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【A View of Dominator】弥益ドミネーター聡のドミネイター論─01─ドミニク・クルーズ✖ケイシー・ケニー

【写真】ドミニク・クルーズLOVEといえば水垣偉弥、大宮司岳彦、そして弥益ドミネーター聡志。いわば今回はドミネイトできていない試合なので、特別編ということになる (C)Zuffa/UFC

MMAには様々な勝ち方がある。完勝といえば、秒殺KOであったり、一本勝ちを指すのかもしれない。その一方で、完封勝利──一方的に試合を支配するのもMMAにおける完勝劇の一つであることは間違いない。

MMAPLANETでは弥益ドミネーター聡志による、完全支配マッチを振り返ってもらう新規格、A view of Dominatorをスタート。

第1回はいきなり企画の主旨から外れるが、ドミニク・ドミネイター・クルーズが3月6日に戦ったケイシー・ケニー戦を弥益に解説してもらった。


──勝手ながらMMAPLANETにおけるドミネイター解説員として、試合を思い切りドミネイトした選手について語ってもらうという新企画。今回は決してドミネイトしていないですが、第1回ということでドミニク・ドミネイター・クルーズのケイシー・ケニー戦について、ドミネーターの話をお伺いしたいと思います。事前の予想では、勝てないことも十分にある試合だったかと。

「ケイシー・ケニーの試合をあまりしっかりと見たことがなかったですが、柔道ベースだということは知っていまいした。最近の試合をチェックすると、あくまでも打撃で試合を組み立ています。柔道のスキル、組みの強さをテイクダウンディフェンスに回している選手だという印象が強かったです。

そういうことを考えると、このところテイクダウンがとれていないドミニク・クルーズからすると余計に厳しい相手かと思っていました」

──今の選手は、ドミニクの動きに惑わされずに、自分のやるべきことをやるという姿勢が見られます。もちろん、ケイシー・ケニーもドミニクに惑わされないだろうと。

「そうですね。自分のやりたいことをやっていますしね。それにテイクダウンができても、すぐにスクランブルになる。ドミニクは立たれても、倒す。また立たれても倒す。そうやって削ることが以前はできていたのですが、テイクダウンが取れないと逆に削られる。そういう試合になるかもしれないという気はしていました」

──実際に初回などは、そういう風になりそうな試合展開でした。

「そうですね。いきなりテイクダウンを仕掛けました。何の布石もなく、仕掛けた。あのシーンを見て、圧力負けしているんじゃないかという風に見えました。自分からテイクダウンを取りに行ったのではなく、取りに行かされていた。それは試合全般を通しても、ドミニクが能動的にテイクダウンを取りに行っているシーンはあまり見られなかったです」

──動かされていると?

「ハイ、圧力を掛けられて追い込まれてつい行ってしまうという動きに見えることが凄く多かったです。圧で負けているので、上体が一度起きてからテイクダウンを仕掛けているとか。

もちろんケイシー・ケニーのテイクダウンディフェンスが凄く強いのがあってですが、以前のように相手の反応をワンテンポ遅らせるということができていなかったです」

──それでいて、以前になかった動きも見られました。

「それが新しく採り入れたのか、落ちたからそうなったのか……。試合を通してみて、構えてしまっていた場面も多かったと感じました。オーソでしっかりと構えを取ることが多かった。ケイシー・ケニーのローキックが走っていたので、前足を削られてしまったとところもあります。

連勝していた頃のドミニクって、構えていない時間がもっと多かったです」

──右なのか、左なのか。何が出てくるのか分からないという。

「本人にしか分からない感覚があって、あの戦い方ができていたと思います」

──実際に唯一無二で、同じ戦い方をできる選手は他にいないですしね。

「特化し過ぎて、他に伝えられるモノじゃないのでしょうね」

──その戦いがなかなかできなくなっている……。

「ハイ、今回の試合も流れを掴んでいるのはケイシー・ケニーでした。ドミニクはテイクダウンが取れずに削られていく──まさに、その流れになっていたと思いました。でも、結果としてドミニクが持っていった。

結局……簡単な言葉なんですけど、気持ちの部分なんだと。ドミニクって足を止めての打ち合いができる選手なのに、敢えてあの足を使ってシャッフルと呼ばれる構えを小刻みに変えた戦いをしていたのでしょうね。

楽をするためでなく、勝つために厳しいことを追求してあのスタイルになっていた。結果として、ドミニクのやろうとしていることはキツイことだった。その形が、以前はシャッフルして動きまくってテイクダウンを取るというスタイルでした。

今回の試合は、見た目は変わりました。見ている人への映り方も変わった。でも、ドミニクは勝つために自分にとって一番厳しいことをする。それは同じなんだと……僕は正直、感激してしまいました」

<この項、続く>

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