【Fight&Life & RIZIN】世界が驚いたKO勝ち──までの1カ月、鈴木千裕「格闘技をやりたいのに逃げちゃって」
今月 23日(水)発売予定のFight&Life#98で7月30日(日)に、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催された超RIZIN02でパトリシオ・フレイレを相手に衝撃のKO勝ちを収めた鈴木千裕のインタビューが掲載される。
世界を驚愕させた鈴木のKO勝ちから、2日後に行われた取材で鈴木は、「ようやく落ち着いた」と話し、その勝利から2日間は夜も寝られない状態が続いていたという。この世紀の番狂わせを演出した一つの要素は、両者の試合が決定したのがイベントのわずか6日前だったことに他ならない。
ここでは雑誌のスペースの都合上割愛せざるを得なかった──6月24日のクレベル・コイケ戦の敗北を振り返り、その後の無為に過ごした日々。そして一気にエンジンが点火されたパトリシオ・フレイレ戦決定までの1カ月間について鈴木が話したことをお届けしたい。
――歴史的な勝利について話を聞かせていただく前に、どうしても6月24日のクレベル・コイケ選手との変則タイトルマッチに触れないといけないです。
「ハイ」
――計量失敗で変則タイトルマッチになった。計量の時に謝罪モードいっぱいだった相手を目にすると、試合に向けて違和感はなかったですか。
「戦うことは変わらないのですが、やはり見る側や周囲の熱が冷めるのは否定できないですよね。それに体重を落とせなかったという事実が、ついて回りますし。ファンが気持ち良く見ることはできない。ただ、僕自身がやるべきことは戦うことだけなので関係なかったです。無理やり……誰かに強要されて格闘技をやっているわけではないので。
もちろん、2人とも体重を落とせていた方が良かったですよ。でも、そうならなかったことに関して、『あぁだ。こうだ』といってもしょうがない。不必要な悩みはスルーするようにしているんです」
――それは素晴らしいセルフ精神ケアですね。
「自分でコントロールできないことを考えるぐらいなら、「勝って、次に進もう」と考える方が、プロとしてベストを尽くせると思います。
――そのような気持ちで戦い、あの試合内容で負けたことに関しては、どのように思いましたか。
「しっかりやることをやって、挑んだ試合だったので……ダメだった、それだけですね。世界に届かない、通じなかった。あれだけやったのに何も通用しなかった。そういう感じで落ち込んだだけでした。負けたことはしょうがない。それを認めることが強くなるために、一番必要なことなので」
――では、あの時点でキャリアの再構築をどのように考えていたのでしょうか。
「僕はKNOCK OUTの代表としてRIZINで戦っているので、都合よく行き来しているように思われることだけは嫌でした。キックで出来た借りはキックでしか返せないし、MMAの借りはMMAでしか返せない。だから、MMAを戦いという気持ちでした」
――少しでも早く戦って白星を取り戻したいと?
「それが面白いことに、全く意欲がなくなってしまって。試合から2週間ぐらいして、練習に戻ろうとジムへ行きました。でも『俺、何やっているんだろう』って感じで。格闘技をやりたいのに、逃げちゃって遊びに行って……。
また2週間ぐらいして、1度だけ試合前の選手とスパーリングをしました。試合前の先輩と向き合うと楽しかったけど、ミットやサンドバッグはやる気になれなくて、そのまま帰りました。あんなことは初めてでした。しかも練習以外の何をやっても面白くない」
――それでは気持ちの切り替えも難しいですね。
「で、一度福岡に行って――戻ってくると『試合、やるか? ピットブルとオファーが来ている』と言われ、一気にエンジンがかかりました。それがファイトウィークの月曜日のことでした」
――正式発表の2日前! まさに格闘家として、スイッチが入ったのがスクランブル発進のピットブル戦だったのわけですね。
「ハイ、さいたまスーパーアリーナに試合を観に行くつもりもなかったです。先輩の試合があったり、誘ってもらわないと余り試合を見に行くことはないんですよ。そんな時にLINEと携帯に連絡がガンガン入っていて。『俺、何かしでかしたかな?』って心配になりました(笑)。
でも、心のなかでは戦う機会を欲していたんだと思います。だからピットブルとの試合のオファーで、一気に気持ちが燃え上がって、エンジンがかかりました」
※パトリシオ・フレイレ戦では、クレベル・コイケ戦に感じた後悔を繰り返さないために選択した自らのスタイル。さらに自信への評価の対象を、報酬という面に関しての熱い語りと、そのように強く思うようになった原体験を鈴木千裕が語ったインタビューが掲載されるFight&Life#98は8月23日(水)に発売です。