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【Bellator CS2024#01】パトリシオ・フレイレ─01─「チヒロとの試合を思い出さないわけはなかった」

【写真】パトリシオのリモートインタビューでの背景は、お馴染みの感じになってきた(C)MMAPLANET

22日(金・同)に英国は北アイルランドのベルファーストにあるSSEアリーナで開催されるBellator Champions Series2024#01「Belfast」でジェレミー・ケネディの挑戦を受けるBellator世界フェザー級王者パトリシオ・フレイレ。
Text by Manabu Takashima

パトリシオは本来2月24日(土・同)にサウジアラビアで実現したPFL Champ vs Bellator ChampでPFL世界フェザー級王者ヘスス・ピネドとの王者対決が決まっていた。しかし、ファイトウィークになりピネドが足の負傷で欠場となり、ガブリエル・ブラガとの対戦が発表されていた。

ところが計量の日になってブラガは父の死を引きずっているという理由で試合がキャンセルに。現地入りして激しい感情の起伏を経験したパトリシオ。ショートノーティスでの試合を受ける際に、彼が昨年7月の鈴木千裕戦を思い出さないわけがなかった。

それでも試合を受け、結果的にキャンセルとなったパトリシオにサウジアラビアで起こった出来事について訊いた。


──2月24日のPFL vs Bellator、パトリシオはローラーコースターのようなファイトウィークを送ったことだと思います。まずヘスス・ピネドとのチャンプ・チャンプ対決が行われなくなったことをいつ知ったのですか。

「サウジアラビアに着いてからだった。プロモーションの方からは試合を組む意向だと聞かされていたけど、計量の2日前になってガブリエル・ブラガと戦うことになった。でも、知っての通り試合は行われなかった」

──ピネドとの試合が無くなったと知った、昨年7月に鈴木千裕選手とショートノーティスで戦ったことが思い出されました。実際にパトリシオ陣営の人間からも『代役とは戦うべきでない』という言葉が自分の下には届いていました。ピネドが欠場になった時、代替カードに出場しないという選択肢はありませんでしたか。

「ショートノーティスでガブリエルと戦うことを決める前に、チヒロとの試合を思い出さないわけはなかった。それは今回、ジェレミー・ケネディの挑戦を受けることを決めた時も同じだったよ。短い準備期間で違うファイターと戦えば、またあの敗北のような経験をするかもしれないという考えは常にあった。

ただ結局のところ、俺はウォリアーなんだ。戦いたいという気持ちが、躊躇する考えを上回った。ガブリエル戦が伝えられた時も同じ状況で、俺だけが不利ということではないからね。だから戦うことを決めた。チヒロとの試合前は、首にシリアスな負傷があった。ヒチロは優れたファイターだけど、首の状態の悪さが敗北を招いたと思っている。

ただ手術をして、首は完治した。今は当時より、ずっと良いコンディションだ。あの手の負傷はもう2度とすることはないだろう」

──う~ん、なおさら試合を受けた理由が分かりかねるのですが。そこが日本だったということは関係していますか。

「その通りだよ。若かった頃、俺のヒーローは皆がPRIDEで戦っていた。自分にとって日本で戦うことは夢だった。日本という国で、日本に住む皆の前で戦いたかった……にも関わらず、クレベル・コイケとの試合で俺は何かを失ったような気がしていた。それもあってショートノーティス、体調も良くなかったけど俺は日本のファンの前で最高の試合がしたかった。結果として、大きな代償を支払うことになってしまったんだけどね。だからこそ、チヒロとの再戦は少しで早く実現させたい」

──あの試合を受けたことに後悔することはなかったですか。

「思ったような結果を手にすることはできなかった。ただし、あの場で戦うことを頼まれて、そこに応えない方がずっと恥ずべきことだと俺は今でも思っている」

──ウォリアーの言葉通り、地球の反対側のサムライです。

「ハハハハハハ(にっこりと笑顔を浮かべ、刀で斬る仕草を見せた)」

──鈴木選手との試合と違い、ブラガ戦は実現しませんでした。お父さんを亡くしたことは本当に悲しむべきことです。と同時に1カ月以上前にアーロン・ピコと対戦が決まっており、開催地まで来てお父さんを失ったことが原因で戦わなかったという話が伝わってきて、釈然としないというのが正直なところでした。

「計量後、ガブリエルが戦えないということを聞かされた。彼の気持ちは分かる。ガブリエルは試合を戦わなかっただけでなく、引退を決めたんだ。トレーナーとしても、彼を導いてきた父親を亡くしたことでね。自分がそんな状況に直面したら、やっぱり戦うことはできなくなるだろう」

──……。

「ガブリエルとは計量の翌日、ファイトデーの日に話をした。俺と俺のチーム、ガブリエルとガブリエルのチームの面々で揃ってグロッサリーストアに行き、食事も一緒にしたんだ。彼がこのタイミングで試合をしようと決めたのは、父親の死を乗り越えて前に進むためだった。ファイトキャンプをハードに行い。前向きに生きて行こうという決意の表れだったんだよ。そして、ガブリエルはしっかりとキャンプをやり切ったんだ。

でも飛行機に乗った途端、父親との遠征や練習、全ての思い出が蘇ってきた。ファイトウィークの練習も、減量も全て亡き父を思い出さずにはいられない。そんな精神状況に陥ってしまった。俺との試合をPFLは発表していたけど、ガブリエルはピコとの試合すら取りやめて引退することを決めていたと話してくれたよ。

でも彼のマネージメントチームは、俺との試合のオファーをPFLから受けて、そこも前向きに捉えよう。ここを乗り越えようと、彼を鼓舞した。ガブリエルも応じて、必死で父の死を乗り越えようとしたけど減量の段階になって、もう本当に無理だと悟った。結果、引退することを選んだ」

──……。

「そんな状態で無理をして戦う必要はないと、俺だって思う。俺はプロフェッショナル・ファイターだけど、正直なことを言えばガブリエルとの試合が実現しなくてホッとした部分もある。俺は彼が子供との頃から知っていて、それは亡くなった彼の父親と親交があったからに他ならない。それにガブリエルはチーム・ノゲイラ時代のチームメイトだったからね……」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
3月23日(土・日本時間)
午前1時30分~U-NEXT

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