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【ADCC2024 Asia&Oceania Trial02】山田海南江、米倉大貴が準優勝も、世界大会出場は岩本健汰一人に

【写真】決して満足できないだろうが。この二つのシルバーこそが今後の日本の組み技界を強くする光明といえるだろう(C)MMAPLANET

11日(土・現地時間)、タイはバンコク郊外ランシット大のスポーツホールでADCCアジア&オセアニア二次予選が行われ、男女8階級で日本人選手の優勝はなく8月の世界大会に日本から出場するのは昨年11月の一次予選77キロ級で優勝した岩本健汰1人となった。
Text by Manabu Takashima

その77キロ級に挑んだ森戸新士は初戦でダニエル・エヴァンズと対戦し、延長ラウンドにRNCで一本負けに。無名のエヴァンズだが、1階級を落としてきたフィジカルとレスリングで森戸を上回る。ノーポイントからの延長戦では押され気味のなかで、森戸はマット外=板の間での攻防が続くと、背中を譲ったことでもフリーズが懸からず、動きに迷いが出たかRNCに切って落とされた。それでも森戸は「若い選手がどんどん出てきます。だから楽しい。これからも挑戦します」と今回の予選を振り返っていた。

同じく77キロ級に挑んだ世羅智茂もまた、初戦でキルギスのマゴメド・ザルバエフに「6分で3Pは挽回できない」と語っていたパスを許し、0-3で敗れた。また世羅のカルペディエム青山の同門=鈴木真は1回戦をヒールでクリアしたものの、足の取り合いによる負傷で無念の棄権となった。

結局、同階級はリーヴァイ・ジョーンズレアリーが同じ豪州のジェレミー・スキナーを決勝で下し、世界大会へ最後の一枠を獲得。レスリングができない――という評判のジョーンズレアリーだったが、序盤のポイントがない時間帯でガードを取り、デラヒバからベリンボロでバック奪取を続け、見事にアジア&オセアニア代表の座を掴んだ。3月のPolarisでジョゼフ・チェンを封じた彼のノーギ柔術が、世界大会でどこまで通用するのか楽しみだ。


昨年11月はオープン・トーナメントで世界大会の切符が掛かっていなかった女子グラップラーの争い。今回は3つの本戦出場権を狙う戦いの中で、55キロ級には日本から3選手が出場し、山田海南江がオープンTの決勝で腕十字を取られた豪州の――普通にワールドクラスの――アデーレ・フォーナリノと再び決勝で相対した。

ウォーリングを2度受けながら、フォーナリノのガードに入らない我慢と勇気が必要な戦いを続けた山田。しかしながら、立ちからの再開となる延長まで残り32秒となったところでテイクダウンを切られ、バックを許しそうになる。このスクランブルの展開のなかで、前方に振り落とされたかのような動きからフォーナリノが、驚速・腕十字を極め山田のリベンジと世界大会出場&世界一という夢は絶たれた。

今回の予選も豪州と並び多数の日本人選手が出場した66キロ級では、前回予選準優勝の竹内稔が2試合目で敗退するなど、シード選手も含め2試合目の壁を破ることができない選手が続出した。その2試合目となった寒河江寿泰戦で、レフェリー判定勝ちを収めた為房虎太郎はジェイコブ・ブルックスを2-0で下すなど、準々決勝進出を果たす。

ここでも中国のシュウ・フアチンと対戦した思い切り投げを決めて先行したが、終盤にRNCを極められ為房は涙をのんだ。そんな66キロ級、シュウ・フアチンと決勝で相対したのが米倉大貴だ。前回予選を4位で終え、このラストチャンスを戦う――のではなく、勝つという意識で挑んだ米倉は、持ち味である足関節を極める武器だけでなく、ルールに合わせてスイープでポイントゲットをするなど、ADCCルールに対応した戦い方でタフなトーナメント枠を勝ち上がってきた。

初戦はヒールで一本勝ちし、ここから魔のカザフスタン勢3連戦を勝ち抜くと、準々決勝とフィジカルモンスター=ジェイムス・サージソン、準決勝で優勝候補の一角デイヴィッド・ストイレスクというフィジカル&テクニックが切れまくる強豪との消耗戦をしっかりとバックを取って生き残った。

そんな米倉だったが、上海武者修行での練習仲間で――あのジョセフ・チェンが将来性に太鼓判を押すシュウ・フアチンに、ここまで成功してきた試みを柔軟かつ強固なディフェンス能力で封じられる。自らは何度かバック&両足フックの危機を脱し、延長Rには逆にバック奪取、ワンフックでRNCまでセットしたもののレフェリー判定でシュウ・フアチンに下った。

豪州、カザフスタン、中国人ウィナーが誕生した二次予選。厳しい結果に終わったものの山田と米倉の準優勝は、アジア&オセアニアの頂点は決して手が届かない場所でないことを立証している。これからの2年、さらに強くなることが予想されるアジア各国の戦いを日本勢が勝ちあがるには、趣味の延長線上で良い柔術、グラップリング界の環境のなかで如何に競技者が生まれるのか、重要になってくる。

今回の予選の名称が「プロ」だったのように、戦う専門家が輝く場所――黒帯、アドバンスドの戦いが、現状より注目を集めるような変化は必要となるだろう。

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