この星の格闘技を追いかける

【Grachan】つくばにジムをオープン。阪本洋平─02─「大事業家になっても、選手育成は続ける」

【写真】MMAファイターとしても、唯一無二の存在(C)MMAPANET

茨城県つくば市に自らの城、PEELESS WOLFのオープンが迫ってきた阪本洋平インタビュー後編。

元Grachan二階級王者の阪本は、4年以上実戦を経験しておらず、ピアレスウルフというジム、新たな事業を立ち上げてようとしている。阪本洋平インタビューin つくば、後編ではケガをした彼だからこそ、唯一無二の存在となり、フィットネス、選手育成と人々関わり合う姿勢を話してくれた。

<阪本洋平インタビューPart.01はコチラから>


──それは体の状態を見極めてのことですし。問題がなければ、断るはずがない。

「普通に考えれば、出ても意味はないです。ただ僕が恥じる部分は、逃げる気持ちがあったんじゃないかということなんです。このコンディションで出て、負けてバカにされたらどうしようとか。そういう気持ちがあったので。色々な人と相談をしてトータルに見て下した判断ですが、心残りではあり自分を恥じています。」

──その時は治して、また戦うという気持ちがあったからではないですか。

「もちろん、もちろん。手術という選択肢がありましたから。『この全然動けない状態で出ても、本当の意味での真剣勝負にならない。僕のやりたい勝負ができない』という気持ちではいました。でも、そういう場面で自分がどういう人間なのかを知りたかったです。それが分からないままだから、そういう状況でどうなるのか、核心の部分を下の選手に伝えることはできない。でも、それで終わりじゃないです。世界一になりたいとか、最強になりたいからMMAを戦うという人も多いですが、僕は決してそうではなかった。内面の部分で、絶対に折れない強さを持つ人間になりたくてMMAを続けてきたので」

──内面の勝負が問われる場面は、今後の人生でいくらでも出てくると思います。そして、新しい事業を立ち上げる今の自分への期待度とはどのようなものでしょうか。

「事業に関しては……MMAを戦ってきて、本当に体調が悪くても戦ったことがありました。3週間、寝込んで練習ができない状態で試合をした時とか、マジで精神的に追い込まれていたんです。でも人間って、そういう追い込まれた状況にある時こそ、人との関わり方が大切なんだと理解できる。

大澤(茂樹※2017年5月)戦の前、試合なんてどうでも良くなりましたもん。取りあえず誰かに悩みを聞いてほしいという想いだけでした。なので、このスタジオは人との関わりを一番大事にしていきたいです。事業も人との関わりを広げていく。ここ一軒で終わらせる気はないです。フィットネス事業に関わらず、チャンスがあれば仲間を増やしていって……現時点でこんなことを言ったらバカにされるかもしれないですけど、僕は大事業家になりたいと思っています。

お金を稼ぐ云々より、人との関わりをどんどん増やしていく。ここがスタートで──まだMMAで真剣に戦っていたモチベーションは、正直持てていないです。でも、そういうのが生まれるんとちゃうかと思って、リスクのある挑戦をしています。なので、ここは目標に向かって全力でやります」

──……。そうなると……。

「分かります。言いたいことは(笑)。僕がまた限度を超えて、やり過ぎる。路を踏み外さないか心配ってことですよね」

──ハイ。その通りです(笑)。

「その可能性……、やり過ぎて体を壊す可能性は確かにあります(笑)」

──と同時に、今は止めてくれる人の言葉を聞き入れることができるのでは。

「いやぁ、あの頃ももう周囲が止めることができないほどでしたから(苦笑)。川尻さんが時々言ってくれたぐらいですね。もう、そこに憑りつかれた人間には誰も何も言えなかったようで。だからこそ、事業を始めた今は自重することが大切だと理解しています」

──パーソナルのフィットネス系のトレーニングジムのように感じますが、選手育成に関してはどのように考えているのでしょうか。正直、選手育成はビジネスとして成立しづらいです。

「今もキックボクシングでは選手の育成とフィットネスを組み合わせて成功している例もあります。確かに今は選手育成をメインにすることはできないです。僕もこれでご飯を食べていかないといけないので。結果が出ない、食べ続けられないと茶番になってしまいますからね。だから最初はフィットネスを主体にして、夜の遅い時間に選手の指導をしようと思っています。

今も指導はしていますが、外部の選手でトッププロがメインです。最初から生え抜きの選手を育てるのではなくて。そういう形でも選手の指導をしていく形でも良いと考えています。そういう風にしてフィットネス事業、他の事業を広めていければ、生涯の健康や人との関わりという部分に関しては、仲間を増やしていくと他の人に任せることができると思っています。でも、選手育成は任せられない。絶対に僕しかできない」

──おおっ!!

「僕にしかできないから、選手育成って僕のなかではマストで残るものなんです。理学療法士なので体のことを普通の選手より知っています。筋肉の構造や体の構造を知っているので、どうすれば体に負担が掛からないかも分かっています。だから、選手に関しては僕と同じ練習量をこなしても、体は壊れないと思います。脊柱を中心とした体に負担をかけずに筋肉、関節、内部を使う方法があります。そういう指導を僕はできます。

今でも練習をやり込むことはエェことやと思っているんです。僕のように体を壊さないのであれば。当時の僕は何も知らないから、メチャクチャやっていました。正しい方法で練習をしていたら、あの時の僕以上に自分を追い込んでも壊れないです。それを若い頃からしっかりと教え込んでいけば、僕以上の練習をしても体は元気な選手を育てることができます。

そういう部分で、僕は指導者として他にないモノを持っていると思います。そして選手育成に関しては、人間の内面の変革を一番大切にしていきます。チャンピオンになろうが、そんなもんどうでもエェです。中身が変われば良いと思っています。『中身が変わって、僕の人生は変わりました』という人を増やしたい。

だから選手育成に関しては、どれだけの大事業家になっても僕が関わらなくなることは絶対にないです」

──選手育成はMMAファイターということですか。

「基本的に格闘技であれば、MMAには拘っていないです。恐怖と直面し、内面が変われば人間はメチャクチャ成長します。これは山本琢也君や伊藤空也君とも話したりしているんですけど、そこが一番大切なところなんですよ。

内面に向き合っていればMMAだろうが、キックボクシングだろうが構わないです。格闘家として、真剣になる選手は育てていきたいです。つまり、ここはフィットネスだけのジムではないということです」

──ところでジムの名前、ピアレスウルフの由来というのは?

「生涯の友──ですね、狼は助け合って群れで生活します。そして、ピアレスは唯一無二、他に比肩するものがないという意味があって。僕がやれることは格闘家の経験、理学療法士の経験、何よりもケガの経験を生かした指導ですね。実はケガの経験が一番デカいんですよ。自分が経験したことなので、ケガをした人の辛さが身に染みて理解できます。

メチャクチャ分かるから、寄り添った指導ができます。高齢の方、体に痛みがあって思い切り動けない方たちをサポートして、健康になってもらう。

加えてバリバリに体が動く格闘家の内面に寄り添い、成長してもらう。これは僕にしかできないと思っています。そうですね。唯一無二の僕が、人との関わり方を大切にするという意味でピアレスウルフという名前にしました」

PR
PR

関連記事

Movie