいと思ってやってきました」

今回のRTUのようなチャンスはおそらくない

(C)Zuffa/UFC

――一回戦で対戦するカイ・シャンに印象は?

「ニックネームが“ニンジャ”らしいんですけど、いざ試合を見てみると、とにかく打撃が止まらないし、グラップリングもやる。おそらくトータル的になんでもできる選手なんだと思います。試合の動き的には打撃のKOが多いかなと思ったら、意外に一本勝ちも多いので、すごく動く選手なんだと思います。勢いもあるし、試合をしたら面白いでしょうね」

――カイ・シャンのように動きが多い相手に対して、伊藤選手のすべき試合とは?

「僕は相手に合わせて試合をするつもりはないし、ある程度“これをやる”ということを決めているので、それがハマればという感じですね。自分がやることを試合で出すためにしっかり体を仕上げて、反復練習を続けてきました」

――TSUNE戦前のインタビューで「機械的に勝つ」と言っていましたが、今回もそこがテーマですか。

「そうですね。格闘技は相手のアクションに対して、こちらが何か返してあげなくてもいいし、変な意味で空気を読む必要もない。機械的に勝つということもそうだし、とにかく自分がやることをやるというだけですね。若い頃には勘違いして色気や欲を出して試合したこともありますけど、MMAで勝つためにそれは必要ないと思います」

――それこそ伊藤選手の年齢や他の選手にはない経験からくるものだと思います。改めてこのタイミングでRTUに挑む心境を訊かせてもらえますか。

「僕も来年で30歳になるんですけど、これからチャンスが増えていくことはないだろうし、今回のRTUのようなチャンスはおそらくないと思います。だからなおさら優勝しないと、これ以上はないということも分かっています。そういう意味で他の選手とは意気込みが違うかもしれないです」

――BRAVEからは神谷大智選手もRTUに出場しますし、ジム全体としても選手たちの戦う舞台がワンランク上に上がっている印象です。

「そうですよね。海外志向の選手も多いし、戦う舞台は違ってもみんなトップを目指してやっているし、志が同じ選手が集まっているから自然にそうなっているんだと思います。そういう環境で練習していれば選手一人一人の心構えも変わってくるし、意識も変わりますよね」

――それでは最後に日本から応援してくれるファンのみなさんにメッセージをいただけますか。

「今回は初めて日本代表として試合をさせてもらうんですけど、とにかく自分のキャリアと持っているものを全てぶつけに行こうと思っています。そういう自分の生き様みたいなところを見てもらえたらうれしいです。応援よろしくお願いします」


■視聴方法(予定)
5月23日(金)
午後8時00分~UFC Fight Pass
午後8時00分~U-NEXT

■Road to UFC S04 Ep03対戦カード

<Road to UFCバンタム級T準々決勝/5分3R>
ソランランポ(中国)
ピーター・ダナソー(タイ)

<Road to UFCライト級準々決勝/5分3R>
レン・ヤーウェイ(中国)
デニ・ダファ(インドネシア)

<Road to UFCバンタム級準々決勝/5分3R>
伊藤空也(日本)
カイ・シャン(シンガポール)

<Road to UFCライト級準々決勝/5分3R>
ジャック・ベッカー(豪州)
パク・ジェヒョン(韓国)

<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
キット・キャンベル(豪州)

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