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【Shooto2021#06】石井逸人と防衛戦、安藤達也─02─「山ってホントそうなんです。準備8割、実行2割」

【写真】かつての師からSNSで「今そて……」という反応をされてしまったが、確かに気付いたからといって直後にケージのなかで成果が表れるものではない。それでも、気付いたことを大切にしてMMAファイター人生を過ごして欲しい(C)KEISUKE TAKAZAWA

9月20日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2021#06で、石井逸人を相手に修斗環太平洋バンタム級王座の防衛線を行う、安藤達也のインタビュー後編。
TEXT by Shojro Kameike

7月末から約1カ月、安藤は米国サクラメントのチーム・アルファメールで、どのような練習を行ってきたのか。大塚隆史に負けたことで気づき、サクラメントで改めさせられた自身の格闘技観――。かつて練習を共にしていた石井との試合で、安藤は新しい自分を見せつけようとしている。

<安藤達也インタビューPart.01はコチラから>


――アルファメールでは、どのような練習を行ってきたのですか。

「多いときは1日2~3回ぐらい練習がありました。午前9時30分からプロ練習、それが終わるとフィジカルトレーニングがあって、夜は寝技のクラスに出るというスケジュールが週2日ぐらいありましたね。1週間の中で、水曜日がヤマなんですよ」

――ヤマ、というと?

「水曜日は1日1コマだけ、ガチスパーをやるんです。1週間やってきたことをスパーで試す。そんな感じで、週6日練習して1日だけ休むというスケジュールですね。アルファメールの練習がない日は、他のジムの練習に参加したりしていたので、サクラメントにいる間に休んだのは2日だけでしたけど……」

――練習漬けの毎日で気づくことはありましたか。

「はい。自分ができないこと、これはヤバいなと思ったこともあったんですよ。水曜日のスパーの前に、トレーニングの一環で(石原)夜叉坊や川原選手と水泳に行ったら、みんな、ガンガン――無酸素で25メートルの潜水ができたり、無酸素でクロールもこなしていて。僕は最初、みんなと比べて半分の距離しかできずに、『これはヤバいな』と思いました」

――それまで水泳や無酸素の運動には自信があったのですか。

「僕、子供の頃は毎日、市民プールで泳いでいたんですよ。プールの人に顔を覚えられるぐらい(笑)。大学の授業でも3時間の遠泳があったので、ガンガン泳いでいました。なのに、夜叉坊や川原選手についていくことができなくて。そういうところから考えを変えさせられましたね」

――それだけハードな練習をこなしてきたとのことですが、大塚戦で負傷した足の具合は良くなっているのでしょうか。

「だいぶ良くなりました。大塚戦後は3カ月ぐらい何もせず、だいぶ良くなってきてから山登りもできるようになりましたし」

――山登り……?

「そうなんですよ。最近はトレーニングで山を登ったり、走ったりしています。東京だと奥多摩の山とかですね。東京以外でも、朝4時に出発して、6時に現地へ着いて登り始めたりするんです」

――山の話から、嬉しそうに声のトーンが上がりましたね(笑)。

「楽しいですよ(笑)。『準備8割、実行2割』っていう言葉があるじゃないですか」

――仕事が成功するかどうかは80パーセント、準備の段階で決まるという意味の言葉ですね。

「山ってホントそうなんですよ。水の量や荷物の量を事前に全部計算して準備する。準備できていなくても、あるいは余計な荷物があっても登る時にキツくなりますから」

――それは全てにおいて当てはまることですよね。もちろん、格闘技でも。

「……ずっと勝っていたから、自分では分からなかったんですよ。オレの練習スタイルはこんな感じって、自分で勝手に決めていた。でもそんなのは幻想で、負けた瞬間に崩れ去りました。勝利すること、勝利に向けて頑張るところに生き様が出ますよね。格闘技って、自分の生き様がモロに出るから。次の試合では、その生き様を見せたいと思います」

――次の試合……環太平洋チャンピオンシップで、石井逸人選手を迎え撃ちます。

「以前、石井選手とは練習していたんですよ。その時から『そのうち安藤選手と試合するかもしれないけど、今は一緒に練習させていただきます』と言ってきて、良いヤツだなと思いました(笑)。それでインフィニティ・リーグで優勝したとき、僕と試合がしたいと言っていたので、改めて対戦相手として考えた感じですね」

――なるほど。では、対戦相手としての印象を教えてください。

「インフィニティでは優勝したけど、引き分けが2試合あったじゃないですか。引き分けはダメですよ。『これはどうかな?』と思うような判定もあったし。試合はハッキリ件着をつけることは必須ですから」

――安藤選手自身、岡田遼選手との世界チャンピオンシップ(2019年9月)がドローで終わった時にSNSで、「結果を他人に託した時点で俺の負け」とコメントしていました。

「そうなんです。僕も岡田戦で、そう感じました。あの試合は自分が1Rと2Rを取ったと思うし、3Rも良かったんじゃないかと。それに最後は自分のほうが印象も良かったと、正直そう思っています。でも、それも言い訳でしかないので、次はハッキリと勝ちますよ」

――そう思えるような練習を、アルファメールで積んできたのですね。

「間違いなく石井選手より、チャド・メンデスのほうが強いじゃないですか」

――……どういうことですか。

「そういう選手と練習してきて、自分が負ける気はしないんです。もし負けるとしたら、それは自分自身に負けた時。調整に失敗した時とか。試合までもう少し日にちがあるので、最後まで――ゴングが鳴るまで、気を抜かないように。今回は3Rフルで戦う気持ちでいます」

――今回は環太平洋王座の防衛戦です。ベルトを守った後のことは考えていますか。

「僕としては、岡田選手にリベンジしたいです。借りを返してから、ONEかUFC――海外で戦いたいですね」

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