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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:4月 ペレス×ニコラウ「平良選手は前に出て距離を作れるか」

【写真】平良達郎と試合が決まったことで、改めてペレス戦が一つの大きな壁ということが分かる(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2024年4月の一番──4月27日に行われたUFC ESPN55のアレックス・ペレス×マテウス・ニコラウについて、6月15日のUFN242:UFN on ESPN+100「Perez vs. Taira」で決まった平良達郎戦を見据えて語ろう。


――4月はUFC300もあったなかで、あえてアレックス・ペレス×マテウス・ニコラウをセレクトした理由を教えてください。

「やっぱり平良選手とペレスの試合が決まったということで、このタイミングでぺレスのことを話したいと思ってチョイスさせてもらいました。ペレスのいいKO勝ちではあったと思うんですけど、特別この試合がよかったというよりも平良選手ありきの選考です」

――水垣さんはぺレスにはどんな印象を持っていますか。

「レスリングがベースにあって、レスリングのプレッシャーがあるなかでスタンドが強い。あとはスクランブルが強くて、そのなかで首系サブミッションにはめるのが上手い印象です」

――ガードを上げてパンチとテイクダウンのプレッシャーをかける典型的なアメリカンスタイルという印象です。

「そうですね。レスリング+ボクシングをメインにしつつ、カーフキックも蹴るので、上手く味つけができている選手だと思います。ニコラウ戦で最初にダメージを与えた右のオーバーハンドも、実際に組んだわけではないですけど、下に入る動きを反応させての一発でしたからね」

――打撃そのものが綺麗なわけではないですが、前に出る圧力と組みのプレッシャーで打撃もヒットさせているタイプかなと。

「はい。ペレス=レスリングが強いという印象が相手にもあるので、それがあっての打撃という部分もあると思います」

――ペレスは現在ランキング5位、レコードを見てもトップ中のトップにしか負けていないですよね。

「ジョセフ・べナビデス、デイヴィソン・フィゲイレド、アレッシャンドリ・パントージャ、ムハマド・モカエフ、チャンピオンクラスやトップ選手ばかりですからね。ペレスは間違いなく強い選手ですよ。トップ選手に対する物差しという意味では、この相手に平良選手がどう戦うかも楽しみです」

――リアルな平良選手の実力が分かる相手だとも思います。ペレスはチャンピオンにはなっていないけど、それ以外の選手にはきっちり勝つ位置にいる選手なので。

「しかもニコラウ戦の勝利で連敗脱出しているので、気持ち的に乗っていると思います。そのうえで試合間隔も短いくていいリズムで試合ができているので、そこも厄介な部分ですよね。あとは期待の若手を迎え撃つという面で、今回は平良選手が相手だから平良選手を応援していますが、心情的にはペレスの気持ちも分かるんですよ。僕もドミニク・クルーズとアルジャメイン・スターリングに負けたあと、ジョージ・ループに勝って、コーディ・ガ-ブランドを当てられたんで。ペレスが自分にかぶる部分があるし、その気持ち分かるよって(笑)」

――ずばりこういう試合のオファーは反骨心に火が付きますか。

「そうですね。ペレスも『物差しに使われているな、俺』って思うだろうし、周りからの踏み台になってほしいというのを感じていると思うので『このやろー!』という気持ちになっていると思います」

――ペレスは平良選手が今までやってきた相手と比べて、どこかが秀でているという相手ではなく、すべてにおいて一回りも二回りも強い選手だと思います。

「二回り、ですね。一回りじゃ利かないです」

――その相手をどう攻略するか。今までのように平良選手が持っている武器をぶつけて真っ向勝負するだけでは厳しいと思います。

「平良選手陣営がどういうプランを立ててどこで勝負するか。出たとこ勝負では勝てない相手だと思います」

――ちなみに水垣さんがセコンドだったら、平良選手にどう戦わせますか。

「テイクダウンして上を取れるなら、それが一番いいですよね。ただそう簡単にはいかないから、スタンドでどう戦うか。平良選手の方がフレーム的には大きいですし、データ的にはニコラウよりも平良選手の方が身体のサイズそのものは大きいんですよ。そこは有利になると思います。とにかく平良選手は距離を詰められたくないし、距離は作るけど下がるのはダメ。前に出ながら距離を作れるかが大事だと思います」

――とにかく平良選手としては下がってペレスに調子づかせるのが一番キツい展開だと思います。

「ぺレスからすると相手が下がってくれたら、やりやすいと思います。上(打撃)でいくのか、下(テイクダウン)でいくのかを混ぜやすいので。ニコラウ戦のフィニッシュもケージ際の追い込み方が上手くて、左の攻撃を見せておいて、ニコラウが左=ペレスの右側に来るように動かせておいて、そこで右を打ち抜いたんで。右が見にくいところに動かせておいて倒している。自然にやっているかもしれないけど、あれは上手かったですね。ニコラウは下がってボクシングが出来るスタイルなので悪い意味でペレスとかみ合っちゃったんですよね。だから平良選手としては下がらないで距離を作れるかどうか」

――パントージャはいきなり殴りに行ってバックを取って決めてるじゃないですか。あのくらい前に出るのもありなのかなと思います。もちろんあれはパントージャだから出来たところもあるわけですが。

「とにかく上は取りたいですよね。ただ僕が危ないと思うのが、平良選手がテイクダウンの展開で尻餅をつかされて、スクランブルの攻防で首を狙われること。テイクダウンされても慌てて上を取りに行かず、ある程度は下から展開を作るのもありだと思いますね。もちろん下になって落ち着いてはダメですが、慌てて動くのも気を付けないといけない。きっとペレスはそれを誘ってくると思うので」

――タイトにトップキープしないことが首系への布石になる場合もありますよね。

「そうです。テイクダウンしたら平良選手が頭を出してくるようにわざと動かせてくる可能性もあると思います」

――そして今回は5Rで行われます。平良選手がトップに行けるかどうかが試される一戦です。

「UFNの5Rはタイトル戦を見越して5Rが採用されているわけですし、そういう試合が組まれたことは平良選手への期待の表れだと思います」

――ランキング的にもペレスに勝てばトップ5に入ってくると思います。

「10位~5位の相手と一戦挟んだ方がよかったかもしれませんが、いきなりいい相手が用意されたので、ここで勝てば大きいですよね。この試合を通して、ライバルとされているモカエフやパントージャと比較してどうだという見方も出てくると思います」

――UFCで日本人がタイトル戦線に絡む勝負も久々ですよね。

「最近の日本人はUFCに生き残れるかどうかの試合が多かったじゃないですか。そのなかで頂点が見えてきている選手はまれだと思うので、なんとか勝ってほしい!」

――水垣選手としてはペレスの気持ちが分かる一方で、同じ日本人として平良選手を応援するということですね。

「はい。ここはホントに勝ってほしいなぁ」

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