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【RIZIN45】大晦日=新居すぐる戦へ。弥益ドミネーター聡志―02―「長編の映画を見せることも必要」

【写真】昨年11月の平本蓮戦で敗北を喫した後の会見時の弥益。12月31日の弥益は、この弥益と繋がっている(C)MMAPLANET

31日(日)にさいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN45で、新居すぐると対戦する弥益ドミネーター聡志のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

弥益の言葉には深みが感じられる。派手に煽る時もあれば、やり取りの中で核心を突く言葉が紡がれていくこともある。そんな弥益の目に、現代ファイターたちはどのように映っているのだろうか。そして過去に接点があるという新居すぐるとの試合で、彼が見せたいモノとは。

<弥益ドミネーター聡志インタビューPart.01はコチラから>


――その言葉を聞くと、同じようにRIZINに出ているファイターであっても、弥益選手が12月11日のようなタイプの会見に出席することはないのだろうと思います。

「アハハハ。ライブで観ることはできませんでしたが、すごい世界が広がっているなぁと思いました。最近の流れについていけなくなっています(笑)。ああいうのは見出しだけの世界というか――選手が何を言っているか、たとえ動画でもあまり視られていない気はしますよね。今の時代の流れとして、視る側としてはそこまで気にしていない。それは自分が憧れていた格闘技の世界ではないとは思っています」

――弥益選手が仰っていることは、まさにショート動画の文化ですよね。

「確かにそうですね。ちょうど良いところだけを切り取って、見やすくしている。自分としては、もっと長編の映画を見せることも必要だと思うんです。目に見えるものだけではなく、たとえば役者の方が見せる無言の演技とか。そういった『行間を読む』ことが必要な長編映画も、格闘技業界のために存在しないといけない」

――格闘技が地上波で盛んに放映され始めた頃、ジムに入会しても技を極めることばかりを求めて、そのためのポジショニングを練習しないといったケースもあったそうです。

「なるほど。格闘技とは技を極めるものであって、そこに至る過程は見ない。それこそ都合の良い部分だけを切り取り、頭の中の入れるようなことを繰り返すと、そんな状況になってしまうかもしれないです。ただ重要なのは——12月11日の会見に出席した選手たちは決して、そういう人たちではない。人の目に触れないような細かいところまで頑張って練習しているからこそ、あのポジションにいるわけで。そういう姿も伝わらないと、勿体ないですよね」

――本来その姿を伝えるのが専門メディアであるはずです。つまり専門メディアが機能していない部分も考えなくてはいけません。ちなみに弥益選手は、ショート動画の世界に行ってみたいとは思わなかったのですか。

「僕は長編映画が好きですから。どれだけ行間を読んでもらえるかが勝負というファイターです。それが人として、格闘家としての幅にも繋がると思っていますし。自分は長編映画のファイターでありたいですね」

――今回の対戦相手である新居すぐる選手は、長編映画のようなキャリアの末、ショート動画向きの一発を持つタイプです。

「新居選手は同年代で、アマチュアも含めたら自分よりキャリアが長い選手です。僕は彼のことをアマチュア時代から知っていいます。紆余曲折を経て戦い続けてきた結果、今のスタイルに辿り着いた選手で。とにかく『積み重ねてきた選手』という印象を持っています。だから美味しいところだけをつまむような選手ではないと思います」

――弥益選手と新居選手は同時期に茨城で練習されていましたが、これまでに接点はありましたか。

「面識があり、茨城時代は一度練習したことがあるかもしれない――という感じです。確実に覚えているのは自分が東京に出たあと、新居選手も東京にいて、一度だけGENスポーツアカデミーで練習をしたことがあります。コロナ禍になる前でした。一度だけグラップリングの練習をして以来、接点はないですね。会場でお会いしたら挨拶させていただくぐらいで」

――当時と現在の新居選手を比べて、何がどのように変わったと思いますか。

「もともと茨城の時代から、アームロックとシザースチョークは新居選手の絶対的な武器だったんです。試合を見た時はもちろん、練習でも『これはハンパない武器だ』と認識していました。しかしそれだけ武器が分かっていると、いつか誰かにその部分を突かれてしまう。MMAで上に行くためにはある程度の連勝が必要だけれども、どこかで躓くタイプの選手だと思っていて。

当時と今を比べても、やっていることは変わっていない。でも当時より自分の武器を信じる気持ちが強くなっているように感じます。『これがあれば大丈夫。勝てる』と信じている気持ちが、より強くなっているんだろうと思います。

新居選手のインタビューを読ませていただいても、良い意味で開き直っているのだろうという印象を受けます。アームロックとシザースチョークを生かすための武器以外は捨てても構わない。捨てているからこそ、2つの技が心の支えになっている。コレさえあれば、どんな展開になっても逆転できる――と」

――はい。

「もともとは不利になったら、そのまま負けてしまうというイメージを持っていました。しかし先日のパンクラスのタイトルマッチでは、心が折れることなく自分の技を狙い続け、そして極めている。もちろん技術的な向上もあるとは思いますが、どちらかといえば精神的な面が変わったのではないでしょうか」

――では弥益選手にとって、自分が信じることができるものとは何ですか。

「おぉっ、何でしょうね……。最近ブレているんですよ(笑)」

――どういうことですか(笑)

「自分も新居選手と同じタイプで、武器は少ないけど、その武器に対しては信頼を持っている。それを心の支えにして試合で頑張っていました。でもRIZINに出場し始めてからは、何かしら極端なタイプの選手と対戦することが多くて(苦笑)」

――アハハハ。なかなか濃いタイプの相手と対戦してきていますね。

「そういった選手に対して僕の信じてきたものが通用しない時もあり、自分の気持ちが揺らいでいるところもあります。失礼になるかもしれませんが、新居選手については昔の自分を見ているようで……」

――実は弥益選手もアームロックとシザースチョークで勝利していることが多いですし。

「そうなんですよ。だから今回は、少し前の自分と戦うような気持ちです。一つだけすごく尖ったパラメータを持っていて、連勝からタイトルマッチまで行ったのも同じ。それは、怖いものを知らなかった頃の僕なんです。今回自分の目の前に立つのは、そういう相手だと思っています」

■視聴方法(予定)
12月31日(日)
午後1時00分~ABEMA
午後1時30分~U-NEXT、RIZIN100CLUB
午後2時00分~スカパー!、RIZIN LIVE

■ RIZIN45対戦カード

<RIZINフライ級王座決定戦/5分3R>
堀口恭司(日本)
神龍誠(日本)

<RIZINバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者]フアン・アーチュレッタ(米国)
[挑戦者]朝倉海(日本)

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
斎藤裕(日本)

<フェザー級/5分3R>
平本蓮(日本)
YA-MAN(日本)

<女子スーパーアトム級/5分3R>
伊澤星花(日本)
山本美憂(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
上田幹雄(日本)

<バンタム級/5分3R>
元谷友貴(日本)
ヴィンス・モラレス(米国)

<フライ級/5分3R>
扇久保博正(日本)
ジョン・ドッドソン(米国)

<バンタム級/5分3R>
太田忍(日本)
芦澤竜誠(日本)

<65キロ契約/5分2R>
皇治(日本)
三浦孝太(日本)

<ウェルター級/5分3R>
イゴール・タナベ(ブラジル)
安西信昌(日本)

<フライ級/5分3R>
新井丈(日本)
ヒロヤ(日本)

<特別ルール・ライト級/5分2R>
安保瑠輝也(日本)
久保優太(日本)

<フェザー級/5分3R>
弥益ドミネーター聡志(日本)
新居すぐる(日本)

<キックボクシング・フライ級/3分3R>
篠塚辰樹(日本)
冨澤大智(日本)

<54キロ契約/5分3R>
那須川龍心(日本)
シン・ジョンミン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
YUSHI(日本)
平本丈(日本)

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