【Special】月刊、大沢ケンジのこの一番：12月：オリヴェイラ✖ポイエー─02─「変化球だけでは……」
【写真】ポイエーに快勝した前に出て打たせることができるライト級王者オリヴェイラ。次は誰の挑戦を受けるのか (C) Zuffa/MMA
過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、大沢ケンジ氏が選んだ2021年12月の一番は12月11日に行われたUFC269より、UFC世界ライト級選手権試合＝シャーウス・オリヴェイラ×ダスティン・ポイエー戦について引き続き語らおう。
＜月刊、大沢ケンジのこの一番：12月：オリヴェイラ✖ポイエーPart.01はコチラから＞
──コディー・ガーブラントも以前は、しっかりとボクシングをしながら軸があってテイクダウンを切れていましたし、パンチを防御していました。
「ガーブラントはドミニクとやった時にしっかりと待って、フェイクに掛からなかったじゃないですか。それがアイツ、1回倒されてからアゴが弱くなって、自分に自信が持てなくなっちゃっていますよね。
打って、やられることが増えましたよね。だから近い距離で戦うことって諸刃の剣じゃないですけど、危なくて。キャリアの全般を通して続けることは難しいことかもしれないですけど、それをやる覚悟がないと勝てないようになってくるかもしれないです」
──そしてオリヴェイラには覚悟があって、グラウンドの強さもある。
「武器は全部持たないといけないんです。それは間違いない。中田にしても、相手が打撃の勝負で疲れる前に絶対に組んでくるからって言っているんです。前に出る選手に対して、絶対に組んできますからね。それを切ることができれば、お前は強くなるよって。
テイクダウンを切り、いえば自分でテイクダウンができるようになれば打撃に生き、また打撃もテイクダウンに生きるようになります。だからピョートル・ヤンが完全体ですね。蹴りも使えますしね」
──とにかくMMAファイターは大変です。
「見ていると面白いですけど、やっている方は大変です。相手の苦手のところを衝くとかではなくて、どこでも真っ向勝負できないとダメという感じになってきていますね。
以前の上手く戦うMMAは、駆け引きの上手いピッチャーで。今はストレートで勝負できて、変化球も投げられる。そのうえで駆け引きをするような感覚ですよね。変化球だけじゃ、駆け引きも通用しないです」
──大沢さんの読みでは、距離の遠い選手は淘汰されていくということでしょうか。
「遠い距離で大きいパンチが多い選手を相手は、疲れます。最初は攻めることができても、距離を詰めてドンドン殴らせればバテます。長い距離で振るのは、もう得策ではないと思います。
オリヴェイラの試合を見ていると、同じライト級でもトニー・ファーガソンとか長い距離で出入りして戦ってきた選手は、これから成績を残し辛くなってくるんじゃないかと思います」
──そのように戦ってポイエーを攻略したチャンピオンのオリヴェイラ。次は誰と戦うところが見てみたいですか。
「ジャスティン・ゲイジーは面白くなるでしょうね。近い距離を振れて、全然怖がらないからオリヴェイラに寝技まで行かせないような気がします。ゲイジーに対して、今回のようにオリヴェイラが戦っても、どんどん入ってきて逆に疲れさせられるんじゃないですかね」
──ただオリヴェイラには引き込める強さがあります。
「オリヴェイラのスタイルって新しいけど、古い（笑）」
──昔からある寝技の精度が異様に高いです。
「しかも組みの感じが柔術家で。レスリングにサブミッションがあるんじゃなくて、完全に柔術家。見ていて、凄く楽しいです。オモプラッタでめくったり、MMAでなかなかできないですよ。選択肢が多いです。
アッ、でも今までの話は何だったんだってなりますけど、イスラム・マカチェフとかと戦うとどなるのかって。テイクダウンを狙うから、組み技と寝技の対決になるのか。なら、ここまでの話は関係ねぇじゃんみたいな（笑）」
──アハハハハ。いや、でもそれがMMAですし。
「あと1、2年経つとまた流れが変わるんでしょうね。その流れを誰が創るのか」
──接近戦の次はどのようなMMAの潮流が見られるようになるのか、ですね。
「接近戦で勝てるなんて思い始めたのは、1年前ぐらいなんです。コロナ禍で後半バテてスタミナ合戦になり始めた。それで技術よりも、相手を疲れさせたほうが勝てるなっていう風に考えるようになって。圧で相手をバテさせる。技術より戦略でMMAを戦うようになり、接近戦になってきた。
こういう選手に勝つのは組んで抑えることができるヤツ。でもソイツらは距離の長い選手が苦手で。そうなると、もうジャンケンですよね。
ムエタイのムエマッド、ムエカオ、フィ―ムーのようにMMAもスタイルが分かれてきて、ジャンケン状態になってくるかと」
──防御力が上がり続けた結果、最後はグレコローマンか相撲になるかもしれないですね（笑）。
「アハハハハ。面白いッスね。それ（笑）」
