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【Eternal MMA85】豪州で元王者ジャック・ベッカー戦へ、松本光史「答え合わせをするために強い相手と」

【写真】豪州西部、パースのスーパーマーケット前にて(C)KOSHI MATSUMOTO

8日(土・現地時間)、豪州パースのHBFスタジアムで開催されるEternal MMA85にて、松本光史がジャック・ベッカーと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

松本は今年3月に天弥戦で敗れて以来の復帰戦が、豪州エターナルMMA初出場となった。対戦相手のジャック・ベッカーはHEATでオク・ユレンとの対戦経験もある、同大会の元ライト級王者だ。松本にとって、ここで海外——しかも元王者という強豪と戦う意味とは。


――6月4日の深夜2時に現地到着で、その翌朝にインタビューを行っております。まずは長旅お疲れさまでした。

「疲れました(苦笑)。飛んでいる時間は問題ないですが、成田空港で、飛行機の中で1時間半も待つことになって……。他の便で火災トラブルがあり、同じ時間帯の飛行機も止められたんですよ(※注)。なんとか飛行機も飛んで、無事パースに着くことができました。まだ散策していないけど、とにかく道も何もかも広いという場所です(笑)」

注)4日10時16分に成田空港を離陸した貨物機で、エンジンの不具合が発生。貨物機は引き返し、成田空港に緊急着陸する。その影響で成田空港では一部の便の出発が遅れたという

――今回、豪州のエターナルMMAで戦おうと思った理由から教えてください。

「もともと海外で試合をしたいとは思っていたんですよ。自分の中に『外国人選手を乗り越えることができていない』という気持ちがあって。ただ、ここ最近はそこまで勝てていないし、前回も負けている。そんな状態で海外の大会と交渉しても、そこまで強くない相手と組まれるんじゃないかと考えていました。

そんな中で、今回はジャック・ベッカーという――エターナルの元王者との対戦というオファーが来て。試合間隔の短さは心配ではありましたけど、トライしようとオファーを受けました」

――正直なところ現在の戦績で、かつ試合間隔の短さから「これが最後のチャンスだと考えたのか……」とも思いました。

「あぁ、分かります。……うん、そうですよね。前回の試合は負けたけど、チェックを受けて自分の体も大丈夫だったし、すぐ練習も再開していたんですよ。それと準備期間を十分に取ったからといって、万全の状態で試合に臨めるとも限らないわけで。試合が決まるのも、その時の運というか、巡り合わせみたいなものじゃないですか。だから自分には断る理由がなく、とにかく『ジャック・ベッカーと試合したい』と思ったんです」

――相手がベッカーという点は大きかったわけですね。

「それは大きいです。エターナルMMAの元王者で、強い選手ですからね」

――まず前回の天弥戦後に「大丈夫だった」と言える体が凄いです。

「アハハハ、そうですよね。あんなに血だらけになっていたのに(笑)。

あの時は『これが効いた!』という、脳が揺れるようなクリーンヒットはなかったんですよ。それより攻防の中で疲労のほうが強かったです。もちろんダメージがないわけではないけど、試合後に何日間も頭が痛いとか、そういうことはなくて。頑丈な体に産んでくれた親に感謝しています」

――良かったです。しかし天弥戦の敗北で、ライト級KOPのベルトからは一歩遠のいてしまいました。

「はい、そうですね」

――そんななかでエターナルのオファーが来るまで、ご自身の今後についてはどのように考えていましたか。

「考えていたようで考えていなかったというか…」

――というと?

「天弥戦で負けはしたけど、もっと強くなれるんじゃないかという実感があったんですよ。正直、パンクラスで戦った試合の中では一番それを感じて。

打撃の取り組みとか練習したことを出せたし、体の調整も変えたりしている、自分の中でうまくいっていなかった部分が繋がったところもあって。もちろんミスした部分もあったので、そこを改善していくと『もっとやれるんじゃないか』と思ったんですよね。だから試合が終わったあと『すぐに練習したい』という気持ちになりました。

あの敗戦でベルトから遠のいたのは分かります。だけど、強い相手じゃないと自分をつくり上げていくことができない。だから強い相手との試合のオファーを受けたんです」

――そうだったのですね。ダメージよりも疲労が大きかったという点について、20代の頃と比較することはありますか。

「体力が落ちたか、っていうことですよね。それは考えることはあります。若い時のほうが体力はあるのは当然で。数値化したら落ちているとは思うんですよ。でも若い時は、今のように精度や質の高い練習をできていたか。それは過去のことだから、今はもう数値化できないです。

若い時に今と同じ出力で試合をしても、疲労は変わらないんじゃないかとも思うんです。むしろ今のほうが精度と質が高くなって、それだけの出力で試合をしているから疲労もするんだろうなと。もう答え合わせはできないから、考えるのはやめました(笑)」

――過去と比べたり、過去を振り返っても意味はないと。

「はい。今その答え合わせをするためには、これから強い相手との試合で結果を残すしかないんです」

――今後のキャリアを考えるうえで、まずは一度エターナルMMAで気持ちを切り替えたい、ということですか。それともエターナルのベルトを目指したいですか。

「まだ分からないですけど、今回は相手がベッカーだから出るということで。実際に試合をしてみてから、次のことは考えたいです。もしベッカーに勝って、次の試合にも勝ってタイトルマッチという流れになるなら、エターナルのベルトを持って帰ったほうが、パンクラスにとっても良いかとは思っているんですよ。パンクラスのライト級も強い選手が揃ってきて、誰と対戦しても面白いでしょうし。自分がスパイスのようになるほうが、パンクラスの坂本靖さんも喜ぶような気がします(笑)」

――特にベルトを巻いてパンクラスに戻ってくれば、箔は付きますよね。初戦の相手ベッカーの印象を教えてください。

「一番は、タフですね。体も僕より一回り大きいし。どちらかというと組みの選手で、バックテイクすると相手を逃がさないというファイターです。そこで封じ込められたら負けてしまうとは思っています」

――しかもパンチを受けながら前に出て来るという……。

「ああいうタイプは苦手なんですよ(苦笑)。でもオファーを受けた理由として、ベッカーの実績はもちろん、こういうタイプを克服したいという気持ちもありました。その対策もしっかり練ってきたし、ベッカーに勝てばまた一歩先に進めるんんじゃないかと思います」

――どう考えてもフルラウンド削り合うことになるでしょう。敵地でフルラウンド戦うのは、スタミナだけでなくメンタル面の疲労も激しくなるとは思います。

「海外で試合をするのは2013年のPXC、フランク・カマチョ戦以来なんですよ。あの時はグアムで、今回はもっと日本から遠い場所ですけど――日本に来る外国人選手は、そういう状況の中で戦い、勝っているファイターもいるわけじゃないですか。そこでパフォーマンスを出せるかどうかは、自分にその能力があるかどうかであって。自分は出せるように、つくり上げてきました。良いパフォーマンスを見せることができると思いますので、皆さんUFCファイトパスでご覧ください!」

■視聴方法(予定)
6月8日(土・日本時間)
午後7時00分~UFC Fight Pass

■ メイン対戦カード

<Eternal MMAバンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]ロッド・ッコスタ(豪州)
[挑戦者]伊藤空也(日本)

<Eternal MMAフライ級選手権試合/5分5R>
[王者]アンソニー・ドルリッチ(豪州)
[挑戦者]マックス・リアリ(香港)

<ライト級/5分3R>
ウェズ・キャッパー(豪州)
デヴィッド・マルチネス(豪州)

<ライト級/5分3R>
ジャック・ベッカー(豪州)
松本光史(日本)

<フェザー級/5分3R>
ケヴィン・コーファメル(豪州)
ジェセフ・デイヴィス(豪州)

<ウェルター級/5分3R>
カーン・ディアタ(豪州)
ホシ・フリードリック(豪州)

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