【Metamoris 03】メンデス兄、驚異的「重さ」でシャントレを圧殺
【写真】メインが歴史に残る一番となったメタモリス03。前半の3試合も新世代、ベテラン、ピークを迎えつつある柔術家が、グラップリングの醍醐味を見せる試合を披露した。
3月29日(土・現地時間)、カリフォルニア州ロサンゼルスのピーターソン・オートモーティブ・ミュージアムにて開催されたMetamorisプロ柔術インビテーショナル第3回大会「The Rematch」。遅ればせながら第1試合から第3試合までの詳報をお届けしたい。
Photo by METAMORIS / James Law, Scott Hirano, Will Fox
<20分1R・ノーギ>
ディーン・リスター(米国)
Draw
ヘナート・ババル(ブラジル)
相変わらず冷蔵庫の如き肉体を誇る、いやそれ以上に大きくなったように見えるリスター。体育座りからゆっくり前に出ると、必殺のヒールフックを警戒したかババルは後退しながら様子を見る。やがて意を決してババルが正座して上攻めの体勢に入ると、リスターは雑作もなくアームドラッグでババルの体勢を崩して上を奪取。クローズドガードを取ったババルに対して、ゆっくりとプレッシャーをかけたリスターは、やがて肘を使ってババルのガードを割ると必殺のヒールフックへ。
多くの者がこれで終わりと思ったが、ババルは回転しながら取られていない方の足で距離を作って脱出に成功する。それでもリスターは逃げたババルを追って上を奪ってみせた。ハーフで体重をかけてババルの動きを止めたリスターは、やがて膝を抜いてのマウント狙い。エスケープを図ったババルの動きを利用してバックを奪う。しかし、冷静に体をずらしたババルはスクランブルでエスケープ。両者は離れてみせた。
上からパスを狙うババルに対して、あえてあっさりサイドを取らせたリスター。下から両腕を伸ばしてババルの片足を掴むと、旋回してシングルレッグに移行してスイープし、マウントを奪取。ババルがハーフに戻すと体勢を固めたリスターは、場内が膝十字狙いを予測していることを承知して、あえてババルの膝の方に何度も視線を移動してみせることで場内を沸かす。やがて本当にステップオーバーして膝十字に行くが、ババルは素早く対応してエスケープ。
残り3分の時点で、リスターはまたもやあえてサイドを取らせたところから腕を伸ばし、シングルレッグスイープ狙い。それを察知したババルは、スプロールで体重をかけてリスターの狙いを潰しながらダースチョークの体勢へ。がっちり入ったかに見えたが、解説のジェフ・グローバーも触れていたように、97年以来実に17年間も試合でタップをしたことがないというリスターはしばし脱力して大丈夫だとのサインを送る。肩の僧坊筋で首がほとんど隠れているこの体型には効かないのか。やがてリスターは下で動いてチョークを緩めてから、またもや体を旋回させてシングルレッグスイープ狙いに。それをスプロールで防いだババルはまたしてもダースの体勢に入るが、リスターには効かず。
結局お互い決め手がないまま時間切れ。リスターの足関節によるフィニッシュという予想が圧倒的多数を占めたなかで、それを防いで逆にダースチョークで見せ場を作ったババルの健闘が光った。試合後リスターは「僕らは膠着せずに動き続けたんだ。ヒールは取れたと思ったんだけど、ババルもいい動きで逃げたんだよ」とコメント。ババルは「ダースはすごくタイトに入ったんだけど、ディーンは下から動き続けて締めを緩めて、僕の片足を掴んで逃げたんだ。MMAは引退したけど、今は柔術選手として生まれ変わった気分だ。ヨーロピアンとパンナムでも試合したし、来週も試合するんだ。柔術を一生やっていくよ」と語った。
<20分1R>
ギ・メンデス(ブラジル)
Def. ベースボールチョーク
サミール・シャントレ(ブラジル)
世界レベルの軽量級ファイターであるサミール・シャントレだが、さすがにライトフェザー級世界最強の呼び声が高いメンデス兄弟の兄、ギ・メンデスが相手では部が悪いだろうと予想されたこの試合。まずメンデスが引き込むと、シャントレは上から対応。悪評の高いダブルガードの攻防を避けて、果敢にパスガードを狙ってゆく。しかし、このシャントレの選択が裏目に出てしまう。
メンデスは得意のデラヒーバフックを作ったまま片手をポストして立ち上がってスイープに成功。シャントレは下になりつつも膝十字を狙って行くが、盤石のベースを誇るメンデスはまったく崩れない。そのうちメンデスはシャントレの襟を両腕で前後から掴み、重い重いプレッシャーをかけてあっさりシャントレの体を潰し、レッグドラッグの状態を作る。シャントレもメンデスのギを掴んだりなんとか両腕を伸ばして距離を作ろうとするが、メンデスは漬け物石の如き重さでのしかかり動かない。
やがてサイドを奪ったメンデスは、シャントレのギの裾を首の後ろで捕獲してブラボーチョークのグリップを完成。さらにニーオンザベリーを作って、捕獲した裾を利用したベースボールチョークを狙ってゆく。まったく動けないシャントレにメンデスが両膝でのしかかった場面では、解説のジェフ・グローバーが「これはもはやトータル・ポリス・オフィサー・コントロールだ」と秀逸なコメントを残した。
一度はメンデスのベースボールチョークからエスケープしてみせたシャントレだが、仕切り直したメンデスが再びブラボーからベースボールに移行するコンビネーションで締めてゆくとたまらずタップ。メンデス兄が軽量級としては桁外れのプレッシャーと極め力を見せつけて圧勝した。
メンデスは「僕はいつも一本を狙うから、今回もいつもの試合と同じ練習をしてきたよ。20分時間があると、サブミッションを失敗してもまたしきり直せるからいいね。あのチョークは僕のベストの極め技の一つだ」と静かに語った。一方、敗れたシャントレは「あのチョークがギの得意技なのは分かっていたから、最初はうまく防げたんだけど、結局深く入れられてしまった。対策はできていたつもりだったんだけどね。僕は時間をかけて戦うし、一本を狙ってゆくからこのルールはすごく好きなんだけど、今日は試合の序盤でミステイクを犯したのが最後まで響いてしまった」と潔いコメントを残した。
<20分1R>
ザック・マックスウェル(米国)
Draw.
ショーン・ロバーツ(米国)
米国柔術界の未来を担う若手同士の対決となったこの試合。ロバーツが序盤から得意のガードを取ってオモプラッタ等を狙っていけば、マックスウェルも回転してインヴァーテッド・ガードを作ってからの足関節等、ホイラー率いるグレイシー・ウマイタ所属らしからぬモダン柔術系の技術を披露する。お互い積極的に攻め合う展開が続いて、残り6分となったところでロバーツがマックスウェルの片足を巻き込んだままオモプラッタを仕掛け、さらに腕を伸ばしにかかる。極まらないとみるや下から外ヒールの要領で足を絡めたロバーツは、そのままアンクルを狙うがマックスウェルも同じ技で対抗して、両者極めさせず。
やがてダブルガードの体勢になると、マックスウェルがベリンボロからレッグドラッグにつないでスイープ&パスに成功。さらにそこからマウントを奪うと、袖車と十字絞め狙いをセットアップにして腕十字へ。絶体絶命家と思われたロバーツだが、動き続けて隙間を作って危機を脱する。それでもサイドをキープしたマックスウェルは、残り1分の時点でまたしてもマウントを奪い三角締めから腕狙いのコンビネーションで極めにかかる。これもロバーツが守り切って時間切れ引き分けとなった。好試合を繰り広げた両者には大きな歓声が送られた。
後半明らかに優勢に試合を進めたマックスウェルは「別に向こうの方が大きいことは気にならなかったよ。他の試合もみんな体重差があるからね。(マウントを取った時は)極めることができるかなと思ったんだけど、ショーンも良く守ったね」と語った。対するロバーツは「後半はものすごく疲れてしまったよ。でも腕十字のディフェンスには自信があるんだ。体勢に入られた時には自分の袖をしっかり掴んで、『もしこれを離したら家族の一人が死ぬ』くらいの気持ちだったんだよ」とコメントを残した。
■Metamoris03「The Rematch」試合結果
<20分1R・ノーギ>
エディ・ブラボー(米国)
Draw
ホイラー・グレイシー(ブラジル)
<20分1R>
ハファエル・メンデス(ブラジル)
Draw
クラーク・グレイシー(ブラジル)
<20分1R・ノーギ>
キーナン・コーネリアス(米国)
Def.ヒールフック
ケヴィン・ケイシー(ブラジル)
<20分1R・ノーギ>
ディーン・リスター(米国)
Draw
ヘナート・ババル(ブラジル)
<20分1R>
ギ・メンデス(ブラジル)
Def ベースボールチョーク
サミール・シャントリ(ブラジル)
<20分1R>
ザック・マックスウェル(米国)
Draw
ショーン・ロバーツ(米国)