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【RIZIN44】「フライ級GPで優勝し、次の相手がアーセン君で『やった!』という選手は少ない」──福田龍彌

【写真】表題の発言をしても、全くアーセンを軽視することがないのが福田だ(C)TAKUMI NAKAMURA

24日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44にて、福田龍彌が山本アーセンと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

2021年10月からDEEPに参戦し、今年5月にDEEPフライ級グランプリ優勝&DEEPフライ級暫定王座獲得を果たした福田。グランプリを前に勤めていた会社を退社し、プロ格闘家として生きる道を選んでのグランプリ制覇だった。2度目のRIZIN参戦でアーセンと拳を交える福田は、アーセンと自分を「ホンマに真逆。月と太陽」と例え、その胸の内を明かした。


──昨年3月以来のRIZIN参戦で山本アーセン選手と対戦が決まりました。対戦相手がアーセン選手だと聞いた時には率直にどう思いましたか。

「自分はもっと違う相手を想像してたんですけど。アーセン君は伊藤(裕樹)君に勝ってるから、それもあるかなとは思ってました……って感じでした」

──対戦相手については改めて聞かせてください。福田選手は昨年8月からスタートしたDEEPフライ級グランプリ優勝&DEEPフライ級暫定王座獲得を経てのRIZIN凱旋となります。グランプリが終わってからはどのようなことを意識して練習しているのですか。

「普段と変わらずという感じですね。結局、毎日やることって変わらないんですよ。減量があるかないかとか、それぐらいで」

──福田選手は昔からそういうスタンスなんですか。試合の有無や対戦相手のことは関係なく。

「自分がどう強くなるかっていうのは、日常の過ごし方やどんな練習をするかやと思うんですけど、DEEPに出るまでは試合が年1回とかだったんで、毎日自分を突き詰めて継続して練習するというのができなかったんです。でもDEEPでは試合数も増えて、サラリーマンの仕事も辞めて、毎日一生懸命練習やるようになりました」

――DEEP参戦後はフライ級グランプリも含めると、約1年半で8試合と試合数が激増しました。そこは大きな変化でしたか。

「めちゃくちゃ変わりましたね。仕事を辞めて戦うことで生計立てることもできるようになったし、ずっとこういう生活をしたいと思っていたんで。年に1回しかライブしてへんアーティストより、毎月ライブしているアーティスト。年に1回しか家を建てへん大工より、毎月家を建てている大工。後者の方がパフォーマンスもステータスも上がるじゃないですか。今そういう生活を謳歌している感じですね」

──しかもただワンマッチを重ねるのではなく、DEEPフライ級グランプリがあったというのは大きいですよね。

「実はグランプリがあるから会社を辞めたんですよ」

──グランプリがきっかけだったのですね。

「ちょうど拳を怪我していて手術、リハビリをしている途中でグランプリの話があって。会社を辞めるんだったら、このタイミングしかないなと思いました」

――葛藤や躊躇はなかったですか。

「葛藤はずっとありました。正直ちゃんと練習して戦うことに身を置けば、もっと結果を出せるって自信があって、自分が仕事さえしいひんかったら、グランプリでも優勝できると思ったんです。それでグランプリに出るとなった時、会社員をやりながらグランプリに出たら絶対後悔すると思って決断しました」

──それだけグランプリで優勝できるという自信があったのですか。

「ありましたね。グランプリには色んな団体から選手が出るって話で、実際そういうメンバーが集まったんですけど、自分だったら優勝できるなって。逆にそこで自分の存在や自分の強さを知らしめたいと思っていました」

──まさに人生を変えるグランプリ優勝でしたね。

「毎日なんやかんや忙しく練習もたくさんできて、何よりもメンタル的に楽になりました、試合前に焦ることもなくなったし」

──それだけ自信を持てる練習ができているということですか。

「僕は修斗時代から『試合やったら上のやつらに負けへんぞ』と思って、地方大会で勝ちまくっていたんですよ。そうすれば後楽園の興行にも呼んでもらえると思って。僕が見てきた先輩たちが、そうやったんで。でも僕の世代はそうじゃなくて、地方で勝ち続けても、なかなか後楽園に呼んでもらえない。そういう悔しさを人一倍感じてやってきたんです。かませ犬扱いでもいいから、俺とやらせてくれよって」

――DEEPフライ級グランプリは、まさにそういった想いをぶつける舞台でもあったんですね。

「はい。自分の実力を証明する場所を作ってもらえたと思います」

──そんな福田選手からするとデビュー戦がRIZINで常に脚光を浴びる位置で試合をしてきてアーセン選手のことはどう見えていたのですか。

「ホンマに僕とは真逆。太陽と月みたいな感じですよ。その流れで言うと、一つ言えるのは『君とは潜ってきた修羅場はちゃうで』と。『俺は地方からたくさんの修羅場を潜って、屍の山を築いてここまで来ましたけど、君はどうなん?』って。きっとアーセン君はアーセン君で、ずっと注目され続けてきた人間やからこその悩みもいっぱい経験して、あの場にいると思うんですよ。だからそれが試合でどうなんのかなみたいなところは楽しみですね」

──福田選手が考える自分のファイターとしての一番の強みはどこにあると思いますか。

「う~ん、どんなところやろう。逆にどう思います?」

──スタンドの打撃が一番の武器でありつつ、その強みを福田選手が自分で理解して、それを軸にゲームプランを組み立てているなと思いました。

「なるほど、なるほど。ありがとうございます」

──MMAはやることも多い競技なので、自分が何が強くて、何が得意なのか分からないまま、戦っている選手も多いので。

「ずっと自分もそうだったんですよ。というか途中からそうなるんです。キャリアを積むと、いろんな情報も入ってきるし、いろんな技術も覚える。選択肢が多くなるんです。でもMMAの根本は何をやってもいいという条件下で“戦う”ってことじゃないですか。だから僕は相手が何をやられたら嫌か。それを試合中に相手から感じて、自分に当てはめていく感じです」

──リングで相手と向かい合った時の感覚やフィーリングを大事にしているのですか。

「はい。そんなに作戦も立てへんし、相手と向かい合った時にどんなことを感じるかですね。フライ級グランプリの時は全部そうやったし、DEEPで神龍(誠)君とやった時もそう。DEEPに来てからは作戦もゲームプランもないし、そのための対策もないし、ゼロでやってきました。だから即興なんですよ。簡単に言うとぶっつけ本番です」

──試合で福田選手の動きがばっちりハマっているので、しっかり対策・戦術を練っていると思いました。

「逆です。対策・作戦ゼロだから、自分の動きがハマるんですよ」

――というと。

「どんな相手にもすぐに合わせられるような練習をするんです。今日はこういうことをやるって決めるんじゃなくて、相手に合わせる練習です。練習パートナーも日によってコンディションもちゃうし、気分もちゃうわけじゃないですか。そういうのに柔軟に対応するための練習をするんですよ。その日のフィーリングで自分が感じたことや頭に浮かんだことを実践できるようにするために日々練習するって感じです」

──なるほど。そういう考えで練習している選手であれば、試合経験を積めば積むほど適応力も上がって強くなるんじゃないですか。

「そういうことなんですよ。僕はそれが強くなるってことやと思うし、次の練習相手がめちゃくちゃ打撃が強いからって自分のファイトスタイルを押し曲げて戦うと、それは僕じゃなくなるじゃないですか」

──相手がこうだから自分はこうするというのは相手主導の試合になりますからね。

「はい。僕は『俺はこうなんだけど、君はどうなの?』という感覚で試合を楽しんでいるんで。音楽で言うとジャムセッションみたいな感じです」

──ちなみに福田選手は音楽が好きなんですか。音楽での例えが多いと感じたのですか。

「音楽も好きやし、現場仕事も好きやし、そういうのもひっくるめて職人さんが好きなんですよ。例えば僕、楽器を触る人の手つきとか好きなんです。ギターリストとかピアニストの指の動きとか、ドラマーのスティックを持つ指の動きとか。何か一つのことをやり込んでいる人の手の動きってキレイじゃないですか」

──まったく業種は違いますが、寿司職人さんの寿司を握る手つきとか。

「そう、そう。たこ焼き屋のおっちゃんがたこ焼きをひっくり返しているところとか、板前さんの包丁さばきとか(笑)」

──そういう熟練の技、練り上げられた技が好きなんですね。

「はい。格闘技をやり込んでいる人って、テイクダウンの動きとか、パンチや蹴りのフォームがきれいじゃないですか。そういうものに美を感じるというか。で『この技を出しますよ!』じゃなくて自然に出るところがすごいと思うんです。だから僕もそこまで技の精度を上げていきたいですね」

──福田選手は職人、達人志向なのですね。

「あとは純粋に格闘技が楽しいなっていう。僕も長く格闘家をやらせてもらって、そういう魅力を感じ始めたのかなと。昔は何も考えずに勢いだけでやってましたけど、選手生活を通してだいぶ成長して、そういう感性にも目を向けられるようになったと思います」

──次の対戦相手がアーセン選手ということで、今まで以上に試合を見る人の数も増えると思います。当日は、どのような試合をしていきたいですか。

「あんまり目立つのが好きじゃないし、ちょっと小っ恥ずかしいんですよ(笑)。でも戦うことが大好きで、会社を辞めちゃうぐらい好きなんで(笑)、こいつ本当に戦うのが好きなんやろうなっていうのを見てくれる皆さんには見せたいなと思います」

──大舞台で戦う選手にはそれぞれモチベーションがあると思いますが、例えば福田選手の場合は普段戦えない選手たちと戦えることがモチベーションですか。

「そうですね。あとRIZINでは修斗にいた時にできひんかった扇久保(博正)さんとやりたいという気持ちはあります。僕もそう若くないから、あと何年できるかだと思うんですよ。フライ級でやるのもしんどくなってきているし、長いことフライ級でやってられへんと思うし。それを考えると、フライ級でやる貴重な1試合、もっとワクワクしたり、自分にしかできひんようなカードをやりたいです。

アーセン君、きっといい選手やし、素晴らしい選手で人柄もいいんでしょうけど『DEEPフライ級グランプリ優勝したから、次の相手はアーセンです』と言われて『やった!』という選手は少ないと思うんです。僕はあのメンバーが参加した過酷なトーナメントを優勝してここにいる。アーセン君は3年ぶりくらいの復帰戦でグランプリでベスト4止まりやった伊藤君に1回勝って、グランプリの優勝者とやれる。それに対して思うことはありますよ」

──福田選手は自分がやってきたこと、残してきた実績にそれだけ自負があるということですね。

「アーセン君も久しぶりの試合で伊藤君に勝つわけやから、それはそれですごいことだと思うんですけどね。まぁ僕は元々PUREBRED京都所属やったんで、アーセン君とはいわゆる同じ大和魂一族なんですよ」

──確かに遠い親戚のような間柄ですね。

「そうです。そういう意味では歴史を知ってはる人、PUREBRED京都から追っかけてくれる人は、そういう見方で盛り上がってくれはるなみたいなのはありますね。そういうところでも負けれへんなとは思ってます」

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<キック70キロ契約/3分3R>
安保瑠輝也(日本)
宇佐美正パトリック(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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