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【ONE167】MMAデビュー戦前のケイド・ルオトロ「数年でトップファイターに。ADCCかCJIか……」

【写真】いよいよ。本当にインタビュー中の表情、声はリラックスしていたケイドだ (C)CHOI WOO SUK

8日(土・現地時間)、タイはバンコクのインパクト・アリーナで開催されるONE167でケイド・ルオトロがブレイク・クーパーとMMAデビュー戦を戦う。
Interview by Choi Woo Suk

ADCC2022、77キロ級優勝。ONEではサブミッショングラップリングで世界ライト級王者に君臨しているケイドが、MMAに挑む。強い――だけでなく、フィニッシュ能力の高さ――だけでもない。正確無比ならが、無機質でなく華麗なグラップリングで組み技ワールドを変革した天才。もちろん、組んでしまえば圧倒的に強いだろう。ただし、グラップリングはない要素がMMAには存在する。

そんなMMAに対し、柔術家ではなくマーシャルアーチストとして全てに対応できる姿を見せたいというケイドにMMA、そしてADCCかCJIが揺れるグラップリング界について話を訊いた。


12歳の時からムエタイをやってきた

──MMAデビューを土曜日に控えているケイドです(※取材は5日に行われた)。今の気持ちを教えてください。

「そうだね、今の気持ちの大部分はワクワクしている――ということかな。実は柔術の時と比較すると、もっとナーバスになると思っていたから自分でも驚いているんだ。正直なところ、柔術の試合の時よりも緊張していない。きっとキャンプでの仕上がりが最高で、ワールドベストのコーナーマンがいてくれるから、凄く自信があるんだと思う。試合が楽しみでしょうがないんだ」

――ところでMMAを真剣に戦おうと思ったのは、いつからだったのでしょうか。そして、このタイミングになったのは?

「子供の頃から、いつかMMAを戦いたいと思っていた。MMAの練習もしていたけど、定期的っていうことじゃなかったんだ。去年ぐらいからは週に1度、あるいは2度ほどトレーニングをするようになっていたけどね。よりシリアスにMMAの準備をするようになったのは3カ月前から。前戦のキャンプ後、MMAを戦う時が来たと思ったから、今回のタイミングになったんだ」

――やはり気になるのは、打撃です。どれだけ準備ができているのでしょうか。

「その質問に対して、求められている答えにならないかもしれないけど、12歳の時からムエタイをやってきた。柔術のジムでやってきたから、それほど高度ではない。それでもMMAっぽい動き、MMAを考えた練習をずっとタイとやっていたんだ。MMA的な動きに関しては、適応できていると思っている。もちろん、過去3カ月ほど集中してやってきたわけじゃないけど、MMAに関しては週に1度とか2度トレーニングをしてきたことも生きるんじゃないかと思っている」

――このファイトキャンプで、打撃は誰の指導を受けてきたのでしょうか。

「タイラー・ウォンブルス(へナート・ババルの黒帯ムエタイ選手。クラシック・ファイトチームのヘッドコーチでレイモンド・ダニエルズ、アンドレ・フィーリ、トニー・ファーガソン、アレックス・ペレスらを指導してきた)だよ。ハンディントンビーチはムエタイ、キックボクシングで優れたストライカー、そして指導者がいる。なかでもエリック・パーソンには打撃単体だけでなくて打撃と柔術、そしてレスリングをミックスした動きを教えてもらってきた」

――ウォンブルス・コーチやエリックの指導を受けたということですが、主な練習場所や練習パートナーは誰だったのですか。

「タイはいつも一緒に練習してきたけど、タイラーとエリックのジムで彼らの生徒とやってきたよ。2つのジムの皆が僕をサポートしてくれたから、凄く成長が早かった。本当に彼らには感謝している」

――柔術、レスリングと同様に打撃もMMAの一部です。どのようなMMAを戦いたいと思っていますか。

「全てだよ。本当のマーシャルアーチストは、何か一つのことが特別に秀でているのではなくて何でも対応できないと。もちろん柔術は僕にとって最高の武器だ。でも柔道の投げ、レスリングのテイクダウン、特にパンチ、打撃の能力を……キックも含めて皆に披露したい。全てを見せることなく、試合を終わらせることになるかもしれない。それでも全力で今持ちうる力を使いたい」

――打撃は主に押す力。グラップリングは引く力。そういう筋肉の使い方をすると言われています。

「その通りだ」

――両方を使う時、タイムラグが生じることがあるという指摘もありますが、そのように感じることはありますか。

「それはあくまでも普通の生活における筋肉の使い方、その範疇の話だよ。僕らの肉体や心肺機能は、決定的に普通の人たちとは違う。打撃を使って組みつく。グラウンドで攻めていて、スタンドに戻ってすぐに打撃を使う。全てのスポーツで肉体の使い方は違っているけど、MMAはあらゆるスポーツの体の使い方が一体化している。そういうラグをなくすためにドリル、スパーリングで時間を費やしているんだよ。いkなる動きをしていても、肺機能を活発しないといけない。パンチ一つをとっても、脹脛だって連動している。そういう普段の生活にはない動きが、徐々に見についてくる。それこそがマーシャルアーツの練習の素晴らしい点だよ」

――なるほど、です。ではブレイク・クーパーの印象を教えてください。

「クーパー一族の一人だよね。一族の全員が重いパンチ、ノックアウトパワーを持っている。ハワイらしくて、家族の絆が太い。人生の中心にレスリングがあって、凄く尊敬しているファミリーだよ」

――では現状、ケイドにとってMMAでの目標は?

「チャンピオンになること。サークルケージに足を踏み入れ始めたばかりの僕が、こんな風に言うのは無礼なことかもしれないけどね。でも、数年以内に自分の階級のトップファイターになる」

――では、これからもMMAを続けていくということですね。

「絶対的に続けるよ。今年中にもう1試合戦いたいと思っている。この試合のあと、タイがONEで柔術マッチが控えている(※ケイドはグラップリングの試合も柔術と呼ぶことがある)。そして、1度柔術トーナメントに出るだろう。9月にはコロラドでマイキー・ムスメシとグラップリングマッチも決まっているし、どんどん試合をしていきたいんだ。希望としてはONEが11月にアトランタで開くUS大会で、MMAの2戦目を戦いたい」

ADCCかCJI、今はまだ心が揺れている状態。来週には答を出す

――今週末にMMAを控えているケイドですが、今、グラップリング界が揺れています。クレイグ・ジョーンズがADCC世界大会に100万ドルの賞金が懸かったトーナメントをぶつけてきました。

「ADCCは五輪のように世界最大の柔術トーナメントだ。未来永劫に、ね。クレイグ・ジョーンズは2階級で優勝賞金100万ドルの16人制トーナメントを行う。賞金目的で多くの選手がADCCを離れるだろう。僕とタイはADCCで戦うのか、クレイグ・ジョーンズ・インビテーショナルで戦うのか。まだ決めていない。

ADCCがなければ、ここまで柔術が脚光を浴びることはなかった。同時に100万ドルは大きいよ」

――8月、ケイドとタイがTモバイル・アリーナ、あるいはトーマス&マック・センター――どちらに姿を現すのか。いずれにしても、楽しみでならないです。

「2年前、トーマス&マック・センターでADCC世界大会を戦った時、4試合で4つの一本勝ちを収め生涯最高のパフォーマンスを見せることができたと思っている。あの会場は本当に思い入れがある。クレイグ・ジョーンズが、あの会場を使用する。そして、より大きなTモバイル・アリーナで開かれるADCC世界大会はチケットもほとんどソールドアウトらしい。二つのショー、それぞれが最高になるだろう。

ほんと、難しいよ。タイとずっと話し合ってきた。来週には答えを出さないといけないけど、今はまだ心が揺れている状態だよ」

■放送予定
6月8日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

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