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【DEEP JEWELS39】本野美樹戦、3日前の須田萌理─01─「今朝は7キロをゆっくり走りました」

【写真】この頃は吸収するのも早く、容量も大きいはず。9月からまたどのような進化が見られるか(C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(水・祝)、東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS39で、須田萌里が本野美樹と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

須田は現在18歳、現役の高校生である須田。前戦はプロデビュー戦で敗れている村上彩を相手に、MMA力の高さを見せつけて判定勝ちを収めている。村上戦で見せた、それまでの試合とは異なる須田のMMA力と、成長の要因とは。


――前回の村上彩戦の出来についてどのように思っていますか。

「いろいろやりたいことを試したっていう感じです。それでセコンドの指示を聞きながら、落ち着いて試合することができたと思います」

――確かに3ラウンドを通じて、これまでにはない落ち着きは感じられました。1Rに相手が足関節を取りに来たのは予想どおりでしたか。

「はい。足関に来るのは分かっていたんですけど、うまく自分が逃げられなかったというか……。そもそもなぜ自分が突っ込んでいったのかも覚えていなくて(苦笑)」

――開始早々、右のスーパーマンパンチで飛び込みながら、グラウンドの展開に行きました。そこですぐに村上選手がヒールフックを仕掛けたのですが、その流れを覚えていないのですか(笑)。

「アハハハ、そうなんです。気づいたら足を取られていました。村上選手に足を取られている時に、セコンドのお父さんからも怒らたんです。動け、まず足を抜けって。その時は会場もシーンとしていて、お父さんの声もよく聞こえたので、そこで私もスイッチが入りました」

――前回のインタビューでは、2022年5月に大島沙緒里選手と対戦した時、開始早々に前蹴りを出したためにテイクダウンを奪われたと言っていました。今回も同じような展開でしたが、どうしてもスタートは自分から思い切り出してしまうのですか。

「いやぁ……それが分からないです。エヘヘへ。最初に出したいっていう気持ちは、確かにあります。試合前から気持ちが入りすぎているのが、良くないんでしょうね。でも、今回の最初の右は、作戦とかではなかったです(苦笑)」

――結果、村上選手はヒールフックのアタックに加え、後半はトップをキープしていました。その1Rは相手に取られたと思いましたか。

「そうですね。でも1Rの最後に、自分が少しやり返したかなとは思います。足を抜いて下になったのは作戦でした。あれが私にとっては基本的な展開なんですよ。最近は下からパンチやヒジを打って削りながら、サブミッションを極める選手が増えてきているじゃないですか。私もそういう試合がしたいなって思っています」

――下になってからスクランブルに持ち込む、トップポジションを奪おうとすることはないのでしょうか。

「上を取ることには、こだわっていないです。もちろん選択肢にはありますし、上を取れたら上になったほうが良いです。でも、私はテイクダウンがあまり得意じゃないので……。それやったらずっと柔術をやってきたし、下から攻めたほうがいいかなって。2Rも下になって腕十字から足を取りに行きました。ああやって仕掛けることができるので、下になっても良いかなと思っています」

――なるほど。次の2R以降が、これまでの試合とは大きく変わっていました。打撃の構えとスタンス、足さばき、そして体を半身ずらして右ストレートをカウンターで当てるなど、明らかに打撃の面が向上していたように思います。

「ちょっと打撃を多くやりたかったんです。自分の距離をつくることを、最近はボクシングの練習でやっていて。その成果を出せたかなって思います。1年前ぐらいに、ジムの近くに江坂ボクシングジムが引っ越してきて。昔お父さんがそのジムに通っていたらしくて、私もそこでボクシングを教わるようになりました」

――江坂ボクシングジムといえば、元日本ウェルター級王者で世界挑戦経験もある辻本章次さんのジムですよね。

父・智行 今は辻本さんが名誉会長で、福山正治さんという方が会長になっています。その江坂ボクシングジムが、ウチから自転車で行ける場所に移転したんですよ。その距離ならレッスンとレッスンの間に行けるやん、と(笑)。それで僕からお願いして。

「それまで本格的にボクシングを練習したことがなかったんです。だから、ずっと打撃が苦手で……。でも江坂ボクシングジムで練習するようになってからは、パンチを出せるようになってきたし、コンビネーションも教わって、自分でも変わってきたなぁと思います。そこで習ったことを、どうMMAに生かすかって考えるようになりました」

――パンチを当てた時の手応えも、以前とは違うのではないですか。

「どうなんやろう……それまで試合で打撃をやっていなかったので(苦笑)。2、3回ぐらいしか打撃を出したことがなかった気がします。でも前回の試合は、『今までずっと寝技ばっかりやったから今回は打撃を出してみよう』って、お父さんと話をしていたんですよ。

それまでは無理に打撃戦をするよりは、寝技で勝ったほうが楽やと思ってしまっていて。だから、練習していたコンビネーションを出せたのは嬉しかったです。でも村上さんが打たれ強くて。打っても打っても前に出て来るので、ビックリしました。当たっているし、効いていると思ったんですけど、全然下がらんし、表情も変わらないから……。自分のパンチは弱いんかなと思ったり(苦笑)。とにかく近い距離になったら組みつかれるので、前に出てきても打ち合わずに、冷静に距離を取りました」

――さらにスタンドだけでなくグラウンドでもパンチの強さと、重心の安定が興味深かったです。以前よりもポスチャーが強くなったのではないでしょうか。

「どうなんですかね……自分では分からないです。でもバランスは良くなったと思います。いつも走り込んでいるので。お父さんからは『走り込みが大事や』と言われていて。1、2年前ぐらいから、ずっと走り込みは続けています。それで打撃にしても寝技にしても、バランスも良くなったかもしれないですね。今日も朝に走っていました」

――試合3日前(取材は11月20日に行われた)に、それだけ走り込むのですか。

「日によって違うんですけど、今朝は7キロをゆっくり走りました。坂道ばっかりですけど(笑)。いつもは中距離、短距離の走り込みが多いです。インターバルを入れながら、お父さんを背負って走ったり」

――えっ、ちなみにお父さん体重は……。

智行 80キロぐらいですね。今は娘が僕をお姫様抱っこできるぐらいですよ(笑)。

「それは持ち上げられるほうが上手いから……。でも、それぐらいバランスもパワーも強くなってきていると思います」

<この項、続く

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