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【Shooto2020#03】修斗でグラップリング、岩本健汰─02─「極め切る力は柔術ではそれほど大切じゃない」

【写真】実はバキバキ・ボディの岩本。やり込んでいること伝わってくる説得力のある体、だ (C) MMAPLANET

31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 で、世羅智茂とグラップリングマッチを戦う岩本健汰インタビュー後編。

AOKI PROJECTが発動され、青木真也のMMAが打撃に偏りがちな今、グラップリングマッチを組むことでバランスを保ちたいという意向が反映したマッチアップだ。

ただし、岩本はグラップラー。MMAのためではなく、彼はグラップリングを一つの競技として確立させたいという強い想いともに修斗のケージに足を踏み入れる。

プロ修斗のなかでグラップリング寄りの柔術家=世羅と戦う岩本。もはや自らを柔術とは認めず、グラップラーだという認識の下で格闘家として生きる岩本は、この試合でグラップリングの面白さを伝えようという気持ちに溢れていた。

<岩本健汰インタビューPart.01はコチラから>

──グラップリングもMMAも、柔術も同じように楽しんで視聴したいですが、その裏で格闘技としてえげつなさもあります。

「こないだのSUGのクレイグ・ジョーンズ✖ヴィニー・マガリャエスですよね……。あのヒザが壊れたのは、えげつなかったです(苦笑)」

──そういう怖さもグラップリングというスポーツには含まれています。

「そこも含まれてグラップリングですしね。それがグラップリングの醍醐味であるサブミッションで……次の試合でもそのサブミッションという形を見せたいです。サブミッションを取るまでの戦いを。

グラップリングらしさ、良さを見せたいと思って戦ったことは、余りなかったですけど……これまではグラップリングのっことを理解した人が、面白いと感じてくれれば良いという意識だったので。でも、今回の試合はMMAとは違う……打撃がない故の技の美しさを意識しています」

──観客がいないことで、MMAの試合でも画面は静まり返っていて、セコンドの声がしっかりと聞こえる。これは通常の観客を入れたMMAの大会で組まれるグラップリングよりも、ずっと伝わりやすいのではないかと勝手ながら期待しています。

「あぁ、その話を聞くと良いなぁと思えるようになりました(笑)。MMAのファンの人に『動けよ』とか『殴れよ』なんて野次られると、試合に影響が出てしまうかもしれないので」

──いずれは、グラップリングを引っ張る立場として、そういう野次にも岩本選手が平気になるために、今回の試合がステップとなれば良いですね。ところで岩本選手は柔術とグラップリングは別物という説を説いていますが、グラップラーの強さを示す物差しは、未だに柔術の帯です。

「そうですね……」

──岩本選手は今も紫帯ですか?

「僕は一応、茶帯です。でも、連盟とかの登録上は紫帯のままです。IGLOO柔術の山中健也さんに帯を貰ったのですが、連盟に認められた帯ではないです(苦笑)」

──JBJJFでは紫でIGLOOでは茶帯、いかにも岩本選手らしいです(笑)。そして世羅選手は柔術の黒帯です。

「柔術とグラップリングは別競技です。帯の色は意識しないです」

──柔術とグラップリング、どこが一番違うと言えますか。

「ルールにもよりますが、柔術もノーギ柔術がIBJJFにあります。そのルールだとグラップリングでも柔術寄りです。今回のようにサブオンリーになると、柔術があまりやらないところも……サブミッションを確実に取る力や、サブミッションに対する防御力とか、柔術では勝敗の対象として大きな要素になっていない部分が必要になってきます。極め切る力は柔術ではそれほど大切じゃない」

──おお、言い切ってしまいましたね!! 柔術では極める前の段階の技術が必要だと。

「ハイ。だからルールによっても、柔術黒帯でもサブオンリーでは極める力がない人や、エスケープをあまり練習していない人は全然勝てないです。だからルールによるのですが、サブオンリーだと柔術の黒帯だからといって強いとは限らないです」

──今、ムンジアルで優勝できる柔術家で極めが強くない、エスケープ能力が高くない選手など存在するのでしょうか。

「極めがなくても、エスケープの能力が弱くてもムンジアルの世界王者にはなれると思います。サブオンリーになると、できない人でも一番になれます」

──ADCCでも長い間、IBJJFの最高峰ムンジアルで優勝する人が結果を残していた印象がありますが……。

「アブダビもサブオンリーではなく、後半はポイントが入ってきます。でも下になってはいけない。クレイグ・ジョーンズやゴードン・ライアンが勝てるのは、前半はサブオンリーだし、足関節で使える技が多くて、それほどポイントもIBJJF柔術寄りではないからだと思います。ポイントを失わないのもアブダビ流というのがありますし」

──では、サブオンリーだけに今回の試合は負けられないですね。

「そこは本当にそう思っています。僕は世羅選手と違って柔術はやっていない。グラップリングだけをやっています。グラップリングはMMAと違うのと同じように、柔術とも全然違います。おこがましいけど、僕はグラップリングを一つの競技として確立させたいんです。

世羅選手は、多分そういうことは思っていない。柔術とグラップリングの両方を楽しいって感じでやっているはずです。でも僕はグラップリングしかやっていない。グラップリングに全てを賭けています。そういう想いを持っているからには、負けるわけにはいかないです」

──グラップリング専門家は、ほぼいないといっても良い状況です。

「だからこそ、MMAの人が視て、柔術の人も視る次の試合は大切になります。色々な人を巻き込んでいくためにも、グラップリングの面白さを知ってもらいたいです」

■プロ修斗対戦カード

<修斗暫定世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
岡田遼(日本)
倉本一真(日本)

<ライト級/5分3R>
SASUKE(日本)
西浦ウィッキー聡生(日本)

<グラップリング72キロ契約/10分1R>
世羅智茂(日本)
岩本健汰(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
黒部三奈(日本)
大島沙緒里(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
杉本恵(日本)
中村未来(日本)

<バンタム級/5分3R>
清水清隆(日本)
小堀貴広(日本)

<フェザー級/5分3R>
石井逸人(日本)
齋藤翼(日本)

<ライト級/5分2R>
木下タケアキ(日本)
西川大和(日本)

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