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【BRAVE CF57】ムハンマド・シャヒド代表―02―「重要なのは選手が2人、どちらが強いかを競い合うこと」

【写真】選手団の宿泊する首都マナーマ市内のホテルはBRABE CF57とMMA SUPER CUP一色だ (C)MMAPLANET

中東バーレーンで8日(火・現地時間)から12日(土・同)までBRAVE International Combat Weekが開催される。BICWは8日から開会式、9日が準決勝、12日に決勝が行われるアマチュアの国別トーナメント=MMA SUPER CUPと11日(金・同)に3大タイトル戦が組まれたBRAVE CF57で構成されている。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、両国の出場がなくなり、オセアニア、アイルランド、メキシコ、アラブ王者、カザフスタン、バルカン王者、バーレーン、タジキスタンの8チームで争われることになったSuper Cupこそ、ムハンマド・シャヒドBRAVE CF代表によると新しいBRAVE CFの旅、その第一歩となるという。

BRAVEが目指す、MMA産業――その未来図とは。

<ムハンマド・シャヒド・インタビューPart.01はコチラから>


――BRAVEの使命というのは?

「リーグ・モデルを構築して、MMAのフォーマットを変えなければならない。世界中の国がナショナル協会を創設し、他のスポーツのように政府の援助を受けるようなスポーツにMMAを進化させたいんだよ。そういう世界にするには良い面ばかりを発していてはいけない。改善しないといけないダメな面にも言及すべきなんだ。

日本にもこの世界を代表するプロモーションが存在していたけど、あの時からMMAは何が変わっただろうか。構造は何も変わっていないままだろう。これからの10年、この点が本当に重要になってくる。

スポーツとして協会が存在し、政府から資金を得ることができるスポーツにならないと、MMAは変わらないままだ。バーレーンではこのスポーツが普及するために、資金を投入しサポートしている。だから、こんなに急激にMMAは発展したんだ。

今年のIMMAFの世界選手権には67ヵ国からの参加者があった。でも、MMAがスポーツとして発展するためのフォーマットはできていない。選手たちが日々の努力がもたらすことが、ただ戦うだけになってしまう。そうしないためにニューモデルが必要になるんだ。その必要性を世界に広めるための機会をバーレーンは提供している」

――とはいえ、現状も真の実力者はMMAで十分な成功を収めることができています。

「そう。ただし、平等だろうか? 日本人選手で英語が話せず、トラッシュトークを英語圏の人々に披露できないことで、戦う機会を失っているケースはないだろうか。力はある、でも投資に値する市場を持たないから契約はできない選手は? 30歳を過ぎた、若くないから契約できない――そういう選手が存在しないといえるかい」

――絶対的な力の持ち主であれば、それだけでUFCと契約できると思います。ただし、同じ実力、あるいは強さは上でも今、シャヒドが言われた条件に満たず、チャンスを与えられない選手がいることも確かでしょう。

「それがスポーツだろうか。ビールを飲んで、床を踏み鳴らし、大声で叫ぶ人たちはフライ級の試合を見たくない。ヘビー級の殴り合いみたい。だからフライ級を廃止しようだとか。それこそが――これまでのMMAの発展方法だ。

ただし、MMA産業の潜在能力はそんなものではない。1ビリオン・ドル(10億ドル=1千億円)規模のカンパニーであっても、十分じゃないよ。このスポーツはもっと巨大になれるんだ。UFCは7ビリオン・ドル規模のカンパニーだ。けれども、サッカーになると24ビリオン・ドル規模の組織がある。

それはカンパニーの発展という方法論で歩んできたからでなく、世界中の国に協会があり、実力だけでプレイヤーが勝負できるからだよ。英語で相手をののしる必要がない環境整備こそ、MMAがサッカーのようなスポーツ産業になるための前提だと我々は考えている。

個々の国の協会が選手をスカウティングし、成長を助長する。そして国際的な舞台へ進む。選手のチャンスも増え、優秀な選手が余すことなくステップアップできる。そうなったときこそ、MMAが本当の姿で普及したといえる。英語で受け答えができなくても、ケージのなかで最高のパフォーマンスを見せることができればそれで構わないはずだ。凄く強い選手だ。でもアジア人で体が小さく、英語が話せないからスターにはなれない――そんなことはあってはならないんだ。

これはマーシャルアーツだよ。マイ・フレンド!! 重要なのは選手が2人、ケージに足を踏み入れどちらが強いかを競い合うということなんだ」

――……。確かにその通りなのですが……。

「ムサシ・ミヤモトはマーシャルアーツの強さだけで、その地位を得たはずだ。必要なのは技量であって、英語でアピールできる能力ではない。マーシャルアーツに必要なのはリスペクトと相手を倒すことだ。MMAは世界中で急激に発展したけど、置き去りになったことがある。それがナショナル協会、インターナショナル協会という組織構成だ。

スーパーカップにブラジルが出ていない。米国も、日本もだ。これらの国のアマチュア選手は不満に感じるだろう。でも、心配はないよ。この世界観を共有し、MMAのニューモデルを確立しようとする人々を我々はサポートする。

ドラマチックで、どの試合もエキサイト。そういうアメリカン・スポーツがどれだけ世界に普及しているか。NASCARを見てみよう、アメリカ人はF1よりもあのレースが好きだろう。ただし、同じレギュレーションのレースが他の国に存在するだろうか。彼らからすれば『そんなものは必要ない』と言うだろうね。米国という市場でやっていける――TV放映料、チケット収入、マーチャンダイスからね。他の国は必要ないんだ」

―確かにそうですね。米国内で成り立つスポーツ・リーグだらけです。

「MMAはそれぞれの国の人たちに合ったプロモーションが存在するグローバルスポーツだ。だからこそ選手だけでなく、このスポーツ全体が一体化すればさらなる発展が望める。それぞれの国の協会とリーグを持ち、その時点でも国際交流は見られ、さらなる巨大なリーダーシップを持つ国際組織と各国の協会とリーグが通じる規模になれば、政府がMMAを援助するようになる。

1人の男がこのスポーツをコントロールするのではなくて、全ての国に通じる組織が巨額の投資を複数から得られると、その利をすべての国に分配できる。結果、それぞれの国の組織も国の援助、ナショナル・カンパニーのサポートが受けられるようになるはずだ。世界中でファイターは成長でき、一つの世界観でMMAは成り立つようになる。選手たちの選択肢も増えるしね。どうやってキャリアアップを果たすのか。どこでピークを迎えるのか。選択権はプロモーションでなく、ファイターが持つ世界にしたいんだ。

ストラクチャーが曖昧。それが現状のMMAの最大の問題点になっている。世界中から選手が生まれているのに、世界中でMMAは発展していない。そこにメスを入れる、第一歩がスーパーカップの開催だ。ほんの小さな変化だよ、全体像からすれば。でも、ここから世界のMMAは変わっていく。一つの組織の傘下に各国が入り、安全な競技運営がなされ、各国のリーグが運営される――そういうスポーツにね」

――話が大きく感じるのですが、サッカーを想像すれば良いわけですね。NFLではなくて。

「IMMAFはパンナム、オセアニア、アジアン、ヨーロピアン選手権を開催し、そこから世界選手権に進むカレンダーがある。今年から世界選手権が終わり、国別のランキングで現状はトップ6と2つの地域がワイルドカードで出場しているスーパーカップが始まる。将来的には16ヵ国が競うトーナメントにしていきたい。

4年に1度でなく、毎年開催してく予定だよ。そしてアマチュアだけでなく、このネイションはプロのスーパーカップを行う。国を代表して戦うことは、現状のMMAには存在しない。どれだけ富を得ても、その国のこのスポーツの発展に関係ないからだね。そんなモノ必要ないと感じるファイターは存在するだろうし、それで構わない。でも国を背負って戦うことで、得らえるのは名誉だけでない。それはもう五輪を見ても分かるだろう。BRAVE NATIONが目指すのは、そういう世界観だ。母国のスポーツの発展に通じるファイトをする。それは今のMMAとは別物になるだろうね」

――5ヵ年計画で、第何次までを構想しているのでしょうか。

「アハハハ。そんなに時間はかからない。プロバージョンのスーパーカップは3年から5年のうちに実現させるよ。過去20年のMMAの成長の早さを振り返ってほしい。10年計画は必要ない。このスポーツは発展する一方だからね。企業同士の競争が迎える発展の先に見えるものは……巨大な勝者と、強大な敗者の存在だよ。結果、産業は荒廃する。メディアは衰退し、ファイターは困難な状況に陥る。ジムは成り立たない。失うモノばかりだ。スポーツの発展は一つのカンパニーの利益ではなく、産業としての利益を追求しないと望むことはできない。

スモール・プロモーションは現状では、巨大プロモーションに太刀打ちできない。ただし、そういう人々が生きていける産業にしないとMMAは、本当の意味での発展は見込めない。だからこそ、我々BRAVEはそういうプロモーションと手を取り合って、世界各国でイベントを行ってきた。新しいMMA界を迎えるための準備を2016年から2021年まで行ってきた」

――だから……。

「そう2022年、BRAVEは新しい旅を始めるんだ。インタビューの最初に言ったようにね(笑)」

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