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【ONE】ONE世界フライ級王者ジェヘ・ユースタキオ─01─「ケージかリング? リングが好きだ!!」

Geje【写真】ベルトを肩にかけるユースタキオ。様になっている (C)MMAPLANET

6月23日にマカオで開催されたONE72「Pinnacle of Power」で組まれたONE世界フライ級王座統一戦

正規王者アドリアーノ・モライシュを破った暫定王者ジェヘ・ユースタキオがタイトル統一を果たした。2014年9月に王座決定戦で敗れて以来、3年9カ月ぶりの再戦での判定勝ちは、ユースタキオ自らの成長のみならず所属するチーム・ラカイの成長の証であった。

今年の4月から立ち技部門=スーパーシリーズの導入により、ケージだけでなくリングも使用されるようになったONEにあって、ユースタキオはリング思考の考えを持っていた。


──6月23日にアドリアーノ・モライシュとの王座統一戦を制し、正規王者となりました。おめでとうございます。

「ありがとう」

──接戦でアドリアーノが勝っていたという声も正直なところ少なくありません。ジェヘ自身はどのように思っていますか。

(C)ONE

(C)ONE

「試合が終わった直後は、自分がベストを尽くしたことにまず満足していたんだ。これまでのキャリアで一番のパフォーマンスだったと思う。そして判定勝ちできたと確信していたよ。

僕の方がミキーニョにダメージを与えていた。テイクダウンされても立ち上がっていたし、上を取ってパウンドを落としたのは僕の方だった。スタンドでも僕のヒット数の方がミキーニョを上回っていた。ポイント的に僕が勝っていたよ」

──その結果の王座統一だったと。ところでラカイのベースは散打ですが、このところその特色を殺さず、本当にMMAに良さを生かせるようになっていませんか。

「バギオには柔術の黒帯はいない。そして、黒帯のいるマニラに行くには6、7時間も掛かる。オリンピック・レスラーもここにはいない。散打とムエタイのトップアスリートはいても、レスリングとグラップリングを高いクオリティで使える人間はいなかったんだ。

そういうなかで、全てをチーム単位で行動していることが良かったんだと思う。ラカイはファミリーだ。全てのテクニックを皆でシェアしている。2011年にONEチャンピオンシップが活動を始め、それからの7年間でチームがこなしてきた1試合、1試合がラカイ全員の経験になっている。

本当に学ぶべきことが多かった。そのたびに全員で、知識を共有してきた。その結果、レスリングも柔術も上達した。それが6年間の実戦経験、練習の成果なんだ」

──ケージレスリングという部分で、その成果が十分に見られるのですが、先日の王座統一戦はリングが使用されました。スーパーシリーズが開始したことで、リングとケージが併用されることになります。

「多くのMMAプレイヤーが、リングの試合を嫌っていることは知っている。彼らはケージで勝つために練習をしてきているわけだからね。ただし、僕らはリングで試合をすることは問題ないよ。ばかりか僕に関していうと、大歓歓迎さ(笑)」

──それは意外です。必死でケージにアジャストしてきたのに。

「だってさ、アジャストするってことはリングで戦ってきたからじゃないか。僕がマーシャルアーツを始めてから、ずっとリングがホームだった。

そしてケージとリング、どちらで戦いたいかと尋ねられたら、今でも『リングだ』って断言できるよ。僕はリングで16年間も戦ってきたんだから。それからケージで6年戦った。リングで戦うことは全く問題にならない。今の選手たちはリングで戦ったことがないケースもあるから、僕にとっては有利じゃないか。リングで戦う? 『レッツゴー』だよ(笑)」

──アドバンテージがあるわけですね。

「イエス、イエス、イエス。アドリアーノのようなグラップラーはケージで戦うことが、圧倒的に有利に働く。あの試合もリングで戦うことができて、良かったよ(笑)。試合前から、『これでテイクダウンされ難くなる』という希望は持っていた。

多くのストライカーはケージより、リングで戦いたいと思っているんじゃないかな。確かにケージレスリングに関して、防御ともにテクニックの習得にはとても時間が掛かった。チームの皆で必死になって練習してきたよ。

だからって、その努力が無駄になるなんて思っていないし、リングの方が勝ちやすくなるんだから、それにこしたことはないじゃないか? ケージでの試合は、ケージに適した戦いをする。そのうえで、リングで戦えるなら本当にハッピーだよ。

6月の世界戦でも、リングに上がった時は『戻ってきたんだ』っていう気持ちになった。階段を3歩で昇り、ロープを潜ってリングに足を踏み入れる……ホーム・スウィート・ホームさ。戻ってきた、ディス・イズ・マイ・ホーム──そういう感覚だったよ。

繰り返すけど、ケージでもリングでもどっちでも戦えるよ。でも、どちらかを選べるなら僕はリングを選択する」

──なるほどぉ、そこまでなのですね。では、そのリングで行われたフライ級マッチ、リース・マクラーレンと和田竜光選手の試合ですが、日本フライ級最強の一人である和田選手の敗北に日本のMMA関係者はショックを受けていました。

「ワダはどう考えても強い。どっちが勝っていても、おかしくない試合だった。どちらかを勝者に選べと言われると、僕はマクラーレンだったと思う。ただし、他の人がワダだと思っていても、それも間違いじゃない。ワダが勝者でも問題のない接戦だったから。

マクラーレンが勝った。そして、ワダも強かった。そういう試合だったよ」

<この項、続く

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