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【RIZIN45】「勝ったら鈴木千裕選手と戦いたい」斎藤裕─02─大晦日、クレベル・コイケ戦へ

【写真】平本戦前の心境──「修斗の時と同じ試合をRIZINでやろう」。痺れる言葉だ。その平本戦後の会見では、さすがに安堵感が伝わってきていた (C)MMAPLANET

31日(日)にさいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN45で、クレベル・コイケと対戦する斎藤裕のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

2020年以降の斎藤はRIZINで3連勝したあとに3連敗を喫した。短いスパンのなかでRIZINを背負おうとした苦悩――そんな斎藤が、かつての自分に戻してくれた平本蓮戦と大晦日のクレベル戦について語る。確かに彼を取り巻く環境は変化した。しかし大晦日のリングに立つのは、修斗時代と変わらないファイター斎藤裕だ。

<斎藤裕インタビューPart.01はコチラから>


――本来ファイターは個人事業主であり、団体の社員ではない。だから斎藤選手がそこまで考えることではない……という意見があって然りです。しかし、同時に斎藤選手が仰る「立場」を考えると、難しい判断も迫られる場合もあると。

「いろんな見方、いろんなバランスがありますからね。でもあの時に試合をしたことに対して、ただ自分が犠牲になったわけではないと思っています。あの大晦日で朝倉選手と再戦したからこそ、見えてきたものもありました。他の選手では感じられないことも、自分は感じることができたわけで。

そういうメリットとデメリットのバランスを考えることが重要だと思います。RIZIN側もケアをしてくれましたし、自分だけが傷を負って損をしたわけではなかったです。ただ、牛久戦と朝倉戦で両方とも怪我をしてしまって。スパンも短かったですし、精神的にも肉体的にもキツい時期ではあったことは事実です」

――牛久戦から平本戦まで1年もの間、試合から遠ざかっていたのは心身ともに疲れていたからなのでしょうか。

「自分で選んだ道ではありながら、流れは良くないと感じていました。そんななかで牛久選手との再戦で負けて、『じゃあ次!』という気持ちにはならなかったです。試合が続くこと、怪我も続くこと、あとは練習内容も含めて――いろいろ見直さないといけない。『だったら少し休んでもいいんじゃないか』というアドバイスをもらいました。自分もすぐ練習に戻って次、という気持ちにはならなかったので、1回リセットしようと。リセットしても試合をする気にならなかったら、それはそれかな……と」

――試合をする気にならない可能性もあったのですか。

「ありました。もし自分の中で『燃え尽きた。やり切った』という気持ちがあり、半年経って試合も練習もする気にならないのであれば、プロの選手として試合をするべきではないです」

――では1年という時を経て、もう一度戦いたいと思った理由は……。

「一番大きかったのは、『あの試合を最後にしたくない』という想いです。牛久選手との再戦の内容と結果で、本当に自分が納得して辞められるのか。ここまで一戦一戦、命懸けで試合をしてきて――あの試合が最後になると、間違いなく後悔すると思い始めました。かといって自分も納得して試合をするために、しっかり練習して整ってから復帰したい。そういう自分の気持ちを、うっすらとではありますがRIZINさんとマネージャーには伝えていたんです」

――復帰の舞台となった平本蓮戦はケージ使用のLANDMARKでした。これは斎藤選手からの希望だったのでしょうか。

「いえ、自分としてはどちらでも良かったです。RIZINさんとは『ケージでも良いです』と話をしましたが、実は『ケージって久しぶりだしなぁ』とは思っていました(笑)」

――アハハハ。ずっとリングで戦ってきてケージでの試合を迎えるにあたり、練習や技術的な面はシフトチェンジしましたか。

「相手が平本選手ということもあり、『これで負けたら諦めることができるかな』と思っていました。自分がベストの状態で試合に臨むことができれば、負ける相手ではない――いかに良い状態で試合に臨むかがテーマでした。その一方で、修斗の時と同じ試合をRIZINでやろうとは考えていましたね」

――……。

「RIZINからではなく修斗時代から、自分のことを応援してくれている人たちがいます。当日は道場のオジサンたちとかも会場に来てくれて、『まるで修斗の試合を見ているようだった』と言ってくれましたね(笑)。『まさに僕はそういう試合をしたかったんです』という話をして」

――ただ、それはRIZINから斎藤選手のことを知ってくれたファンが求める試合ではなかったかもしれません。

「自分でもそう思います。とはいえ試合は相手あってのものですし、全ての試合が皆さんの求めるものにはならないこともあります。とにかく僕が連敗している間も変わらずに応援してくれていた方たちに勝つ姿を見せたかった。自分自身も納得して試合をしたかった。ファイターは何よりも勝つことで反省もできるし、勝ってこそ喜べる。勝敗を抜きにして物事を語ることはできない。

その気持ちは、修斗時代から変わりません。あとはもうチャンピオンでもないし連敗もしていたので、肩の力が抜けて楽になったところもあったんです。『今回だけは、自分がやりたい試合をさせてくれ!』とは思っていましたね。今まで他の人たちのために頑張ってきたので、今回は好きにさせてくれと(笑)」

――一方で、試合内容には納得できていますか。

「いえ、全く納得できていません。自分としては、1Rで極めて勝つ想定をしていました。何より平本選手も練習してきているな、と感じましたね。僕の目算も甘かったですし」

――それは斎藤選手だけでなく、平本陣営以外は皆がそう思っていたのでしょうか。あの試合は平本選手の成長が称えられて然るべき内容だったと思います。

「そうなんですよね。僕としては、背中を着けたら一本取れるかなと思っていました。でも平本選手はディフェンスとか、体の使い方が巧くなっていて。『うまくいかないな』と思いながら試合していました」

――それが最後まで、うまくいかなかったと。

「フィニッシュして勝ちたいと考えていたので、極めることができなかったなぁと。でも打撃をもらわないことも試合のテーマにしていて。そのテーマはクリアすることができたと思いますが、まだまだ修正しなければいけないところは多いと感じましたね」

――平本戦から今回のクレベル戦まで試合間隔が空いたのは、何か理由があったのですか。

「特に『この選手と対戦したい』というのがなかったです。あの時点では、すでにクレベル×鈴木戦が決まっていて。朝倉×ケラモフ戦もあったし、試合結果を見ながらいろいろ動いていくのかなとは思っていました」

――斎藤選手が試合をしていない間に、RIZINフェザー級が大きく動きました。

「ほぼ毎月動いていましたね」

――そういう展開を、斎藤選手は一歩どころか思いっきり引いて全体の動きを見ていそうですね。

「アハハハ、確かに全体の動きを眺めていましたね。この選手がここで勝ったなら、このマッチメイクだな――とか一人で考えていました(笑)。大晦日については、ケラモフ×鈴木戦の結果待ちかなと思っていたんですよ。そうしたら先にクレベル戦のオファーが来て。ケラモフ×鈴木戦の結果を待たずして、クレベル戦が決まったのは良かったです。現状としては一番良い相手で」

――クレベル選手に勝利している金原選手と対戦、という考えはなかったですか。

「金原選手がクレベル選手に勝った時、次はタイトルマッチへ進むんじゃないかと予想しています。鈴木選手がケラモフに勝ってベルトを巻いたことで、鈴木×金原の機運も高まったと思いますし」

――一方で金原選手に敗れたクレベル選手が、現状で一番良い相手というのは……。

「まず2年前に対戦できなかったことから、ストーリーが始まっていると思うんです。何も思い入れがない選手と試合するよりは、お客さんも感情移入してもらえるでしょうし。何より自分にとっても、気持ちを入れて練習できる相手でした。そのクレベル選手と僕が大晦日に試合をしたら盛り上がるだろう――客観的に見ても、そう思います。

たぶんクレベル選手にとっても、僕は良い相手なんですよ。僕に勝てば、再びタイトル戦線に浮上できるわけですから。名誉挽回の試合というか、彼にとってもメリットのある試合で。本人がそう思っているかどうかは分からないですけど」

――2年前に対戦のお話が挙がった時と現在で、クレベル選手に対する評価が変わったところはありますか。

「2年前のほうが大きく見えましたよね。あの時はRIZINに参戦してからずっと一本で勝っていたし、どういうふうに攻略するんだろうと思われていて。でも、あの時から自分も彼も、何試合もやってきて――彼の試合を見る機会が増えて、クレベルのカラクリが明確に分かってきました」

――対して、斎藤選手ご自身は2年間でどう変わってきましたか。

「実は――いろんな取り巻く環境が変わっていくなかで、精神的にも肉体的にも良い時期が3年に1回ぐらいのペースで回ってくるんですよ。今まさに、その時で。とても良いコンディションで大晦日を迎える予定でいます」

――3年に一度のピークというと……。

「前回は2020年、朝倉選手との初戦ですね。あの時は摩嶋戦、朝倉戦、ケラモフ戦と本当に精神も体調も良くて、誰が来ても勝てるなと感覚がありました。その前は2016年にVTJでISAO選手と対戦した時で。あの時はコンディションが良く、何ラウンドでもできると思いました。結果は判定負けでしたが、今でも自分が負けたとは思っていませんし」

――こちらの質問に対して冷静に答えてくれていた斎藤選手ですが、ISAO戦については完全にファイターの顔に戻っていて何だか嬉しいです。クレベル戦で勝ったあとのストーリーラインは、どのように考えていますか。

「勝ったら次はチャンピオンの鈴木千裕選手と対戦したいです。そのためにはクレベル戦のインパクトも大事になると思っています。皆さん、大晦日の試合はぜひ見てください」

■視聴方法(予定)
12月31日(日)
午後1時00分~ABEMA
午後1時30分~U-NEXT、RIZIN100CLUB
午後2時00分~スカパー!、RIZIN LIVE

■ RIZIN45対戦カード

<RIZINフライ級王座決定戦/5分3R>
堀口恭司(日本)
神龍誠(日本)

<RIZINバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者]フアン・アルチュレタ(米国)
[挑戦者]朝倉海(日本)

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
斎藤裕(日本)

<フェザー級/5分3R>
平本蓮(日本)
YA-MAN(日本)

<女子スーパーアトム級/5分3R>
伊澤星花(日本)
山本美憂(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
上田幹雄(日本)

<バンタム級/5分3R>
元谷友貴(日本)
ヴィンス・モラレス(米国)

<フライ級/5分3R>
扇久保博正(日本)
ジョン・ドッドソン(米国)

<バンタム級/5分3R>
太田忍(日本)
芦澤竜誠(日本)

<65キロ契約/5分2R>
皇治(日本)
三浦孝太(日本)

<ウェルター級/5分3R>
イゴール・タナベ(ブラジル)
安西信昌(日本)

<フライ級/5分3R>
新井丈(日本)
ヒロヤ(日本)

<特別ルール・ライト級/5分2R>
安保瑠輝也(日本)
久保優太(日本)

<フェザー級/5分3R>
弥益ドミネーター聡志(日本)
新居すぐる(日本)

<キックボクシング・フライ級/3分3R>
篠塚辰樹(日本)
冨澤大智(日本)

<54キロ契約/5分3R>
那須川龍心(日本)
シン・ジョンミン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
YUSHI(日本)
平本丈(日本)

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