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【Special】月刊、青木真也のこの一番:8月編─その壱─ウッドリー×マイア「信じてやっているのは組み技」

Shinya Aoki【写真】川名雄生にボディロックからのテイクダウン方法をアドバイスする青木。いや、細すぎないか!!(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ──作業の都合でかなり遅くなってしまいましたが──8月の一戦=その壱は、前回の取材移行に行われた7月30日、UFC214からUFC世界ウェルター級選手権試合タイロン・ウッドリー×デミアン・マイア戦を語らおう。

昨日、発表された11月24日のベン・アスクレン戦のオファーは今回の取材の時点(※8月28日)では届いてなかったが、青木が話したマイア×ウッドリーを含める3試合+αの内容からも、彼がなぜアスクレン戦を固辞することがなかったのか、十分に考察できるだろう。


──8月のMMA、まずはどの試合を挙げられますか。

「7月の終わりでしたけど、マイア×ウッドリーの世界戦ですね。マイアは良い時期にチャンピオンシップが巡って来なかった。一番良い時に挑戦できなかった。巡り合わせ、それに尽きるかと思います」

──マイアがすべき試合ができなかった。できていれば巡り合わせが良かったということになるのですが、とにかくウッドリーが徹底して組み技を切り続けた試合でした。

「もともとディフェンシブになれば、徹底的にディフェンシブになれる選手で、ローリー・マクドナルド戦とかジェイク・シールズ戦はそれで負けている。勝負に徹することができるスーパーアスリートだと思います、タイロン・ウッドリーは」

──北米MMAの根本、打撃戦に応じず組みを狙う選手は、そこを切られると打撃を出す選手に判定で勝てない。そういう判定結果だと思います。ウッドリーにしても、テイクダウンを奪ったり、何か攻勢であったのではなくマイアの組みを切って、パンチを当てたという攻防に終始したので。

「まぁ、引き分けって言っちゃ引き分けなんですけど、もう北米MMAの勝ち方についての論議はギルバート・メレンデス×青木真也まで遡ります(笑)。バーリトゥードでなく、MMAだとああなっちゃいますよね」

──その北米MMAでマイアはシングルやダブルを上達させて、または引き込んでハーフからワキを差してリバーサルに持ち込むという展開を作り、そこから北米MMAの象徴であるスクランブルでバックを制するという勝利のパターンを構築してきました。

「タイロン・ウッドリーは、元々がその組みを切る人。レスラーですからね。餅屋は餅屋だった。そういう話になってしまうんです。強いレスラーは防御能力も高い。だから、打撃が弱いとみられるマイアですけど、組みを許さないウッドリーのようなファイターの方が相性が悪いということ。相性の問題です。

マイアは僕と同じで、相性が出やすいタイプの選手。そして、今回は良くない相性の相手だった」

──マイアの動きはラウンドを重ねるごとに落ちていきます。

「あのスタイルは疲れますからね。僕もそうだけど(苦笑)。だから、初回に自分の形に少しでも持っていけたところで、そこを防がれると気持ちのダメージも大きいし。上手く試合を進められないようになると、負けない、逃げ出さない、投げ出さないということがやはりできなくなります。人間なので(笑)。

どうしても1人で戦っている時は、本当に越えられないと思ってしまうので。僕とはやっているレベルはかけ離れているけど、マイアの気持ちは分かります(苦笑)」

──組み技&寝技系のMMAファイターにとって、最初に良い形に入って仕留められない。そこからテイクダウンが遠くなるけど、組みに行って切られる。そして、最後はテイクダウン狙いから引き込む。これが典型的な負のスパイラルで、マイアもそのスパライルに完全にハマりました。

「僕も良くやるので、気持ちは分かります。そこで殴りにはいけないです。自分が信じてやっていることは、組み技なので。そりゃあ、局面を打開しないといけないことは分かります。でも、そんな簡単なことじゃない。

組むけど倒せず離れるという段階になると、相当厳しいです。どんどん消耗していっているわけだし。我慢比べになっていく。

だから理想論をいえば、そこで打撃が武器にできるようになれば──ってことなんです。練習でも組み技の連中も打撃の練習をして、試合でも使おうとする。ただし、殴りを選択するとダメージが蓄積するようになります。

打ち合わないと組めないから、組むために打ち合う。それも選択肢なんです。僕はそれをやるなら判定負けで良いじゃないかって思うから。アハハハ。ダメージを負いたくない。俺はそういう勝負にはいけない。それは断言するし、それで魅了がないと思われるならしょうがない。

メジャーなプロモーターに好かれるために、アグレッシブな打ち合いを演じて戦うと言う人もいるけど、人それぞれですよね。逆に皆がそっちにいくなら、僕の方が少数派で異質。そっちで良いです。

怖いからできないと言えること、それは強味だと思います」

──確かに私の業界でも、ノーといえるフリーは少ないです。それで心身ともにダメージを受ける。

「でしょ? ノーって言えない。そこをいうと弱さを見せることになるっていうので抗っていた時期もあるし、そういう人もいるはずです。だから、怖いと言える部分、もうやりたくないって言えるのが僕の武器でもある。

だって打撃でいけって、僕はもうそれはできない。怖さに抗うことはあっても、その解決策を打撃戦に見いだすことはできないです」

──では試合で引き込む段階になっても、パウンドを受けようが、寝技に付き合ってくれという気持ちになっているのですか。

「後手に回って引き込むってことは、半分負けて引き込んでいるんです。もう当たらないスクラッチくじを買っているようなもの。でも、一発当たるという気持ちをどこかに持って引き込む。その確率の低さは見ての通りです。そして、それでもその低い可能性を信じて勝ちに行ける選手がどれだけいるのかは……首を傾げざるをえないです。

僕の試合は多くの人に支持してもらえる戦い方じゃない。だから、メイウェザー×マクレガーのように大きなモノを得られることもない。それも分かって戦っています。自分が欲しい、必要な分だけ貰うことができれば良いので。

添い寝まではするけど、一緒に寝ようとは思わない」

──添い寝して自分で抜いている?

「その解釈は難しいし、凄く下品な例えですよ(笑)。でも自己満足ですよね、究極は。もうね、どれがメジャーかなんていえば、格闘技が好きだっていう時点でマイノリティですから。そのなかで色々な派閥がある。だからこそ自分の好きなことをやれば良いっていう方向になります。

Abeam TVで見城徹さんがやっている『徹の部屋』という番組があります。そこで見城さんが『個体の掟を大切するから、西野亮廣や前田裕二が好きなんだ』と言っていました。それと同じです。自分の尺度、物差しを持つ、自分のルールを持つということですよね。それで物事に取り組めば良いと思っています」

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