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【ONE157】青木真也と組み技戦。ケイド・ルオトロ「多くの人がシンヤの柔術を過小評価している」

【写真】出るか──バギーチョーク!! ケイド・ルオトロ (C)CLAYTONE JONES/FLOGRAPPLING

20日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE157で、ケイド・ルオトロが青木真也とグラップリングマッチで戦う。

双子の兄弟タイとクレバー・ルシアーノの下で3歳から柔術をはじめ、キッズ育成世界一のメンデス兄弟のAOJ時代から神童とうたわれてきた。その後、ATOS所属となり昨年12月に黒帯になったばかりのスーパーティーン柔術家にONEと契約した理由と青木真也戦について話を訊いた。


――もう7~8年も前になりますが、コスタメサにあるアサイバーに行った時に、まだ10歳前後だったケイドとタイの2人のバナーがあり、こんな子供がスポンサードを受けているのかと、もの凄く驚いたこと記憶があります。

「アハハハ。あぁ、懐かしいね。バンザイ・ボウルズだね(笑)」

──そうです、そう!! キッズの頃から注目を浴びた天才ツインズが、揃ってONEでプログラップリングマッチに挑みます。ケイドは日本の青木選手と戦うのですが、今、どのような気持ちですか(※取材は5月17日に行われた)。

「スーパエキサイティング。もう、戦うだけだよ」

──なぜONEとサインをしたのか、まずそこを教えていただけますか。

「まずチャトリが、過去にない高見に柔術を昇華させようとトライしていることを知ったからだよ。サブオンリーでアクションが多く、サブミッションが多く見られる柔術……ゲームでないエキサイティングな柔術を実現させるために彼は動き始めた。このスポーツを次の段階に引き上げようというチャトリの姿勢に賛同したんだ」

──マットでなく、ケージで戦うことについてはどのように思っていますか。

「そこがONEグラップリングの一番の違いだね。死角マットでなく、サークルのケージというのは明らかに僕らがこれまで戦ってきた柔術はない環境だ。新しい挑戦だけど、僕らは十分に自信がある。もう準備はできているよ」

──マットやリングとの違いは、やはり頭が詰まったり、体を回す方向が一方になるなど金網際で動きが制限されることです。

「本当に多くの……ごく小さな違いを修正しないといけない。もし、僕が三角絞めを掛けたとしたらシンヤ・アオキは確実にケージに押し込んでくるだろうね。現時点でケージはマットよりも、多くのミスを誘う要素になると思う。ケージに押し込まれて、そのプレッシャーを受けることでね。なにより、シンヤはその状態で背中を取るマスターだ。ケージに押し込み、テイクダウンをして足をコントロールしてくるだろう。僕もタイもそこでアンダーフック、オーバーフック、ベストのチョイスをして防御から攻撃に転じるつもりさ。

押し込みに対する対応策、そのアプローチ方法はいくつもあるからね。それに僕らも将来的にMMAを戦うこともあるだろうから、ケージで戦う必要性を感じているんだ。これまで経験がなかったからね」

──青木選手はケイドがマスターと称したようにMMAのおけるグラップリングの完成度の高さは世界の頂点にあるかと思われます。とはいえ、MMAの中でのグラップリングと純粋なグラップリングは違います。ケイドは引き込むことが問題ないですし、殴られても構わないポジションでの技を有しています。

「その通りだ。シンヤの柔術はドミネイトすることが軸にあるよね。彼はMMAに必要な力強いペースで、削って来る。それがシンヤの寝技だ。頭をどんどんこすりつけてくるような、ね。僕の柔術はもっと幅が広い。シンヤが使えない技術を僕は持っている……きっとね」

──ピュアグラップリングでの青木選手の能力をどのように判断していますか。

「多くの人がシンヤの柔術を過小評価しているよ。柔術をMMAで駆使することにかけて、シンヤはベストの中のベストだ。彼の勝利は、そのほとんどが柔術の技で終わっている。3月の試合だって、ずっと試合を支配していた。シンヤは最高の柔術競技者の1人だよ」

──グラップラーとして、ルオトロ兄弟はこれ以上ないほどエキサイティングな組み技を披露しくれる柔術家です。ただし、打撃のムエタイやキックボクシングと違ってファンはある程度の知識が必要です。パウンドのあるMMAよりも、ケージのなかでの攻防が難解に感じられることは現時点で間違いないです。ケイドの戦う相手は青木選手だけでなく、他のMMAファイト、そしてムエタイやキックの試合でもあります。

「柔術は過去、MMAやムエタイのようにスポットを当てられることはなかった。今、言われたように柔術は見る目を養う必要があり、理解することが簡単じゃないからね。チェスのようにほんの少しの動きの積み重ねだ。だからこそタイも僕も今週の試合だけでなく、今後組まれる全ての試合で柔術のイメージを変えていく。遅くて、動きのない戦いではなくエキサイティングなショーにして見せる」

──ところで今回のONEとの契約ですが、柔術及びグラップリングファンの多くが気にしているのが、独占契約で今後はONE以外の場所でルオトロ兄弟が見られなくなるかもしれないということです。

「チャトリが最高にクールだったのは、僕らは100パーセントONEに縛られない自由な契約を結んでくれたことだよ。僕とタイにとってノーギ・コンペティションで世界最大のトーナメント、ADCC優勝は成し遂げなければならない目標だからね。色々なことがあるけど、チャトリはADCCを含め、いくつかのトーナメントで戦うことを了承してくれているんだ。と同時に僕らの活動の中心はONEになっていくことも確かだよ」

──あと、これは今回の試合に関係ないことなのですが、これだけグラップリングシーンで成功を収めてきたケイドとタイのルオトロ兄弟が、なぜか1人の選手には揃って苦杯をなめ、揃って0勝2敗と苦戦を強いられています。

「アハハハハ。ロベルト・ヒメネスのことだね」

──ハイ、その通りです。タイは2つのポイント負けで、ケイドはショートチョークとRNCと2つの一本負け。過去2年半で喫した敗北は、この2試合だけと考えると天敵なのかと。

「言い訳はしたくないけど、ロベルト・ヒメネスとの試合に関しては最初の試合は、全くもって100パーセントの状態から遠かった。2試合目はバケーションから戻って3日のスクランブル発進だった。全く練習していない状況だったんだ。ONEにはロベルト・ヒメネスともサインをしてもらって、リマッチを実現してほしいと思っている」

──それは想像するだけでもワクワクしていますね。

「彼は僕らの良い友人だけど、負けっぱなしではいられないからね」

──同い年の超新星ミカ・ガルバォンはONEと交渉しましたが、もっと試合経験が必要だとサインをしなかったと言っていました。

「興味深いね。ミカの判断が正しいかどうか、僕には分からないし何も言及するつもりはない。彼の人生だからね。でもチャトリは僕らがIBJJFの世界大会に出ることも認めてくれている。僕らは今も道着で世界一になるつもりだし、ADCCを制覇しようと思っている。ONEと契約したのは、他の大会に出て戦って良いからだ。ミカはどういう条件だったのか知らないけど、彼の下した判断は面白いよ」

──ケイド、今日はありがとうございました。青木選手とのグラップリング戦、興味深く拝見させていただきます。

「ありがとう。柔術はスローで、他の格闘技と比較してつまらないなんてことは絶対にない。柔術を練習している人達だけでなく、試合を見ている全ての人が楽しめる柔術を見せる。このスポーツの素晴らしさを分かってもらうためにね」

■放送予定
5月20日(金・日本時間)
午後5時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後5時30分~ONE Supper App

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