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【Pancrase337】笹晋久と対戦、矢澤諒─01─「アマで負け越し。ジムでやられ続けたから勝利に執着できる」

【写真】やるべきことをハッキリさせ、行くべき時に行く。そんな風に見える矢澤のファイト。そうなった過去とは(C)SHOJIRO KAMEIKE

24日(日)、東京都の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE337で、矢澤諒が笹晋久と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

矢澤は得意の右ストレートを武器に、現在は3連続KO中。パンクラスのバンタム級4位という、王座挑戦も目前という位置にいる。高校まで続けてきた野球で味わった挫折と、MMAで感じた苦悩を乗り越えて、今の矢澤諒が存在する。果たして、野球時代に抱いた夢をMMAで叶えることはできるのか。そんな矢澤の成り上がり人生の序章とは。


――MMAPLANET初登場となる矢澤諒選手です。今回はなぜあれだけ右ストレートが当たるのか、その理由に迫りたいと思います。まず格闘技を始めたキッカケから教えていただけますか。

「最初に始めた格闘技はキックボクシングで、その後にMMAを始めました。キックボクシングのジムに入ったのは、高3の夏に野球部を引退した1カ月後です」

――もともとは野球少年だったのですね。

「小学生の時に野球を始めて、中学では硬式のクラブチームに入っていました。そのあと高校は野球の推薦で進学しています。昔からプロ野球選手になるのが夢で、小学生の頃から『プロ野球選手になってお金を稼いで女子アナと結婚する!』と言っていたんです(笑)」

――アハハハ! 職業だけでなく結婚相手まで決めていたと(笑)。それだけガッチリと夢を固めていた野球を、なぜ高3で辞めてしまったのですか。

「最後の大会で出場メンバーから外されて、ずっと自分がやってきたことを否定されたように思ったんです。『もう自分の人生は意味がなくなっちゃったな』と思いました。大学からも誘いはありましたけど、もう野球を視るのも嫌になって」

――……。

「自暴自棄ってほどではないけど、もう死んじゃっても良いやって。そこで『どうせ死ぬなら、格闘技をやってみよう』と思いました」

――えっ!? そこから急に格闘技へ繋がるのですか。部活を辞めて自暴自棄になると、遊びに走る人のほうが多いとは思いますが……。

「ずっと野球をやっていたので、遊び方を知らなかったんですよ(笑)。少しだけ遊びに行きましたけど、なんだかんだで『格闘技のジムへ行こう!』と。やっぱり体を動かしているほうが好きだったんですかね。高校野球が終わったその夏休みの間に、もうキックボクシングのジムに入っていました」

――他にもスポーツはたくさんあるなかで、なぜ格闘技を選んだのでしょうか。

「傍から見ていると、格闘技って危なくて怖いものじゃないですか。でも自分は野球を辞めた時に1回死んでいるから、もう怖いものはないなと思って。別に何かの試合を視たとか、誰かのファンだったということではなかったです。何か目標があったわけでもなく、とりあえず格闘技を始めてみたっていう感じですね」

――最初は地元の鎌倉にあるキックボクシングジムに入会したのですか。

「藤沢の湘南格闘クラブです。ジムに入ってから格闘技を視るようになり、YouTubeでMMAというものがあることを知りました。MMAって全身を使うじゃないですか。野球をやっていたこともあって、『全身を使う競技って良いな』とMMAをやることにしました」

――そこからパンクラスイズム横浜へ?

「湘南格闘クラブのトレーナーさんが当時、松嶋こよみさんと一緒にトレーニングしていて。そのトレーナーさんに『MMAをやりたい』と言ったら、パンクラスイズム横浜を紹介してくれました」

――ということは、当初はパンクラスも北岡悟選手のことも知らなかったと。

「そうです。あまり大きな声じゃ言えないですけど(苦笑)」

――MMAPLANETに載りますから(笑)。

「アハハハ。それどころか、一人もMMAファイターを知らなかったんですよね」

――選手のことを知らなくてもMMAを始める人がいる。それはMMAという競技にとって素晴らしいことだと思います。話を戻すとパンクラスイズム横浜に入る前は、組みの経験はなかったのですか。

「湘南格闘クラブには柔術のクラスもあったので、MMAをやりたいと決めてからは柔術クラスに参加していました。だけどパンクラスイズム横浜に入った頃は、プロ練習に参加させてもらっても、やられてばかりでした。『自分は試合で勝てるのか!?』と思ってしまうぐらいで。

僕、アマチュアの戦績も負け越しているんですけど、今考えたら良かったと思います。正直、当時はキツかったです。でもジムでやられて、試合でも負けているから吹っ切れたというか。だからこそ今は勝つことに執着できると思うんです」

――アマチュアで負けていると、もうMMAを辞めようとは考えなかったでしょうか。

「このまま一生勝てないんじゃないか、と考えることもありました。練習していることを試合で出せないし、『MMAをやっていても意味ないんじゃないのかな』と思ったり。
その気持ちが変わったのは、プロデビュー戦です。試合前は2カ月ぐらいジムに寝泊まりして、練習も毎日……限界以上にやって。『これで負けたら辞めよう』という気持ちで臨み、勝つことができました。その時に『MMAでもやっていけるんじゃないか』と思うことができました」

<この項、続く


■Pancrase337対戦カード

<フェザー級KOP決定戦/5分5R>
亀井晨佑(日本)
新居すぐる(日本)

<ウェルター級/5分3R>
藤田大(日本)
住村竜市朗(日本)

<ストロー級/5分3R>
八田 亮(日本)
黒澤 亮平(日本)

<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
川中孝浩(日本)

<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
河村泰博(日本)

<フェザー級/5分3R>
平田直樹(日本)
遠藤来生(日本)

<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)

<ライト級/5分3R>
余勇利(日本)
神谷大智(日本)

<バンタム級/5分3R>
山口怜臣(日本)
安藤武尊(日本)

<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(日本)
葛西和希(日本)

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
高本千代(日本)

<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
笹晋久(日本)

<フライ級/5分3R>
梅原規祥(日本)
饒平名知靖(日本)

<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
渡邉ショーン(日本)

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