【DEEP Tokyo Impact2024#01&Pancrase341】極真空手出身、海飛&天弥「打撃の回転力と威力が違う」
【写真】性格や考え方は違うが、自信は同じの極真空手出身ブラザーズ(C)SHOJIRO KAMEIKE
和術慧舟會HEARTS所属の兄弟ファイター、海飛&天弥が共に試合を迎える。海飛は24日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP Tokyo Impact2024#01でTASUMIと、天弥は31日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで行われるPancrase341で松本光史と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
地元の山口県で極真空手を学んだ2人は、MMAファイターとなるため上京した。しっかり者の兄・海飛と、ヤンチャな弟・天弥というイメージが強い。なぜ二人が極真空手を始め、そしてMMAに辿り着いたのか。いろいろと異なる両者の考え方から、それぞれの個性が浮き彫りになる。
――お二人は極真会館山口支部の出身とのことですが、極真空手は一緒に始めたのですか。
天弥 年齢が6歳ぐらい離れているので、僕のほうがだいぶ後ですね。
海飛 まず僕が4歳の時に極真空手を始めました。もう20年前になります。
天弥 ということは、自分が生まれる前の話ですね。すげぇ(笑)。
海飛 アハハハ。僕は母に道場へ連れていかれたことがキッカケでした。当時は気持ちが弱い感じの子だったらしいんですよ。もっと強い気持ちを持てるようにと、極真空手の道場に入会させたと聞いています。
天弥 母ちゃんは伝統派空手の道場にも行って、「当てないのは意味ない」とか言っていましたよ(笑)。格闘技だから当てるべき、と思っていたんでしょうね。父ちゃんも不良だし。
海飛 その世代だと、地域で誰でも知っている3兄弟だったらしいです(苦笑)。
天弥 その父ちゃんがPRIDEとかK-1が大好きで、ずっとテレビで格闘技を視ていました。もしかしたら子供を格闘家にさせたいと思っていたかもしれないけど、最初は父ちゃんのほうが空手をやることに乗り気じゃなかったんですよ。
海飛 自分が成績を残し始めてから、子供の格闘技に力を入れ始めたっていう記憶がありますね。僕たちは4人兄弟で自分が長男、天弥が三男で。次男と四男は、それほど長くは空手を続けませんでした。
――幼少期に空手を始めた頃の記憶はあるのですか。
海飛 あります。まず見学に行った時、道場にいる人がみんな優しくて。それで自分も楽しくなって入会しました。
天弥 自分もそうですね。最初に戦隊ヒーローの変身グッズを身につけて道場に行ったんですよ。みんながそれで可愛がってくれたのが嬉しくて入会しました。
――皆さん、地元では小学生の時から有名な空手兄弟だったのでしょうか。
天弥 地元の新聞では何度も紹介されていましたね。自分は中四国大会を6連覇していて、全国大会や国際大会でも3位になりました。
海飛 僕は小学校の時に弱くて、中国地方大会で3位とか、全国大会でも入賞できないぐらいでした。次男も天弥も、めちゃくちゃセンスがあるんですよ。ずっと自分よりも結果を残していて、同じ空手をやっている身としては歯がゆかったです。でも弟たちだから嬉しいし、自分も早く追いつきたいと思っていましたね。
――極真空手の世界大会や全日本大会を取材していた頃に、一つ印象に残ったことがあります。極真空手の大会はセコンドにつく人数が多いのですが、服装がバラバラの道場よりも、チームTシャツなどで揃えている道場の選手が勝ち上がるケースが多くて。
天弥 あぁ! 確かに。
海飛 ウチの道場もそうでした。山口県支部全体で土日は集まり、合同稽古や合宿をしたりとか。そういうのって大切だと思います。ウチはまた四男が強くて、小学生なのに下段蹴りが強くて県大会も優勝していました。
天弥 全然かわいくない小学生だ(笑)。
海飛 僕たちでも食らったら痛いぐらいで、周りの子たちも練習を嫌がるレベルでした。
――お二人は空手時代、何の技が得意だったのですか。
天弥 自分は左ディですね。
海飛 天弥は子供の頃から当て勘が良くて、空手の試合でもバンバン左ボディを当てるんです。
――子供の試合であればボディでも真っ直ぐの突きを胸元に当てることが多いと思いますが、そうではなく完全に左ボディブローだったのですね。
海飛 子供の試合もボディのプロテクターはなくて。それなのにバンバン左ボディを打つんですよ。
天弥 めちゃくちゃ得意で、それはMMAをやっている今でも同じですね。
海飛 僕は昔から蹴りが得意でした。左上段蹴りや顔面ヒザが好きで。なぜか兄弟全員でファイトスタイルが違うんです。
天弥 あれ、なぜなんだろうね?
海飛 天弥は4歳の時に空手を始めた時から、バンバン左ボディを入れていたよ(笑)。年長さんのクラスで優勝した時も左ボディで技ありを取っていて。
天弥 何だろうなぁ……。当時から殴るのが好きだったんだよ(笑)。
――お二人はヤンチャな道には進まなかったのでしょうか。
海飛 それは天弥だけですね。地元の公立校は荒れていて、僕は私立に入りました(笑)。
天弥 アハハハ。でもピークは小6ぐらいでしたよ。それが中2~3ぐらいに落ち着いて。
海飛 グレるのも落ち着くのも早すぎるよ!
天弥 単にやることがなかったんですよね。みんなテレビゲームが好きだったけど、自分はそうでもなくて。家にいても楽しいことはないし、外に出て○○の方法を覚えて××をやるようになったりとか。
――……書けない話はやめましょうか(苦笑)。
海飛 兄としては心配でしたよ。とにかく親や他の人に迷惑をかけることはないように、と注意していて。
――すごい世界観です。格闘技の話に戻しますが、空手をやっている頃からプロのMMAファイターになりたいと思っていたのですか。
海飛 僕はずっとプロになりたいと思っていました。
天弥 自分は何も考えていなかったですね。ただ強いヤツとやり合うのが好きで。
海飛 MMAをやるために僕が先に東京に来ていて。当時は天弥が高校に進むかどうか、という話になっていたんですよ。でも天弥は本当に空手の才能が凄くて――正直、それほど練習していないのに強かったので(笑)。
天弥 アハハハ!
海飛 それなら格闘技をやったほうが良いと思い、天弥を東京に来るように誘いました。「本人がやりたいと思うなら、東京に来れば良い。東京では自分が一緒に住むから」と。
――弟想いのお兄さんですね……。海飛選手はなぜ上京したのですか。
海飛 MMAをやるなら東京が最先端だと思ったからです。それでジムを見学しようと思って、最初にこのHEARTSに来ました。もともと大沢ケンジさんのことはテレビ解説とかで知っていて。実際に来てみて話をしているうちに、大沢さんの選手との距離感が好きになったんです。それでHEARTSに入ろうと決めました。
――天弥選手は、海飛選手が上京してMMAファイターになっていくのを、どのように見ていたのですか。
天弥 特に――何も(笑)。
海飛 弟たちは3人とも、僕には全く興味がないです。
天弥 MMAやるには線が細いんじゃないか、っていうぐらいですね。アハハハ。
――ちなみに四人兄弟で、他のお二人は……。
海飛 次男は空手を辞めてバスケットボールを始めたのですが、今は山口県の有永道場Team ResolveでMMAをやっています。
天弥 去年、MMAを始めて2~3カ月ぐらいでアマチュア修斗の山口トーナメントで優勝していましたよ(※注)。今年は全日本選手権に出るかもしれないです。
海飛 四男はMMAをやっていなくて。全日本選手権は呼んだら見に来るかな……。
注:次男は吉村大地。有永道場Team Resolve所属で、昨年12月に山口県で開催されたアマ修斗オープントーナメントでウェルター級を制し、取材後の3月17日にも同トーナメントで優勝している。
――上京した時期は1年も違わないお二人ですが、プロのキャリアは海飛選手が10戦で天弥選手が3戦という試合数の差は何か理由があるのでしょうか。
海飛 僕のプロデビューが早すぎました。MMAを始めて半年ぐらいでアマチュアパンクラスやDEEPのフューチャーキングも優勝して、さらに格闘DREAMERSの相手役に選ばれて勝ったじゃないですか。それでプロデビューしなきゃいけない、という流れになり……。
やっぱりMMAを始めた当初は、レスリングや寝技が大変で。最初は『殴れば勝てるでしょ』と思っていたし、実際にアマチュアで勝っていました。でもそれは打撃貯金で勝っていただけでしたね。だからプロデビューしてからは苦しかったです。2連勝して2連敗、また2連勝したあとに3連敗で――最後は減量にも失敗してしまったので。もうメンタル的には地の底にいるような感じでした。
――その状態から、いかに立ち直ったのですか。
海飛 前回の五明戦は、とにかくメンタルを安定させようって考えました。やっぱり気持ちがフワフワしていると勝てないですよね。打撃は国内でもトップクラスだと思っています。組技はそこまでではないけど、自分はできると信じる。ちゃんと自信を持って試合に臨めば勝てるという気持ちで戦いました。要は自分自身に勝てるかどうか、ですよね。
――その五明戦は、とにかく相手が嫌がることをやり通したという印象です。
海飛 はい。相手がやりたいだろうと思っていることを全部潰しました。五明選手は伝統派空手のチャンピオンで、踏み込みの幅もスピードも凄いじゃないですか。その踏み込みから来る左ストレートが強くて。だからまず相手の踏み込みを、カーフキックで潰したんです。
――そうだったのですね。では次に対戦するTASUMI選手の印象を教えてください。
海飛 RNCが得意な選手ですよね。それさえ警戒しておけばKOできると思っています。絶対に勝たないといけない試合です。
――2022年4月に鈴木崇矢選手をKOした時は、どうしても我々も「鈴木崇矢をKOした選手」という見方をしていたと思います。そして今回「五明宏人に勝った男」と見られるかもしれません。そういった注目のされ方については、どう考えますか。
海飛 別に僕は何とも思っていないですね。そもそも五明選手が特別強いと考えていなかったので。あの打撃が見えないだけで、別に組み技は強くなかったですし。もちろん五明選手のほうが注目されていたことは分かっていました。でも最初に左ストレートをもらった時も、『このパンチでは倒れないな』と思いましたし。
天弥 まぁ、TATSUMIって誰だよって感じですよ。僕としては『そんな相手に負けるなよ』としか思っていませんね。
海飛 アハハハ(苦笑)。
――一方、天弥選手はデビュー戦で芳賀ビラル海選手にKO勝ちしたものの、2戦目で反則負けを喫しました。
天弥 結果は結果なので悔しかったです。でも特に何とも思っていないというか、そこまで気にはしていないですね。それで3戦目もKO勝ちして、大沢さんからパンクラスの坂本靖さんに『次は松本光史選手と試合したい』と言ってもらいました。松本選手も僕の映像を視て、試合を受けてくれたという流れですね。
――自分から元チャンピオンとの対戦をアピールしたのですか。
天弥 僕は自信満々なので。大沢さんから『次は誰と対戦したい?』と聞かれて、僕が『松本選手です』と答えました。松本選手に勝ったら、次はタイトルマッチだと思いますし。
――松本選手に対しては、どのような印象を持っていますか。
天弥 まぁ……試合は面白くないですよね。
海飛 いや、あの――(苦笑いしながら顔を背ける)。
天弥 本当にちゃんとしたMMAファイターだと思うんです。トップキープが得意で、テイクダウンして漬け込んでくる。さらにボクシングの練習をして、パンチにも自信がついてKOも増えたっていうイメージです。
――松本選手はキャリアを重ねるごとにカウンターが向上している印象があります。
天弥 そうですね。でもカウンターを合わせられるものなら合わせてみろ、って思いますよ。絶対に倒されないです。
海飛 まず天弥とはスピードが違うと思うんですよね。僕たちは回転力、パンチと蹴りの威力が違うし、そして切り返しが強い。特に天弥は自分の空間を作る能力が高いというか、距離の取り方が巧いので。なかなか相手は触ることもできないと思います。
天弥 今年からベルトを狙って動き出したので、まずは松本選手を倒します!
■DEEP Tokyo Impact2024#01 視聴方法(予定)
3月24日(日)
12時25分~DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ
■Pancrase341 視聴方法(予定)
3月31日(日)
13時~U-NEXT