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【WJJC2021】NYに戻って3カ月、嶋田裕太─01─「ユータは強くなる」マルセリーニョとの絆

【写真】NYで結ばれた師弟関係(C)YUTA SHIMADA

9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われる。

2年振りの開催されるムンジアルに黒帯ライトフェザー級にNYに戻って3カ月が過ぎた嶋田裕太が出場する。2019年に5年の予定でNYに移り住んだ嶋田だが、コロナパンデミックという運命のいたずらに左右され昨年4月に帰国。1年5カ月ぶりにNY、MGでの生活を再開させた彼に、盟友ジアニ・グリッポの不在という現実が待ち構えていた。

それでもMGでの稽古に励む嶋田が、身も心もMGの一員となった背景には、マルセリーニョ・ガウッシアの言葉と人間性に触れたという事実が存在していた。


──NYに戻って3カ月、ムンジアルが今週末に迫ってきました。9月の渡米以降、充実した日々を送ることができていますか。

「1日、3クラス、4クラスに出てタイトに練習してきました。3週間前に1年9カ月ぶりに試合に出て、体重もそのままキープできています。ライトフェザー級まで体重を落としたのが2019年のムンジアル以来だったんですよ。日本にいる間は特に大きくなっていたのですが、2カ月ほどでライトフェザー級の体重を創れました。

体重が大丈夫ということで、練習に集中して取り組めているので、体調的にも精神的にも充実している感じです」

──NYにいることが、自分の人生なんだということでしょうか。

「う~ん、思っていた通りで──自分に一番足りなかったのは練習量なんですよね。これは2年前に来た時も感じていたのですが、日本でも自分のなかではやれるだけやって、体力的にも限界に近いことをやっていたとしても、NYに来て指導をしないで自分のための練習をしていると、練習量は倍ぐらい増えます。結果、自分の成長を凄く感じることできました。

今回もNYに来て3カ月だったのですが、週に5日、土曜日は2週間に1度の練習で20クラスぐらいは出ているので練習量の違いは明白です。いわゆるコンペティション的な練習はパンデミックを経て、減っています。そういう意味では2年前よりも強度は落ちて、ボコられる時間が減ったので、練習量を確保できるようになったんです。そこは前回との一番の違いです」

──強度が弱くなったことは、良いように捉えて良いのでしょうか。

「う~ん、まずジアニ・グリッポが今はいません」

──嶋田選手の一番の練習仲間だったじゃないですか!!

「ジアニは今もニュージャージーに住んでいるのですが、自分自身の練習コミュニティを創ったんです。僕もジアニに誘ってもらって2度ほど、練習に参加したこともあります」

──2度だけというのは?

「それは来た当初だったのですが、ミヤオ兄弟が2人揃っていたり、凄くレベルは高いです。ジアニはスタイル的にもマルセリーニョより、ああいうスタイルの方が良いのでしょうね。正直、ジアニがMGの練習に出ていないのは大きな誤算でした。まぁジアニは僕にも練習に誘ってくれるのですが、マルセリーニョとジアニの仲が微妙で……。それで僕はマルセリーニョと練習することを選択したんです」

──難しい判断ですね。

「2003年にアリアンシがBRASAと分裂した時、マルセリーニョだけがファービオ・グージェウの下に残ったじゃないですか」

──ハイ。ヴィエイラ兄弟、コンプリード、ジャカレ、テレレ、ガルヴァォン、テレス、主だった選手は皆アリアンシを抜け、残ったのはマルセリーニョとタルシス・フンフェリーだけだったと記憶しています。

「ただタルシスは、昼はBRASAで練習していたらしくて、本当の意味でファービオから離れなかったのはマルセリーニョだけだったんです。その時の話を今回してくれて。夜になるまで練習仲間がいなかったそうなんです。『そういう状況でもチャンピオンになれたし、ユータはこのアカデミーだけで練習していても十分に強くなれる』と言ってくれたんです」

──それは……ホロリと来ますね。

「僕も感動しました。マルセリーニョが、アカデミーの生徒に厳しいのって今に始まったことじゃないんです。先生を大切にして、アカデミーに忠誠心を持つ。それがマルセリーニョの原点だったんだなって、改めて理解できたというか……分かったような気がしました。その時にマルセリーニョが話してくれたなかで、『トーナメント前にキャンプに行く人間の気が知れない』という言葉も凄く心に刺さったんです」

──それはつまりムンジアル前などのアリアンシのキャンプですね。

「ハイ。マルセリーニョも1度参加したらしくて、それを『二度とやらない』と凄く後悔しているんです。その理由はトーナメント直前に優勝を狙う選手が、ガンガンとぶつかり合うのは良くないという現役としての考えもあるのですが、何よりも大きな理由があったんです」

──それは?

「マルセリーニョも既にNYにアカデミーを開いていて、自分が指導しているアカデミーの教え子も試合に出るのに、彼らを放っておいて自分のためにキャンプするのはおかしいっていうことで。生徒をおきざりにして、普段と違うメンバーと練習するなんて許されることじゃないと……」

──バシバシ、突き刺さりますね。話してくれているのがマルセリーニョなら。

「ハイ……そうなんです。試合が終わってからも、すぐにアカデミーに戻って練習しないといけないとも言っていました。それは試合で犯したエラーを確認するためではなくて、自分の練習相手になってくれた人たちの練習相手になるために、練習に戻らないといけないんだって」

──いやぁ、それこそアカデミーの姿なのでしょうね。

「そういう話をマルセリーニョと10月に入る前後にして、そこからはもうMGでしか練習してないです。もともとマルセリーニョと練習したいからNYまで来て、ジアニとの練習を選択することはないですよね(笑)」

──身も心もMGの一員ですね。今回、嶋田選手はアリアンシのメンバーで、アリアンシ・インターナショナルではないですね。

「トーナメントではアリアンシ系の選手は2名まではアリアンシ所属になり、そこに入らない選手はアリアンシ・インターナショナルになります。判断はファービオなんでしょうけど、今回はライトフェザー級には僕ともう1人だけのエントリーなので自動的にアリアンシになっただけだと思います(笑)」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
12月9日(金・日本時間)~13日(月・同)
午前2時30分~Flo Grappling

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