【Pancrase350】ウルルとの防衛戦延期の前に透暉鷹が語っていたこと「不安がないと強くはなれない」
【写真】残念ながら復帰戦は延期に。しかし今後が楽しみになる透暉鷹の言葉だった ※写真は今年1月、2階級制覇の翌月のもの(C)SHOJIRO KAMEIKE
15日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるPancrase350で、透暉鷹がキルギスのカリベク・アルジクル・ウルルを挑戦者に迎え、バンタム級KOPの初防衛戦を行う予定だった。しかし8日(日)、タイトルマッチの延期が発表されている。
Text by Shojiro Kameike
パンクラスからのリリースによれば透暉鷹は練習中に右足首の靭帯損傷、ならびに骨にヒビが入っており全治1カ月と診断されたという。対するウルルもまた、レスリングの練習中に肩を痛めたとのことで、このタイトルマッチは延期される形となった。
MMAPLANETでは11月15日、透暉鷹にインタビューを行っている。この時透暉鷹はRTUでの敗北、セコンドである日沖発stArt代表の発言について、何よりウルル戦への意気込み――ウルルとの防衛戦こそ延期となったものの、そんな彼の想いを掲載したい。
チィルイイースー戦では、相手の顔つきが違っていた
――RTU2024、バンタム級準決勝でチィルイイースー・バールガンに敗れてから約3カ月が経ちました。セコンドを務めた日沖発stArt代表に、チィルイイースー戦の敗北について訊いたインタビューは読んでいただいていますか。
「はい、もちろんです」
――では日沖代表の言葉に関して、率直な感想を教えてください。
「まず日沖さんの言葉は信頼関係が存在しているからこその言葉だと思っていますし、『ありがたい』の一言に尽きます」
――日沖代表によれば、RTU直後に透暉鷹選手とミーティングの機会を持ったということでした。日沖代表は「本人でも所属ジムの人間でもないので、なかなか言えないこともある」とのことでした。ここで透暉鷹選手から、どのような話をしたのか聞かせていただけますか。
「一番は今後どこで、どうやっていくかという話ですね。どこのケージであろうと、強い相手と対戦していくことは変わらないです。またRoad to UFCを目指すために、自分も力をつけていかないといけない。そこで日沖さんから言われたのは――『準決勝で負けた選手は今年2試合、バンタム級で良い勝ち方をしないと、来年は出られないと思ったほうが良い』ということでした」
――来年からRTUには豪州も加わってくるという噂もあります。そうなると日本人選手枠は、ますます少なくなっていくでしょう。
「……そう言われた時は、僕の中では階級の問題も含めて、まだ気持ちが落ち着いていませんでした。だからまず一度、米国に行こうと思ったんです。とにかく何か変わるキッカケが欲しくて。
チィルイイースー戦では、相手の顔つきが日本人選手とは違っていることに気づきました。『勝って人生を変える!』というハングリー精神みたいなものが伝わってきて。そういう選手たちと比べたら僕なんて――そういう気持ちが全然足りなかった。米国へ行ったあとに決まった試合ですけど、ウルル選手もそういう気持ちで練習しているはずなんですよ」
――……。
「そこで2週間ほどアリゾナのファイト・レディに行ってきました。RTUの試合が終わって2週間後ぐらいに、また米国へ。ファイトレディにいるのはUFCファイターばかりで、練習に対する意識も違っていて。そこから帰国したのが10月1日あたりだったと思います」
――正直なところ、これまで倒したことのある日本人選手を相手に防衛戦を行っても、RTUに繋がるほどの評価を得られるとは考えにくいです。
「対戦相手については考えました。誰に勝てばRTUに繋がるのか。自分の気持ちも、そこに向けられるような相手を考えると、やっぱり外国人選手にはなります。これからUFC、RTUを目指すなら、そんな相手と12月にやっておきたいと思いました」
――ウルルを相手にベルトの防衛戦、という試合は透暉鷹選手から希望したのでしょうか。
「RTUが終わってからパンクラスさんと話をしたんですよ。その時に『ウルルはいつでも試合ができる、と言っている』と聞いて。僕も12月にウルルと防衛戦をやるのが一番良いと思いました」
――同時に、なぜチィルイイースー戦で敗れたのか。技術的な見直しも並行してやっていかなければいけないので難しい、と日沖代表は言っていました。
「記事だと、バックエスケープの話ですよね(苦笑)。確かに自分はバックエスケープが得意でも、相手のほうがバックテイクやバックキープが強かった場合、相手のほうが楽な場面にもなります。日本でも久米鷹介さんと練習している時、一度バックを取らせてから息を整えようとしたら、そのまま持ち上げられたり、テイクダウンされてしまうんですよ。
そういう場合は、押し込まれている時に休むのではない。自分から形を取りに行って、倒してからハーフやバックを取ってから息を整えて削り続ける。そういう練習をしないといけない、と日沖さんからも言われました。だからバックエスケープは最終手段として持っておくとして、他の方法もしっかり練習してきています」
不安があるから練習する。今の自分と向き合わなければ、強くはなれない
――自身と同じ強みを持っているチィルイイースーに敗れた。それは今まで、国内では経験したことのなかった展開だったと思います。
「あの試合は……2R目にテイクダウンして相手に立たれた時、自分が休んでしまったんですよ。そこで『1Rは取っているから2Rめは休んで、3Rめに勝負をかけよう』と考えました。そんな考えでいると、今後もどんどん勝てなくなってしまいますよね。
試合後、日沖さんから『逆の立場なら、自分だったらどうする?』と訊かれました。1Rと2Rを取り合った場合、相手も3Rめは絶対取りに来る。2Rを有利に終えていたほうがインターバルで息も整えられるし、2Rの内容を3Rに生かすことができる。そんな展開のなか、僕は2Rめに消極的な考えになっていて、結局は3Rを相手に取られてしまいました」
――あるいは1Rと2Rを取ってから3Rに臨むほうが、心理的にも優位に立つことができるでしょう。
「国内の試合では、それができていました。1Rと2Rを取っているから、3Rを取りに行ける。自分の場合はそこで極めに行きすぎて、疲れてしまうことがあるんですけど(苦笑)」
――アハハハ。しかし、疲れても取られなければ、2Rまでの貯金が生きます。
「はい。そのあたりの力加減も考えなければいけないところではあるけど、やっぱり国内の試合とは違いますよね。だから米国で強い選手と『競る練習』ができたことも大きいです。試合形式で、緊張感も違いましたし。そのなかでメンタルも鍛えられました」
――RTUを目指すなら、強い相手に勝っていかないといけない。しかし強い相手だと星を落とすリスクもあります。
「強い相手だからこそ良いんです。『ここで負けたら、もうUFCには行けないな』という気持ちで毎日を過ごさないと。そのためには強い相手と対戦しなきゃいけないんですよ。負けたら――という不安があったほうが、今は良い感じで毎日を過ごすことができています」
――なるほど。
「不安があるから練習する。いろんなことに取り組む。普段の食事から変わってくる。ちゃんと今の自分と向き合わなければ、強くはなれないですから。
それだけウルル選手は強い相手だと思います。映像を視て対策を考えようとしても、彼はオールラウンダーなんですよね。打撃が強いのはもちろん、下になっても足が利いて、極めることもできるファイターで。技術は多彩だし、フィジカルは強い。その相手に勝つためには、自分も一つひとつの要素が強くないと、対策しようがないじゃないですか」
――まさに日沖さんが仰っている「まず自分自身を見ないといけない」ということでしょうか。
「強い相手で不安があるからこそ、相手を通して自分のことを見つめ直す。もちろんウルル対策も練習します。だけどウルル云々よりも、自分の中で全体的なレベルアップを目指しています。
チィルイイースー戦のように、1Rは取ったから――なんて考え方をしていると、今後はどんどん勝てなくなる。勝つために、より強くなる練習に取り組めなくなってしまう。最初にチィルイイースーの右を食らってしまった。だから右を食らわない練習をする。そうやって一つひとつ、技術的に伸びていくように考えないといけないですよね」
――ここでウルルに勝てば、来年のRTUに繋がると考えていますか。
「……それは分からないです。正直、最初は自分も『ウルルに勝ったらRTUに行けるかな?』とは考えました。でも今はウルル選手に勝つことで精いっぱいです。その先のことは、あまり考えていません。今はただ、ウルル選手に勝つことだけに集中しています」
■Pancrase350視聴方法(予定)
12月15日(日)
午後12時00分~U-NEXT
■Pancrase350 対戦カード
<バンタム級/5分3R>
田嶋椋(日本)
オタベク・ラジャボフ(タジキスタン)
<フェザー級/5分3R>
名田英平(日本)
栁川唯人(日本)
<ライト級/5分3R>
鈴木悠斗(日本)
小川道的(日本)
<フェザー級/5分3R>
岡田拓真(日本)
敢流(日本)
<フライ級/5分3R>
菅歩夢(日本)
岸田宙大(日本)
<63キロ契約/5分3R>
ギレルメ・ナカガワ(ブラジル)
渡邉泰斗(日本)
<フライ級/5分3R>
砂辺光久(日本)
時田隆成(日本)
■Pancrase351視聴方法(予定)
12月15日(日)
午後16時50分~U-NEXT
■Pancrase351 対戦カード
<フェザー級KOP決定戦/5分3R>
平田直樹(日本)
三宅輝砂(日本)
<フライ級/5分3R>
猿飛流(日本)
ジョセフ・カマチョ(グアム)
<ストロー級/5分3R>
寺岡拓永(日本)
船田電池(日本)
<65キロ契約/5分3R>
合島大樹(日本)
安藤武尊(日本)
<ストロー級/5分3R>
リトル(日本)
織部修也(日本)
<ライト級/5分3R>
平信一(日本)
張豊(日本)
<フライ級/5分3R>
水戸邉荘大(日本)
小林了平(日本)