【Road to ADCC】20歳のヒメネス、18歳のケイド・ルオトロとのノンストップファイトをRNCで制す
【写真】ダイナミックなノンストップアクションが見られたヒメネス✖ルオトロは大会ベストバウトといって良い試合だった(C)CLAYTON JONES/ROAD TO ADCC
17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられたワンマッチ大会は、注目の対戦が並んだ。
Text by Isamu Horiuchi
Road to ADCCプレビュー第4回は1歳8のケイド・ルオトロ、20歳のロベルト・ヒメネス──グラップリング界の未来が、繰り広げたノンストップアクションの模様をお届けしたい。
<88キロ級/20分1R>
ロベルト・ヒメネス (米国)
Def. 14分04秒by RNC
ケイド・ルオトロ(米国)
アンドリュー・ウィルツィの代打として急遽出場を決めたケイド。実は前回の試合以降はコスタリカでサーフィンをしていたとのこと。
試合開始後、体格に勝るヒメネスは積極的に前に出て、ダックアンダーを仕掛け、飛び込んでのテイクダウンを狙う。が、ケイドは回りながらうまく捌いてゆく。さらに前に出るヒメネスに対し、それまで下がっていたケイドはカウンターのダブルレッグを仕掛ける。見事なタイミングで倒されたヒメネスだが、すぐにバタブライガードから腕を伸ばして距離を取り、立とうとする。
ケイドがそれを押し倒し、それでもヒメネスが立ちにきたところで飛び上がって旋回──ファーサイドにあるヒメネスの左腕にアームバーを仕掛けた。
うつ伏せで極めにきたケイドに、一瞬腕を伸ばされかけたヒメネスだが、なんとか抜くとそのまま体重をかけてパスに成功する。ケイドはすぐに足を絡めてリバースハーフを作ると、そのまま起き上がってリバーサルしマウントを取って見せた。
ならばとヒメネスも下から動き続け、やがて腕を伸ばして距離を取り、マウントから脱出しつつ立ち上がる。そのままケイドのバックに回ったヒメネスに対し、ケイドは豪快にダイブして前転、上を取り返して見せた。ここまでわずか3分、18歳のケイドと20歳のヒメネスというグラップリング界の未来を担う二人が、一瞬で優劣が入れ替わるノンストップのとんでもない攻防を展開している。
右ヒザを前に出してパスのプレッシャーをかけるケイドに対し、ヒメネスは下から回転してケイドの右足をキャッチする。
ケイドが動いて逃れると、ヒメネスは再び下から回転して右にヒザ十字を仕掛けるが、ケイドはこれも脱出した。
足関節に難があると見られたヒメネスだが、自ら積極的にその攻防を挑んでいる。立ち上がったケイドは、またしても右ヒザからパスのプレッシャーをかけるが、ヒメネスはインバーテッドで対応する。ケイドはヒメネスの左足を捌いて左にパスを決める。ヒメネスはすかさず動いて隙間を作って起き上がると、ケイドのバックを狙う。そうはさせじとスクランブルするケイドだが、ボディロックを取ったヒメネスが押し倒して上になる。左のデラヒーバでケイドが絡むもの、ヒメネスは右ヒザを押し下げてパスに成功する。
なおも下から動くケイドだが、ヒメネスはノースサウスに移行した。体重が軽い上に、急遽出場を決めたケイドは激しく動く序盤でコンディショニングの差が出てきたか。
ヒメネスはケイドの右腕をワキに抱えて腕十字を狙う。ケイドはすかさず起き上がり、腕を抜きながら上に。クローズドガードを取ったヒメネスは、ケイドの両ワキを差して背中でグリップすると、体をずらしてのバック狙いへ。この動きは、ケイドの兄タイがヒメネスにやられたパターンだ。バックを譲られるのを嫌がったケイドが下になると、ヒメネスはマウントを奪った。
一度ここからノースサウスに移行したヒメネスが、再びマウントに入るその瞬間、ケイドは体を翻してリバーサルに成功する。ワキを差されながらも強引に左ヒザを入れてパスを狙うケイドだが、さすがに強引過ぎる。
ヒメネスはまたしても体をずらしてバックに回り、上を取り返した。
中盤、ケイドが防戦を強いられる場面が目立っている。いったんサイドに付いたヒメネスだが、ケイドのバギーチョークを警戒してか再びノースサウスに入る。ここで試合は10分を経過して加点時間帯に。諦めずに動き続けるケイドがスクランブルを試みてうつ伏せになるも、読み切っていたヒメネスはすかさずバックテイク&4の字フックで固めて3点を先取した。
さらに右足でケイドの右腕をトラップしたヒメネスは、それでも懸命に守ろうとするケイドの首に右の手首をこじ入れると、RNCを完成させタップを奪ってみせた。
最後は前回と同じ技で敗れてしまったケイドだが、序盤ヒメネスを極めかけて、さらにマウントも奪った動きは驚愕のもの。77キロで同体格の相手に、しっかりと調整した上で戦えば、ケイドもまた来年の世界大会では台風の目になることは間違いないと思えるほどの輝きだった。
そんなケイドの序盤の猛攻を凌いで攻め返し、後半には力の差を見せつけたヒメネス。現代的な目まぐるしいスクランブルの攻防や足関節技に対応するだけでなく、懐の深いクローズドガードからのバック取りという、柔術家ならではの武器をここぞというところで使うあたりが心憎い。
ヒメネスは試合後「勝って嬉しいよ。まだ修正すべき細部はいろいろあるけど、ステイポジティブに行きたいね。僕はルオトロ兄弟からは、いろいろなインスピレーションを得てきたんだ。僕がまだ黄色帯の頃に、年下の彼らはもうスポンサーを得ていたりね。今日もあのテイクダウンには驚いたよ」とケイドを称えた。
さらに「僕はブルース・リーのフィロソフィーに心酔しているんだ。つまり、スタイルを持たないこと。リーの教えの通りに、僕自身の戦い方、僕自身の表現法を探すこと。それこそが僕のミッションさ。ところでFlograpplingはカナビス(大麻)のスポンサーシップを得ないのかい? ロックオート(現在Flograpplingをスポンサーしている車の部品会社)って僕は良く知らないんだよ」と、自由な魂の持ち主ならではのコメント(ちなみに彼はマリファナを薬草の一つとしてとらえ、もはや吸うことはなく、それら薬草を、チンキ剤として服用したりお茶にして飲んだり野菜のように食べたりする形で摂取しているとのこと)。
類い稀なる才能に恵まれた若き柔術家の自分探しの旅路が、今後どこに向かい、来年のADCC本戦でどのように花開くのか──非常に楽しみだ。