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【Metamoris03】43歳ブラボーと48歳ホイラーが魅せた魂の戦い

Eddie Bravo vs Royler Gracie

【写真】エレクトリック・チェアーが、これほど極まる展開を誰が予想しただろうか。エディ・ブラボーから、これらの技術が教え子に伝わり、グラップリング大会で結果を残す日を改めて待ちたい。

3月29日(土・現地時間)、カリフォルニア州ロサンゼルスのピーターソン・オートモーティブ・ミュージアムにて、Metamorisプロ柔術インビテーショナル第3回大会「The Rematch」が開催された。20分×1R、ポイント&判定無し、決着は一本のみという今大会のメインイベントは、エディ・ブラボー×ホイラー・グレイシーの11年ぶりの再戦。『エディがラバーガードで固めて、凡戦に終わるのでは』という予想も囁かれた43歳と48歳の対決は、予想をはるかに超える大激闘となった。
Photo by METAMORIS / James Law, Scott Hirano, Will Fox

Preparation Bravo vs Royler<20分1R・ノーギ>
エディ・ブラボー
Draw
ホイラー・グレイシー

ラッシュガードと道着の下(ギパンツ)を着用したブラボーは、見るからに気合いの入った表情。対してラッシュガードとショーツを着用したホイラーは、百戦錬磨だけあって落ち着いた様子だ。試合開始後まもなく、ブラボーがホイラーの右足めがけてスライディング。クォーターガードからハーフガードに引き込んでみせた。すかさず右膝を立てて、得意のニースライド・パスの形を作ったホイラーに対して、横向きの体勢をとってホイラーの右ふくらはぎを両足でがっちり挟んだブラボー。両者ともに得意の形をぶつけあう形だ。

Bravo vs Royler 01左腕をホイラーの脇に差してロックダウン(オリジナルの二重絡み)を作りたいブラボーと、逆にブラボーの左脇を差し、背中をマットに付けさせてパスを決めたいホイラーによる熾烈な攻防。ホイラーは前腕をブラボーの顔面に押し付け、また頭をアゴに当ててプレッシャーをかけることでブラボーの上半身を殺してゆく。やがてホイラーが右で脇を差し、左腕でブラボーの顔に強烈なプレッシャーをかけて背中を付けさせることに成功する。

形勢の悪くなったブラボーは、顔を圧迫されつつも目を閉じて精神を集中し、ホイラーの侵攻を防ぐ。ホイラーがいよいよ胸を合わせて来たかに見えたとき、ブラボーは両腕でフレームを作ってホイラーの顔に押し付けて隙間を作り、左腕を差し返すことに成功する。ブラボー自身が教則DVDで紹介している通りのハーフガード戦法を見せ、すかさず体を横に向けてロックダウンを完成させる。右手をホイラーの股間に引っ掛けると、再び顔にプレッシャーをかけてきたホイラーの勢いを利用して前方に崩し、十八番のエレクトリック・チェアー(両腕と両足の二重絡みを用いた股裂き)の体勢へ。

場内が大歓声に包まれる中、両足を180度近くに開かれたホイラーだが、当然の如くタップはしない。するとブラボーはそのまま上になってスイープを完成させる。さらなる大歓声が巻き起こるなか、ブラボーは足の二重絡みを解いてサイドにパス!! 左足をクレイドルの形でブラボーに抱え込まれてしまっているホイラーは、押さえ込まれたまままったく動けない状態に。

このまま時間切れまで押さえ込むことすら可能かと思われたブラボーだが、やがてクレイドルを解除して攻撃態勢に。すぐさまうつ伏せになって逃げようとするホイラーに対し、横に付いたブラボーはホイラーの左足を二重絡みで固定しつつ、両腕を組んで右腕を絞り上げながら自らの脇の下でホイラーの首を圧迫するネッククランクへ。苦悶の表情を見せたホイラーだが、懸命に体をずらしてエスケープに成功する、さらにブラボーがバックを奪いに来たところで、ホイラーはその体を横に落として上を取り返す。 

場内の興奮が頂点に達し「ホイラー!」、そして「ブラボー!」チャントが交錯するなか、再びハーフ上でブラボーを押さえ込んだホイラーは、微笑みながらブラボーの耳元で何やら囁いている。脇を取っているホイラーだが、ブラボーは下からロックダウン。やがて再び左腕を差すことに成功したブラボーは、またしてもホイラーを煽ってエレクトリック・チェアーの体勢に。タップしないホイラーに対してブラボーが再びスイープで上を奪うと、ホイラーは両腕でスティッフアームを作ってブラボーを押して上を取る。

残り6分となった時、またハーフガードからロックダウンを作ったブラボーは、三度目のエレクトリック・チェアーからスイープ。ホイラーもまた両手でブラボーの顔を押し返して上に。するとブラボーはホイラーの股間から頭を抜くと、回転の方向を変えてまたもやスイープに成功する。ロックダウンで固定したままレッグドラッグを作ったような形で、ホイラーの下半身を制して上になった。エレクトリック・チェアーから頭を抜いた状態は、ブラボー自身が『俺のシステムの中でももっとも破壊力のある足関節技』と豪語する「ベイポライザー」という名の変形膝固め&足首固めのコンビネーションにつなぐ形でもある。

Bravo vs Royler 02この危険な技を狙ってホイラーの足首を一瞬掴んだブラボーだが、とりあえずは抵抗するホイラーの脇を差して押さえ込んで固めることを選択する。ブラボーが最大のチャンスを迎えた場面で、場外のブレイクが入る。大歓声に包まれつつ、一旦離れた二人は握手しマット中央に移動。しかし再開時に(中断前には押さえ込まれていた)ホイラーが下になることを認めず、なにやら言い合う二人。チャンスだったブラボーとしてもここは絶対に譲れない。結局、レフェリーがビデオを確かめブラボーが上の体勢(しかし、中断前にはがっちり固めていた上半身のロックはホイラーがごねて許さず)から試合が再開。ホイラーは逃げようとするが、ねじれた体勢で下半身を固められているため、結局ブラボーに両脇を取られて押さえ込まれてしまう。

Bravo vs Royler 03距離を作ろうと懸命にブラボーの顔面を上腕で押すホイラー。対するブラボーは残り4分のところでとうとう前方回転、ホイラーの右足首を捕らえて必殺のベイポライザーへ。両者の足が複雑に絡み合うなか、ホイラーの右膝は外側に不自然に曲げられてしまっている。その足首を両手で捕らえ、渾身の力でねじ曲げるブラボー。ホイラーが掴んできた片手を振りほどいてヒールの要領で両手でホイラーの足首をツイストし、さらに脇に挟んでプレッシャーをかけてゆく。

見ている側がうめき声を出したくなるほどに膝も足首も曲げられたホイラーだが、決してタップはせず。ブラボーのパンツのギを掴んで引っ張って少しでもプレッシャーを緩めようとする。通常の相手なら完全にチェックメイトの状態を作ったブラボーだが、驚異の柔軟性と精神力を誇るホイラーを極めきれないまま、膠着状態に(※試合後、ブラボーが解説のケニー・フロリアンに、「ホイラーの足首は5回ほどバキバキと音を立てたが、ホイラーはタップしなかった」と語ったほどの極まり具合だった)。

「エディ! 残り1分だ!」。ブラボーの師のジャンジャック・マチャドの甲高い声が響く。それを聞いたブラボーがホイラーの方を見ると、額に脂汗を浮かべたホイラーも目を合わせる。両足が複雑に絡み合いながら、上半身だけは枕を並べて寝ているような体勢にある二人は、表情を緩めてなにやら会話を交わす。43歳と48歳のレジェンド二人は、お互い意地を張り合った末に迎えた極限の場面で、笑い合ったのだった。

会場からは再び「エディ・ブラボー!」チャントが巻き起こり、負けじと「ホイラー!」チャントも発生。残り30秒足らずのところで、ブラボーはまたしてもホイラーの右足首をねじりにかかるが、ホイラーもブラボーの手やパンツを掴んで極めさせず、試合終了。大激闘を終えた両雄を、会場はスタンディングオベーションで称えた。

No side Bravo vs Royler結果は引き分け。しかし、ブラボー優勢は誰の目にも明らか。前回の試合では、ホイラーのニースライド・パスの前に得意のハーフガードを攻略されてしまったブラボー。今回もまた同じ攻防を挑み、逆にスイープを決めてみせたことは特筆に値する。そして一度スイープに成功した後、自ら作り上げた10th Planet柔術システムの危険な技術を次々と繰り出してホイラーを何度も窮地に追い込んだその姿は、まさに鬼気迫るものがあった。

その歯に衣着せぬ物言い、既成の柔術観を覆す発想、ホイラー戦以降1試合もせずに成功を収めたこと等から、今までさまざまな批判や罵詈雑言を浴びせられ、今回も圧倒的不利が予想されていたブラボー。この戦いは、単にその実力を見せつけただけでなく、試合をしてこなかったこの11年間、ブラボーがいかに真摯に自分の技術体系を進化発展させ、磨き続けたかをまざまざと証明することとなった。

対するホイラーの方も、後半は守勢に回ることを余儀なくされてしまったが、前半に見せたプレッシャーの強さと正確さは見事なものだった。48歳にして20分間の大激闘を戦い抜いたスタミナと、ブラボーの数々のサブミッションを耐え抜いた体の柔軟性は毎日の節制の賜物。そして場外ブレイク後の再開時のごね方や、最後のベイポライザーで足をねじ曲げられつつもタップを拒否して笑ったその精神性もまた、エリオ派グレイシーの闘将健在を強く印象付けるものだった。

■Metamoris03「The Rematch」試合結果※この他の試合の詳細は後日、掲載します

<20分1R・ノーギ>
エディ・ブラボー(米国)
Draw
ホイラー・グレイシー(ブラジル)

<20分1R>
ハファエル・メンデス(ブラジル)
Draw
クラーク・グレイシー(ブラジル)

<20分1R・ノーギ>
キーナン・コーネリアス(米国)
Def.ヒールフック
ケヴィン・ケイシー(ブラジル)

<20分1R・ノーギ>
ディーン・リスター(米国)
Draw
ヘナート・ババル(ブラジル)

<20分1R>
ギ・メンデス(ブラジル)
Def ベースボールチョーク
サミール・シャントリ(ブラジル)

<20分1R>
ザック・マックスウェル(米国)
Draw
ショーン・ロバーツ(米国)

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