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【Shooto2023#05】新井丈に挑戦、安芸柊斗 in 徳島─01─「自分は後楽園に総合をしにいくだけです」

【写真】お昼はうどん屋さんで働き、午後7時半からキッズの指導。そして自らの練習というルーティンの安芸(C)MMAPLANET

23日(日)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2023#05で新井丈の持つ修斗世界ストロー級王座に安芸柊斗が挑戦する。

四国、徳島のMMA Zジムでプロシューターだった父・佳孝氏の小学生の頃から指導を受け、修斗と共に成長した安芸は高校生でプロデビューを果たした生粋のシューターだ。その後は連敗を喫し、地元四国や大阪での大会から再びタイトル挑戦に向けウイニングトラックに戻ってきた。

そんな安芸を地元、徳島で取材。地方在住&キッズの指導者として、そしてプロシューターとして今回のタイトル挑戦に抱く想いを尋ねた。


──2週間と2日後、新井丈選手の持つ修斗世界ストロー級王座に挑戦します。今の体調、心境を教えてください。

「体調は完璧だと思います。過去一で体重管理もできていますし、動き自体も今までで一番良い動きができているので。試合でも、それが出せると思います。心境は……楽しみ。早く戦いたいです」

──13戦目で修斗の頂点に挑戦というのは、デビューをする時に想い描いていたキャリアと比較して早いですか。それとも時間が思っていたよりも掛ったのか。

「デビューをした時には、タイトル挑戦とか頭になかったです」

──キッズから修斗をやっていて、プロになろうという段階の一番上を目指していなかった?!

「目指していないというか、夢のまた夢でした。まだまだ届かない存在だったので、考えていなかったです。アマチュアを一気に抜けて、プロも3連勝をして……。でも、そこから連敗もしました。あの時は『もう落ちちゃったな』と考えていたのですが、今から考えると妥当なキャリアップか、むしろ早いぐらいやと思っています」

──ではいつ頃から、ベルトを意識をするようになったのですか。

「1度ランキングから外れて、また入った時ですね。このままいけば、チャンスが回ってくるかもしれないと」

──その時は、誰に挑戦すると思っていましたか。

「当時は猿田(洋祐)選手ですね。猿田選手の一強でしたから。でも、そこからONEに行って次は箕輪(ひろば)選手が獲って──(ONEを主戦場とし、昨年7月に王座返上)で、今なので」

──箕輪選手自身は修斗でも防衛戦をしたいという希望を当初は持っていましたが、実現できないままONEに集中することになりました。王者不在の間は、どのような気持ちだったのでしょうか。

「あの時はチャンピオンになればONEに行く流れができていたので、まぁ暫定王座を創ってほしいとは思っていました」

──その暫定王座は2021年11月に猿丸ジュンジ選手と黒澤亮平選手の間で争われることになりました。あの当時、王座に関してどのような気持ちでいたのでしょうか。

「あの試合は色々と思うところはありました。あぁ、そこ行っちゃんうかと。まぁ猿丸選手は分かったのですが……黒澤選手が行くんやなって。元チャンピオンやから優遇されたんかなって。でも、色々とあるんでしょうね」

──悔しかった?

「悔しいとは思わなかったです。モヤモヤの方が大きかったですね。ジムの規模とか関係するんかなって。でも、仕方ないことなんかなって」

──これは地方在住の選手が、抱える問題かと思います。どうしても首都圏の選手の方が首都圏で戦うチャンスは多い。しかもコロナ禍でしたし。移動のリスク軽減という大義名分もありましたし。それでも他で戦うということではなく、絶対修斗だったわけですよね。

「そうですね、修斗ですね。アマ修からやってきて、プロでも修斗でやってきたので他の団体で戦うことは考えなかったです」

──押忍。では猿丸選手が黒澤選手を破って暫定王者となった時点で、新井丈選手のことを意識していましたか。

「インフィニティの時は全く思わなかったです。ただ新宿FACEで新井選手が大竹(陽)選手と試合をした時に、一緒の大会に出ていて(※2019年10月)。意識はしていなかったですけど、あそこでKO勝ちしてからですよね、連勝街道に乗ったのは。尊敬しているし、上から目線で見るわけじゃないですけど、あの試合から上手いこと勝ちパターンにハマったんかなって思います。

ただ勝つだけでなく、KOか一本を取れると選手は一気に伸びることがあるし。あそこから一気に行きましたね。まさかの連勝を重ねて、今ではチャンピオンっスよね(笑)」

──まさに「まさか」と?

「まさかですね」

──最初は新井選手には申し訳ないですが、負けた方の選手に『何をやっているんだ』という感じでみていました。それが連勝を続けると、説得力が出てきます。と同時に、それでも修斗っぽくはない試合スタイルで。

「分かります。タイトルマッチでも(※2022年9月)、修斗の戦い方をするのは猿丸選手でスカ勝ちすると思っていました」

──さらには今年の3月にはフライ級で関口祐冬選手に圧勝ちをしました。言うと、関口選手を怖がらせた。ここはストロー級ファイターとして脅威ではないですか。

「凄いな──だけですね。新井選手と戦うなら、誰もが寝技で抑えつけたら勝てると思っているはずです。でも、戦った本人にしか分からない圧力があることは、試合を見ているだけで分かります。前に出る強さを感じて、皆が引いてしまう。で、逃げのテイクダウン狙いになり、離れてパンチを被弾。KOされてしまう。そういう試合が続いているので、戦った人間にしか理解できない強さがあるのは分かります。

圧倒的な強さではない。でも戦った者にしか分からない強さが、あの選手にはあります。それが新井選手の魅力やと思っています」

──そのように想えるのも、新井選手が結果を残し続けてきたからですよね。これが3連勝ぐらいの時点だと、抑えて勝てると過信していたかもしれないです。

「確かにそうですよね。だから、今の方が新井選手のことが分かりますよね。それに見ている人も、今の新井選手と戦う方が面白い」

──一番気を付けないといけないところは?

「前に出る圧力と当たれば倒せる破壊力のあるパンチです」

──あの戦い方は信じるモノがあるからできるんではないかと。

「ハイ。ファイトスタイルは以前と全く変わっていないので。変えないで貫けるのは凄いです」

──大沢ケンジさんの声、あれも対戦相手にプレッシャーを与えているような。

「アハハハ。そうっスねぇ。前に出て、反応しないといけなくなった相手を削っていますね。そういうチームとしての戦い方、信頼関係が成り立っているからあのセコンドワークができて、その言葉を信じているから新井選手は前に出ることができる。そこが気持ちの強さッスよね」

──では子供の頃から修斗をやってきた安芸選手の対抗手段は?

「う~ん、自分が楽しめばお客さんも楽しんでくれると思います。打ち合いだけが、心を動かせるとは限らないので。今の新井選手に勝つことが、皆の心を動かすことになる。だからどういう勝ち方であれ、自分は後楽園に総合をしにいくだけです」

<この項、続く>


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