【Special】J-MMA2023─2024、原口央─01─「デビューして4年目だったのですが、一皮剥けた……」
【写真】実弟の伸と2人で日本と国内で結果を残した (C)MMAPLANET
2023年も残り僅か、2024年という新たな1年を迎えるには当たり、MMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過行く1年を振り返り、これから始まる1年について話してもらった。
Text by Manabu Takashima
J-MMA 2023-2024、第一弾はRoad FCグローバル63キロ級トーナメントで準優勝となった原口央に話を訊いた。バンタム級転向初年、Road FCでの2戦を終えて原口は何を感じ、これから目指すモノは何なのか。
■2023年原口央戦績
5月7日 DEEP Tokyo Impact2023#02
〇2R2分54秒 by RNC 増田拓真(日本)
6月24日 ROAD FC64
〇3-0 ムン・ジェフン(韓国)
8月26日 ROAD FC65
〇不戦勝 ラザバリ・シェイドゥラエフ(キルギス)
10月29日 ROAD FC66
●2R4分25秒 by TKO キム・スーチョル(韓国)
――2023年も残りわずかとなってきました(※取材は26日に行われた)。原口選手にとって、どのような1年でしたか。
「去年までフェザー級で戦ってきて、今年はバンタム級に転向してDEEPとRoad FCの63キロ級トーナメントで出させてもらいました。デビューして4年目だったのですが、一皮剥けた……殻を破ることができたかと思います。成長できたかなって。
バンタム級はスピードもフィジカルもフェザー級とは違っていて、まずDEEPで戦った時に『これが自分の適正体重だ。これからバンタムで戦っていこう』と思いました」
──そしてRoad FCのグローバルTに出場し、初戦はムン・ジェフンをコントロールして判定勝ち。準決勝のラザバリ・シェイドゥラエフ戦が相手の計量失敗で不戦勝。決勝はキム・スーチョルと真っ向勝負の上、TKO負けとなりました。敗れたスーチョル戦、まさに殻を破った試合に感じました。
「去年の大晦日にキム・スーチョル選手とフアン・アルチュレタの試合をスーパーアリーナで見ていたんです。僕はスーチョル選手が勝ったと思った試合でした。正真正銘の世界のトップクラスで雲の上の存在だったので、まさか自分が戦うことになると思っていなかったです。それがこのトーナメントに出場して、決勝で戦うことで雲の上の存在から、メチャクチャ差があるとは思えない。戦える自分がいたので、負けはしましたが終わってから凄い自信になりました」
──テイクダウンして、コントロールし続けて勝てれば最高でした。ただし、スーチョルは組みも強く、組みと打撃の融合ができているストライカーです。なのでテイクダウン狙いを切られて、殴られるとバッタリと動きを止めてパウンドを被弾するという試合展開も予想していました。それが殴られても、殴り返すという試合を原口選手はやりましたね。
「本当に打撃は絶対にやらないという作戦でした。スーチョル選手は寝技が強いことを分かっていても、やっぱりレスリングで攻めようと。ただファーストコンタクトでレスリングも通用しないと思わされました(苦笑)。反応がメチャクチャ早かったです。テイクダウンを狙っても、ギロチンのセットもメチャクチャ早かったですし」
──あのシーンは危ないように見えました。
「それは皆に言われました。でもギロチンのディフェンスには自信があって、相当タイトには入っていたのですが全然大丈夫でした。あそこでスーチョル選手が力を使っているのも分かっていたので、もう少し力を使わせようと考えることができるぐらい余裕がありました。あそこから試合が打撃の間合いに戻ると、あれだけステップを踏むスーチョル選手がベタ足になっていたんです。
きっとステップを踏むと、テイクダウンへの反応が遅れると感じたんじゃないでしょうか。あのベタ足の構えを見ると、『これ、打撃が入るんじゃないか?』って思えました」
「特に離れ際とか、ですよね」
──ただし、足を止めたスーチョル。覚悟を持っての殴り合いも強いです。そこに応じた時、原口選手に恐怖感というものは?
「メチャクチャ怖かったです。普段、やっていないことなのでメチャクチャありました。でも、こっちも腹を括るしかないので。なんか、行けましたね。ヒザ蹴りで腹を抉られても効いたのは一瞬だけだったし、あのヒザも大丈夫でした。
ただ最後は……見えていないんですよね、きっと。来るなとは思っていたんです。でもガードが疎かになっていて、もう体に力も入っていなかった。打撃を見極めるとかできないので、やられる覚悟で行きました」
──本当は良くないのかもしれないです。見ることができないのに、闇雲に行くことは。ただし、それができたことも大きいと思います。特にキム・スーチョルを相手にして、自信を得ることができたということですし。
「打撃で行けたのもそうですが、スーチョル選手は打撃が強いだけでなく、寝技も強い。でも防御も含めて自分のグラップリングも通用したし、持ち上げてテイクダウンもできた。レスリング力も負けていないから、全局面で自信になりました。
スーチョル戦だけでなく、1回戦のムン・ジェフン戦でも打撃の強い相手に最後まで自分のスタイルを貫いて戦うことができて──Road FCで戦うことで、自分のMMAがレベルアップしたのかなとは思います」
──決勝は負けても評価が高くなったかと思います。
「評価されることは素直に嬉しいです。でも欲を言えば、勝って評価されたいというのはあるので……何とも言えないです。頑張ったと評価されるのは、前評判が悪かったからで」
──勝って評価されるために、キム・スーチョルの域に達するためには何が必要だと感じましたか。
「う~ん、何だろう……。何なんですかね……難しいです。感じたのは、まだバンタム級のスピードについていけなかったこと。打撃のスピードがメチャクチャ速くて」
──そこを埋めるために、新たに練習で採り入れたモノはありますか。
「今採り入れているということではないですが、JTTに行かせてもってヴィンス・モラレス選手と練習して……海外で練習したいと思いました。これまで日本の選手としか練習してこなかったですけど、モラレスは打撃もレスリングも柔術も全て強くて経験豊富です。一緒に練習させてもらって、自分の小ささが分かりました。ホントに世界は広いなぁと思うようになりました。だから機会があれば米国で練習したいですね。
スピードに関してはJTTで練習している時も朝倉海選手だとか、階級が下のヒロヤ選手の打撃がメチャクチャ速いです。あのスピードになれないといけない。パワーとかレスリングは勝っているので、スピードが大切になってくると思います」
──JTTでの練習の良さというのは?
「レスリングでビリー・ビグロー、打撃ではエリー・ケーティッシュという専属のコーチがいることですね。ビリーからはレスリングでも、これまで全然知らなかった技術とか教えてもらっています」
<この項、続く>