この星の格闘技を追いかける

【Pancrase324】空手、陸上、ウェイトリフティング。万能アスリート=透暉鷹─01─「妻への恩返し」

【写真】振り返れば波乱万丈、こういう話を知るとガンバレと思うのが心情です。もちろん内村選手にも同じように人生があり、ガンバレとなるのも心情で (C)MMAPLANET

17日(日)、東京都江東区のスタジオコーストで開催されるPancrase324で、フェザー級8位の透暉鷹が初代ZSTウェルター級王者の内村洋次郎と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年10月に田中半蔵を判定で破り、注目を集める存在となった透暉鷹だが、今年5月のRyo戦では試合時間残り1秒、ギロチンで絞め落とされてしまった。修斗新人王からパンクラシストへ。痛い敗北からの復帰戦となる透暉鷹に、これまでのキャリアを振り返ってもらうと──そこには青春ストーリーが溢れていた。


――試合を1週間後に控えてのインタビューとなりますが、現在のコンディションはいかがですか。

「もう追い込みは終わって、今は体重調整と疲労を抜いている段階です。今までどおり、良い練習ができたと思います」

――今回MMAPLANET初登場ということで、これまでのキャリアからお聞きしたいと思います。まずMMAを始めたキッカケから教えていただけますか。

「高校の時、ウェイトリフティング部に所属していたんですけど、当時の顧問の先生がキッカケですね。いま所属している石綱MMAの林拓馬代表が、先生の大学時代の後輩だったんです」

――その先生に、林代表を紹介してもらったのですか。

「はい。ウェイトリフティング部にボディビルをやりたいという部員がいて、ボディビルをやっていた僕の父のところに、先生が相談に来たんです。ちょうど僕が格闘技をやりたいと思っていたところで、いろいろ話をしていくうちに林代表を紹介していただきました」

――それは高校卒業後のお話なのでしょうか。

「いえ、20歳の冬ですね。……僕、高校は1年生で辞めているんですよ」

――えっ!?

「高校は、陸上のスポーツ推薦で四日市工業に進学していたのですが……。小学5年生から陸上――100メートル走をやっていたんですけど、夏休みに陸上部を辞めてしまったんです。顧問の先生と折り合いが悪くて。でもスポーツ推薦だから、高校に残るためには何か部活に入っていないといけない。そんな時に、ウェイトリフティング部から誘われました。四日市工業は、ウェイトリフティング部も強かったんです」

――てっきり、ボディビルをやっていたお父さんの影響で、ウェイトリフティングを始められたのかと思いました。ウェイトリフティング部の先生が、透暉鷹選手を入部させた理由はご存じですか。

「先生から聞いていたのは、100メートル走で見た瞬発力が、ウェイトリフティングに向いているんじゃないかと思ったそうです。それでいて、砲丸投げの選手のような体つきをしていたので」

――なるほど……。透暉鷹選手の公式サイトには、「15歳で180キロ荷重フルスクワットをこなす」と書かれていますが、それもウェイトリフティングを始めて数カ月のお話なのでしょうか。

「はい。当時、僕の体重は74キロぐらいだったんですが、その体重だと120~130キロぐらいが普通だと思うんですよね。それで僕が180キロを挙げていたので、みんな驚いていました(笑)」

――ウェイトリフティングの大会結果などは……。

「東海総体(東海高校総合体育大会)で優勝しました。でも全国大会の前に部活へ行かなくなってしまったんです。結果、1年で高校も辞めることになって――。当時、周りに学校を辞める人が多くて、僕も周りに影響されちゃったんですよね。朝まで遊んで、そのまま寝て学校に行かなくなったり」

――……。

「いま振り返ると、学校を辞めていなかったら格闘技を始めていなかったと思いますし、良かったとは思います。いま考えると――ですけど。それで20歳の冬に、ウェイトリフティング部の顧問の先生が父のところに来たんです」

――その時「ちょうど格闘技をやりたかった」とのことですが、その理由は何だったのでしょうか。

「もともと小1から小5まで空手をやっていたんです。日本空手協会の大会で、全日本3位になったこともありました」

――空手で全日本3位、100メートル走で県大会優勝、そしてウェイトリフティングで東海総体優勝とは……すごい身体能力の高さですね。

「それぐらい、ずっとスポーツばっかりやっていました(笑)。なのに高校を辞めたら毎日、仕事に行って、遊んで、また仕事に行って――の繰り返しで刺激がなかった。このまま人生終わるのは嫌だなと思って、また格闘技をやってみようと考えたんです。

スポーツばかりやっていたから、その反動で遊んで。また遊んでばかりいたから、その反動でスポーツをやりたくなって(笑)」

――アハハハ、でも結局は元の場所に戻るといいますか。そこで、なぜMMAを選んだのでしょうか。

「それが、実はキックボクシングをやりたいと思っていたんです。でも林代表を紹介してもらって、ジムに行って練習していたら、気づけば寝技もやっていました(笑)」

――……どういうことですか!?

「当時、MMAといえばアウトサイダーしかないと思っていました(笑)。でも、アウトサイダーに出るのは難しいから、キックボクシングをやろうと考えたんですよね。昔からテレビで格闘技を見たことも、そんなになくて。アウトサイダーはDVDで見たことがありました」

――そのような思考で始めたMMA、当初の目標は何だったのでしょうか。

「格闘技をやるために三重県から愛知県へ行った時、自分ひとりではなく、彼女も一緒に来てくれたんですよ。当時は僕も練習、バイト、練習という生活で、そんなにお金がなくて。そんな僕を、彼女がずっと支えてくれていました。ずっと仕事を頑張ってくれて……そんな彼女に恩返しがしたい。そう思いながら練習していました」

――ちなみに、その女性とは今……。

「結婚して、5カ月になる子どももいます(笑)」

――おぉっ!!

「夜に僕が練習に行って、なかなか時間も合わずに喧嘩したこともありました。でも格闘技を続けていくうえで、彼女に恩返ししたいという気持ちは、どんどん大きくなって……。まだ全然、何も返せていません。だから今も僕のモチベーションの一つは、妻への恩返しなんです」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
10月17日
午後1時00分~ TIGET LIVE
午後1時00分~ ABEMA PPV ONLINE LIVE

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