【HEAT52xAngel’s FC27】誰も知らない──三上ヘンリー大智「誰も見ていないところで、強い人と戦いたい」
【写真】どう考えても良い男だろう──その言動も含め(C)MMAPLANET
19日(土)、東京都港区のニューピアホールで開催されるHEAT52xAngel’s FC27で三上ヘンリー大智が10カ月振りの実戦でチョン·ホチョルと対戦する。
Text by Manabu Takashima
剣道からキックボクシング、そしてMMAに転じて2年。甘いマスクの期待の新鋭は、実は取材嫌い。そして個性的という話が常々聞かれた。そのヘンリーをついにインタビューする機会が、試合を明日に控えた計量直後に巡ってきた。
良い意味で自分を持ち、一旦取材を受けると決めると、一つ一つの質問にしっかりと答えてくれたヘンリー。本人の意志に関わらず、これは露出すると人気が出るわ──と書き記したくなる三上ヘンリー大智を知る第一歩。一つ一つの返答を堪能してほしい。
──本来は取材を受けたくないということだったヘンリー選手ですが、岡見選手経由で断ることができない状況を創ってしまい──しかも、計量直後にインタビューと申し訳ありません。
「いえ、宜しくお願いします(笑)」
──実際のところ雑誌でのインタビューも固辞されたことありますし、何かメディアに対して思うところがあるのでしょうか。
「そういうことではないんです。MMAPLANETは読ませていただいています。ただ、あまり目立ちたくなくて(苦笑)」
──いやいや銀幕デビューまで果たして(笑)。
「そこを経験して、さらにというところはあります。誰も見ていないところで、強い人と戦いたいというのがあって……」
──それはプロフェッショナルファイターである限り、我儘ではないかと。誰も見ていないところに、強い選手はいないでしょうし(笑)。
「そうですね(笑)。ただ、そんなに結果を残しているわけでないですし、UFCとかに行って世間的に認められるような選手だとありなんですけど、そこにも達してないのにという気持ちはあります。今は格闘家もメディアを使ってお金を稼ぐ時代なのかもしれないですが、私個人としてはお金を稼ぐなら他の仕事をするので」
──ファンに自身の声を届けたいという気持ちは?
「特にないんですよね。アハハハハ。ファン……ファンの人は、ファンの人の意志で見て頂いているわけで。私としてはファンの人よりも、周りの人のためにという意識が強いです。ファンの人にこういうキャラを演じようとか、ファンのためにこういう試合をしようというより健康無事で家に帰って、皆に元気なところを見せられれば。その上で格闘家として良い結果を残して、喜んでもらえたらと思っています」
──いや、相当に興味深い性格の持ち主なようで。本来は剣道から立ち技、そしてMMAと歩んできた三上選手には、尋ねたいことがたくさんあるのですが、明日が試合ということですし、今日はMMAに集約して話を伺わせてください。10カ月振りの試合ですが、ここまで試合がなかったのはどういう理由だったのでしょうか。
「色々とやるかも、やるかもというのが続いて。それが実現しないということが、3度ほどありました。それもあって……実は個人的に海外で練習をしようと思っています。まずは2カ月ほど行ってみて、向うの気候とか食事、生活リズムに馴染むようでしたら、本格的に練習し、試合も向うのプロモーションで戦うということも考えています。そういう風に考える根底には、日本であまり人に見られたくないというのがあります(笑)」
──本当に今日は貴重な機会を頂き、ありがとうございます(笑)。
「それは岡見さんが橋渡しをして下さったので。私がMMAの手解きを受けたのが岡見さんで、ずっと岡見さんには恩を感じています。皆の前に出たくないと言っても、それでも取材を受けるチャンスを頂けるようになったのも、全て岡見さんのお陰なので」
──オーディションでは、思い切り殴っていましたけど(笑)。
「アハハハ。逆に遠慮をすると失礼なので」
──ともあれ10カ月間、MMAファイターとしてどの部分が成長できたと思っていますか。
「練習の8割が組みの練習だったので、そこですかね。自分から積極的に組むことはGENだとできないのですが、そのなかでもバカみたいにテイクを狙うと成功する数も増えてきました。あれだけ組みが強い選手とやってきてそういう風になっているので、自分と同じレベルの人と戦うとどうなるんだろうと、試してみたくはなっています」
──防御面というのは?
「防御面は、最初から防御ばかりなので。そのなかで何とか穴を見つけて自分が仕掛けるような練習ばかりをしてきました。だから防御は勝手にできて、攻めをどうしようかと私の中で考えられるようになりました。何か一筋の光が見えてきたのかなという感じです」
──岩﨑大河選手との試合、拳に圧力があってもなかなか出なかった。あの印象を続く2戦で相当に払拭できました。今回の試合では、さらに上達しているということですね。
「岩﨑選手は純粋に凄く上手かったです。前蹴りを凄く見せてきて。ファーストコンタクトで私がジャブを入れて。いけると思ってワンツーを出したら、かわされて組みつかれてテイクダウンを取られました。そこから組まれたらヤバいという意識が出て、岩﨑選手が前蹴りを出す素振りを見せる。それが前蹴りか、落として組んでくるのか分からなくて。
蹴りだと、ジャブを打った時にさされる可能性があり、だからといってストレートを打つと組まれるかもしれない。そういう風に考え過ぎるようになって、遠い距離からのジャブしか出なくなってしまったんです。組みの対処が足りなかった。自分のなかではやっていたつもりでも。岡見さんからは『組まれて、倒されても立てば良い』と言われていて、実際に立てる場面もあったし、ケージの攻防もしっかりとはできたとは思っています。ただし、倒しに行くぞとなるには、そこを考えて足かせになってしまったのは確かです」
──やはりMMAは攻めも守りも、選択肢が多いです。
「それと減量がほぼ初めてで。結構落として、色々な要因があったかと思いますが、全てを含めて実力が不足していました」
──その後のEXFIGHTの2試合で改善し、手応えを感じたところというのは?
「それこそ減量に関して、リカバリーの意識を持つようになりました。組んだ時に技術的なアドバンテージは相手にあることが多いので、ある程度はフィジカルで補っていかないといけない。割と水抜きを頑張って戻すようにすると、相手の方が小さいから組まれても何とかなるだろうという気持ち的な余裕ができて、それからはガツガツと行けたかと思います。特に2試合目は私の方から組んで倒して、パウンドで勝つことができたし」
──では明日のチョン·ホチョル戦では、さらに進化バージョンの三上選手が見られるでしょうか。
「そうですね、映像を視ると癖のある選手です。その癖を利用して戦おうと思います。組みに関しては私の方が上です」
──三上選手が目立ちたくなくても、期待値は上がっています。期待しているファンにどのような姿を見せたいですか。
「大変失礼な言い方をすると、『勝手に期待するなよ』というところはあります」
──アハハハハハ。
「あるんですけど、期待していただくのも何かの縁ですから、そういう方には自分の試合を視て元気になる試合をしたいかなというのはあります。1試合を見て「強いな」、「弱いな」でお終いじゃなくて、そこから勝ち負けのストーリーみたいなモノを楽しんでいただければ。剣道の時とか、負けると再起という風に見られることがあって。でも自分としては、死に物狂いでやってきた結果なので。
皆さんの記憶に焼き付いていると思いますが、アマチュアの試合でアンディ・コング選手にKOされていますし、自己評価は結構低いので。でも、そのなかで何かを感じていただけたらなと。自分に対して期待はしていないけど、光は見ているからそこに手を届かせたい。その一心で頑張っているので、そういう部分を伝えていければと思っています」
──格闘技も興行になると、ショービジネスです。そのなかで、今日話してくれたような考えを持つようになったのでしょうか。
「これ、皆同じだと思うんです。実力と知名度が見合っていないと、絶対に心の中に違和感が生じる。それに気づかないのは、自分が見えていない証拠で。ある一定の部分まで自分のことを考えることができるようになると、やっぱり息苦しいと思うようになるかと(苦笑)。そこの部分にハマったかというのはあります」
──では結果を残すほど、露出が増えても平気では?
「う~ん……。それは分からないです(笑)」
──UFCで戦って、「皆、見ないで」とは言えないですよね(笑)。
「UFCの選手でもミドル級の8位は誰だと日本でUFCをみている方に言っても、分かる人は余りいないと思います。そんなぐらいかなって(笑)。そういうところから、タイトルマッチまで上り詰めていきたいと思っています」
──押忍。では最後に──剣道を日本代表合宿に呼ばれるほどやり込んできて、何かMMAに生きることはありますか。
「あのう……むしろ私の中では、剣道をやっている感覚が強いです。そうですね……」
──いえ、今日はそこまで結構です!! そこから先はまたインタビューの機会を下さい。しっかりと尋ねてみたいです。
「ハイ(笑)」
■視聴方法(予定)
8月20日
午後3時分~ TIGET LIVE
■ HEAT52xAngel’s FC27対戦カード
<キック・ミドル級/3分5R>
アビラル・ヒマラヤン・チーター:69.9キロ
ヤン・チャンウォン:69.4キロ
<HEATフェザー級王座決定戦/5分5R>
倉本拓也:65.7キロ
ユ・ジュサン:65.8キロ
<バンタム級/5分3R>
堀友彦:61.5キロ
ソン・ヒョンジョン:61.4キロ
<ミドル級/5分3R>
三上ヘンリー大智:84.0キロ
チョン·ホチョル:83.8キロ
<キック・ライト級/3分3R>
優翔:59.9キロ
パク·ジョンジュン:60.3キロ
<ウェルター級/5分3R>
大道翔貴:77.5キロ
チャン・ユンソン:77.4キロ
<ライト級/5分3R>
平山学:70.2キロ
ソン・ミン:70.5キロ
<フライ級/5分3R>
AXEL RYOTA:56.5キロ
チョ·ジュンゴン:56.8キロ
<ムエタイ64キロ/3分3R>
ペットサムイ・シムラ:64.0キロ
シン·ドンヒョン:64.2キロ
<キック57.5キロ契約/3分3R>
一仁:57.4キロ
ウォームONE LINK:57.3キロ
<フェザー級/5分3R>
今井舜也:66.0キロ
菊川功武:65.7キロ