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【The Shooto Okinawa#08】旭那拳戦へ、ザ・タイガー石井─02─「僕にとって修斗は生まれ故郷です」

【写真】5分5Rの激闘から1カ月と3日というインターバルでの試合。「修斗だから」の言葉は泣かされる(C)PFC

16日(日)、沖縄市のミュージックタウン音市場で開催されるTHE SHOOTO OKINAWA#08のメインで、旭那拳と対戦するザ・タイガー石井のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

ザ・タイガー石井のMMA20年目は、アウェイでの戦いで幕を開けた。3月に北海道PFC、そして今回は沖縄で地元のホープ旭那と対戦する。試合間隔は1カ月——今年44歳になる石井にとっては、厳しい試合間隔かもしれない。それでも石井がオファーを受けたのは、それが修斗だからだ。12年ぶりのホーム、ベテランのいぶし銀ファイトやいかに。

<ザ・タイガー石井インタビューPart.01はコチラから>


――就職して仕事の割合のほうが高くなったのは、いつ頃のことですか。

「30歳ぐらいです。それこそプロの選手でなくても、柔術とかを趣味で続けられたらいいかなとも考えていたんですよ。でも趣味で柔術をやっている人たちの練習レベルが凄くて。皆さんが当たり前のように、昼はバリバリ仕事をして夜はガチガチに柔術を練習して――そういう人たちの偉大さを知りました。たぶん僕も本当の意味で、格闘技を辞めようと思うことってないんじゃないですかね。プロでなくても趣味や指導としてやったりとか」

――石井選手は2014年からファイティング・ネクサスに参戦し、その後はレギュラー出場して「ネクサスフライ級のエース」という扱いでした。当時、石井選手の中でも意識の面で変化は起こりましたか。

「当時はパンクラスの試合で首を負傷してしまって、それこそ引退も考えないといけない状態でした。それでもネクサスの山田峻平代表からオファーを頂いて、1試合はできるかなと思って出たんです。この試合で最後かな……と思いつつ。もうメチャクチャ首が痛くて(苦笑)。それがネクサスの1回目の大会で、その後も出させていただくことになりました。でも僕も34か35歳ぐらいだったし、もう若い選手がどんどん出てきていたので、『若い選手たちを前に出してください』と山田代表に伝えたんです。『僕は前座で渋い試合しますから』って。昭和の新日本プロレスでいえば、木戸修みたいなポジションですね」

――……それがどのようなポジションなのか分かりませんが、とにかく「いぶし銀」ファイトで大会の中盤を盛り上げると。今も同じスタンスでMMAを戦っているのですか。

「アハハハ、そうです。目指すのは木戸修か藤原喜朗ですね」

――そうなると、若手の相手に選ばれるベテランというポジションにはなってしまいます。

「それは仕方ないですよ。僕よりベテランって、もう少ないですからね。近い階級だと大石真丈さんぐらいじゃないですか。それと金内サイダー雄哉さんですね。サイダーさんは僕の2歳上で、あの人がやっている間は自分もやれるなと思っていますよ(笑)」

――もう一つ、リングネームがタイガー石井からザ・タイガー石井に変わったのは……。

「2019年4月にネクサスのフライ級トーナメントがあって、駒杵嵩大選手と対戦した時に『負けたら引退する』という流れになったんですよ。結果はスプリットで負けてしまったんですけど、その年の7月に青森のGFGに、ザ・タイガー石井の名前で出場して。『タイガー石井は引退しました。ザ・タイガー石井は別人です』と(笑)」

――アハハハ。

「それでも別に何も言われなくて。次にネクサスに出る時、山田代表に『表記もザ・タイガー石井にしてほしい』とお願いしたのに、ネクサスでは頑なにタイガー石井のままでした。何か難しい面があったらしいんですけどね。ともかく、次はスーパータイガー石井で、10年後にはタイガーキング石井でやっていると思います(笑)」

――試合の話に移ります(笑)。現在の石井選手のスタンスは、ベテランとして若手を食って上に行こうとするのか。あるいは違うスタンスなのか。前回のPFCはベルトが懸かっていました。次の修斗沖縄大会では――PFCと同様アウェイですが、ノンタイトル戦で修斗世界ストロー級2位の旭那拳選手と対戦します。

「今回は話が別で、修斗だからです。修斗に戻る。それが自分の中のテーマです。たまに修斗の試合を見ながら、『最後にこの舞台で戻るのも良いかなぁ……』と考えたりはしていました。でも『良いかなぁ』ぐらいの感覚で、まさか本当にオファーがあるとは思いませんでした。しかも自分が他のところに出始めたあとに生まれた沖縄大会で。不思議な感覚ですね」

――石井選手が最後に修斗で戦ったのは2011年4月、もう12年前になります。

「東日本大震災の直後の試合ですね。あれ以降、自分がまた修斗で試合をすることなんて考えていなかったし、オファーが来た時は衝撃でした。信じられないというか。これはプロモーター側には関係ないけど――なぜPFCの1カ月後なのか(苦笑)。もっと期間が空いていればダメージを抜くこともできたのに……と思いながら、こういうのはタイミングですからね。

1カ月後でダメージも心配だからと断っていたら、もう修斗で試合をするチャンスは巡ってこなかったかもしれない。僕にとって修斗は生まれ故郷です。修斗だから出ようと考えました」

――沖縄で試合をするのは今回が初めてですか。

「試合どころか、今まで沖縄に行ったことがないですね。でもこの顔立ちだからか、よく沖縄出身だという前提で話かけられることがあって。『僕は沖縄の××出身で、石井さんはどこですか?』と、沖縄県内の出身地を訊かれます。東京出身なんですけど(笑)」

――修斗は生まれ故郷であっても、沖縄は生まれ故郷ではないわけですね(笑)。ともあれ今回、旭那選手に勝てばランキング入りし、ベルトを狙える位置に来るかもしれません。

「今回は契約体重(54キロ契約)なので、ランキングとかは関係ないかもしれないけど……、とにかく頑張りたいです。さすがに修斗のベルトは雲の上の存在ですし、若い選手がたくさんいて、もう自分がどこまで戦えるかは分かりません。

ただ、決められた試合は全力でやりますし、今回は旭那選手に勝つ。それだけです。試合映像を視ると、とても強い相手です。厳しい試合になることは間違いないけど、そのなかでも全力で、自分の良いところを出していきたいですね」

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