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お蔵入り厳禁【UFC ESPN52】中村倫也がUFC初戦を振り返る─03─「時代が作り出した幻想を壊していく」

【写真】次は中国か、米国か──期待がさらに募る中村倫也(C)MMAPLANET

8月26日(土・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたUFC on ESPN52「Holloway vs The Korean Zombie」で、ファーニー・ガルシアを相手に判定勝ちし、UFC初陣を飾った中村倫也インタビュー最終回。
Text by Manabu Takashima

お蔵入り厳禁──腕十字がファールカップで極まらなかったという珍事の裏で、そこに拘らなかった中村がUFC初戦を終えたことで、何を得られたのか。

<中村倫也インタビューPart.02はコチラから>


──某選手は三角絞めで腕を送るときにファールカップを使って、痛みを増すようにすると聞いたことがあります。

「アハハハハ。そうなんですねっ!! でも、確かにそういうこともできますよね。実は上四方で抑えている時も、ファールカップで頬骨をグリグリやって。痛いし、何よりも屈辱的だと思うんですよ、相手の立場からすると」

──試合前にビビッて漏らす選手もいて、凄い匂いの股間になっているなんて話も……。

「マジっすか。それは対戦相手からすると、ヤバいっすよね。でも体臭が凄い選手っていうのはいますからね。目がシバシバすることとかあって。体臭って、武器ですよ」

──しかし、話を戻すとファールカップで腕十字を極め切れなかった。それでも下になることなく、トップキープに切り替えました。

「そういうことがあるんだなって。そこの指摘を受けたことはなかったですしね。もうアマチュアの時と違って、とにかく強引に腕十字を極めようという気持ちではなかったです。ガルシアもかなり削れていたので、極まるだろうと思って仕掛けました。そこの防御力は最低限あるんだなって思いつつ……このクラスの相手に苦戦をすることなく勝てて良かったです」

──そこにつきます。極められなかった。フィニッシュできなかったという悔しさが残るファイトをUFCデビュー戦でできたというのは。UFCとの距離感が広がっている間に、ボトムラインにいる選手の力が相当に引き上げられたように思えるので。

「ハイ、そうですね」

──以前はもう少し名前のある選手、UFC内外で少しは名前の知られた選手に負けていたのではないかと。こちらの勉強不足もあるのですが、今や全く知らない選手に日本人選手が敗れるようになりました。

「ハイ。確かにそうなっています。そういうなかで勝てたことは、この世界に来ても同じ体重の人間だな──ということは、しっかりと確認できました。逆にバケモノ、彼らは日本人とは違うという言葉ばかりが耳に入って来ていたので、そういう時代が作り出した幻想も自分で壊していこうと思います」

──まさに自分が言った言葉のように、UFCに出ている選手は強いと思い過ぎるということですね。海外で日本人選手の負けを見すぎて、負けた時にショックを受けないように負けベースで考えるようになり、海外勢を大きく見すぎてしまう嫌いはあると自分でも思います。

「それだけ自分が信じてきたファイターの負けを見てきたからですよね。それは僕もそうで。UFCファイターなんだから、何かあるんじゃないかという想いを持って戦っていました。逆にそれがないとダメだと思いますし」

──ところで試合後にUFC関係者から、反応は何かありましたか。

「ショーン・シェルビーが試合後に控室に来てくれて、『いつでも試合を組むから言ってくれ』と直接言葉を掛けてもらいました。それとホテルでマイケル・ビスピンが『やったな。これからも試合をチェックし続けるよ』と言ってくれましたね」

──英語の返答は良かったと素直に思います。ショーン・シェルビーが「1人がその国のMMAを変える」と大会前日に言っていたのですが、その1人を輩出するためにも日本人UFCファイターが増えて欲しいですね。

「ショーンが『ようやく日本から……』と言っていたのは、待っていてくれたんだと感激しました。今回の勝利で『やっていけるな』っていう自信……は段階を踏んで、一つ一つ勝って大きくしていくものだなというのが分かりました。その自信が一つ深まった一方で、距離を潰したい場面で焦ることがあったので。その辺りの距離の潰し方の技術を次の試合までにもっと磨きたいですね。そうしたら、繋ぎとかも見せることができるだろうし。打撃もレスリングも生きるので、ここからはひたすら技術力を上げるフェーズになります」

──ところでRoad to UFCの優勝者としては最初のUFC出場でした。他の契約選手も風間敏臣選手以外はまだデビューをしていません。

「他の3階級の優勝選手はまだ試合をしていないですよね。風間君が負けた試合を控室で見た時に、『これ、俺が変なパフォーマンスをしたらRoad to UFCは偽物だ』っていう見られた方をされるなって、気合が一段と入りました。『アジアを舐めんなよ』って。

ここで僕が変な試合をしたり、負けたりしたら今年でRoad to UFCが打ち止めになるかもしれないから、絶対におかしなことはできないって。優勝者、準優勝者のパフォーマンスは常にチェックされているでしょうからね」

──そこまで考えていたのですね。では気になるUFC第2戦ですが、いつ頃と考えていますか。

「年内を考えています。米国でやりたいですね。まぁ、いずれは戦うことになるので、今年中にもう1試合ができれば──1試合したいですね」

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