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【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:2月:倉本一真✖加藤ケンジ─01─「ケージ・キング」

【写真】この両者の一戦、倉本の勝利が今後のRIZINの方向性に影響を及ぼすことになるのか (C)RIZIN FF

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、柏木信吾氏が選んだ2022年2月の一番。23日に行われたRIZIN TRIGGER02より、倉本一真✖加藤ケンジ戦について語らおう。


──柏木さんが選ぶ2022年2月の一番をお願いします。

「RIZIN TRIGGER 02の倉本一真選手と加藤ケンジ選手の試合です。これ、言い過ぎてしまうことになるかもしれないですけど……ケージでRIZINルールなら倉本一真・最強説が出てくるかもしれないです。いやぁ、凄く強かったです。なぜGPでアラン・ヒロ・ヤマニハに負けたんだと疑ってしまうほど、強かったです。

ケージに適したファイトスタイルで、凄く生き生きしていました。レスラーという部分もそうだし、がぶってからのヒザも彼に合っている。もってこいのルールですね、倉本選手の強味が引き出される。1+1が2でなくて、10になるような状況でした」

──加藤選手がストライカーだということを差し引いても、あの強さは特筆すべきものがあったと。

「加藤選手がスクランブルの選手だったら展開は変わっていたかもしれないですけど、あそこで止まってしまうと倉本選手はとても危険だということが分かった試合だったと思います」

──動きたくても止まらされたという見方もできますし。

「その通りですね。あの態勢にされてしまうと、もう打つ手がないです。RIZINでリングを経験し、逆に今まで以上にケージがフィットしていることに気付き、目覚めたのか。とにかくMMA以前から、格闘する競技に費やしてきた時間が違うのでしょうね。そういう強さをレスリングのトップクラスの選手は皆が有しているように感じます。

ちょっと他と違う。学生レスリングを経験していると、練習量が半端ないのかと。そこがMMAで開花すると、こうなるのか──と恐ろしいモノを見た想いがしました」

──そこでやはりケージOrリング論になってしまうのですが……。ここまでケージで強いなら、強味が発揮できるところで戦って、外国人選手とも相対して欲しいと。リングでベラトール・バンタム級ファイターより、ケージで戦ってほしいと勝手ながら思ってしまいます。

「ハイ……分かります。それこそ、ケージの絶対チャンピオンになり『俺はリングには出ません』ってなってしまうかもしれないです」

──いうと収益がTVであり、チケット収入でないのならTVカメラで伝えることができるのでケージで良いじゃないかと。もちろん、F1のように一瞬で目の前を通り過ぎても、ライブが一番。ライブに優る観戦方法はMMAでもない。だから、ケージだから見に行かないという人はいないかと。

「ハイ……。そこは……倉本選手のようにメチャクチャ強い選手がいるというのが噂になるということでも良いかとも思うんです。まだTRIGGERは2回しかやっていないので、方向性が決まるということはなくても、両方あっても良いのかと。

リングかケージか──僕は別競技だと言ってきました。でも考えてみると、テニスみたいなものなのかもですね。テニスって芝が表面のグラスコート、土のクレーコート、アスファルトのハードコートがあるじゃないですか。でも、やっていることは同じなんです。足下が違うだけで。

それぞれのコートに得意な選手がいるわけで芝では勝てないけどクレーでは勝てるとか、ハードではメチャクチャ強いけどクレーは弱いですよ──とか。そんな感じなのかって捉えるようになったんです。ケージとリングは別モノではなく、同じMMAだと」

──う~ん、そうなるとナンバーシリーズでもケージが欲しくなります。テニスだと全仏はクレー、ウィンブルドンは芝、全豪と全米はハードじゃないですか?  グランドスラムでハードが2つあっても、ハード以外が2つある。RIZINもTRIGGERで活躍した選手が本戦にステップアップするなら、ケージで強い選手がリングだけだと、その強さがスポイルされることもある。戦う場のステータスがケージよりリングが上だと、テニスとは話が違ってきませんか。

「あぁ……そうですね、全英と全仏はコートが違っていてもトーナメントの規模、格式は変わらないと。つまりは、さいたまスーパーアリーナでもTRIGGER大会をやりましょうよ、と?」

──もしくはRIZIN、LANDMARK、TRIGGERの全てでリング大会とケージ大会を行うのか。倉本選手のようにケージ・キングのような選手が他にもいるかもしれないので。

「まぁ、まぁ、まぁ、そうですよね。今はナンバーシリーズの方が格が高い大会になっていますからね」

──別競技なら、もう専門家がいても良い。だから本戦とTRIGGERで違う主旨のイベント開催でも構わない。ただし柏木さんが言われた同じ競技で足下が違うというのであれば……。

「規模も同様にしてほしいと」

──ハイッ。そういうことです(笑)。ケージは面白くないと視聴率が下がったり、PPV購入数が減り、チケットが売れなくなると自然淘汰です。無くなるのも致し方ない。

「まぁ、まだ2回目なので……これから数を重ねて、色々な選手が出場して、色々な試合が見られていく中で、そういうことが協議されるようになるかとは思います。それを倉本選手が示したことになります」

──吉野光選手、中川晧貴選手にも当てはまるかもしれないです。

「いやぁ、仰る通りです。まさに吉野選手と中川選手に関しては試合を組んだ時点でケージがあることで有利だと思っていました。特に吉野選手なんて、そうですよね」

<この項、続く>

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