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【UFC207】ドミニク×ガーブラント。天賦の才を持つ者のみが許されたドミニク攻略方法(憶測)

garbrandt【写真】クリーンヒットは考えない。顔か頭部のどこかに右の拳を当てること。ガーブラントだけが可能になる、ドミニク攻略法が存在する (C)Zuffa LLC/Getty Images

30日(金・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 207「Nunes vs Rousey」。同大会ではアマンダ・ヌネス×ロンダ・ラウジーのUFC女子世界バンタム級の前にドミニク・クルーズ×コディー・ガーブラントの世界バンタム級選手権試合が組まれている。


前回のレビューで記した──手足に小脳が存在し、全てが連動しているかのようなドミニク・クルーズに挑戦するガーブラント。彼の最大の特長は、水垣偉弥をして言わしめた『経験したことのなりパンチの破壊力』であることは間違いない。

ミゲール・トーレスを始め、ユライア・フェイバー、フランシスコ・リベラというハードパンチャーと戦い、そしてドミニク・クルーズとも対戦経験のある水垣にこうまで言わせたガーブラントはキャリア10連勝中で9試合がKO勝ち。うち7試合が初回で試合を決めている。

一見、その強烈な右を打ち込んだ際にガードが下がり、頭もそのままの位置にあるようにも感じられるガーブラントだが、その実、パンチを被弾しているようでポイントをずらすような態勢を取ることができている。

ドミニクとは対照的な中間距離を得意とする彼はヒザがショックアブソーバーの役割を果たすかのように上下運動を繰り返し、体も左右に若干傾けて戦う。必殺の右の前に左を多用し、体の向きの微調整で相手の踏み込みを鈍らせる。

そして相手の正中線にあるのは頭ではなくて拳だ。この体を傾ける行為で相手のパンチのポイントをずらして、近い距離でも打ち勝つ。さらに打った後の姿勢が乱れないので、打ち終わりにパンチやテイクダウンを受けることも避けるように戦うことができるのが、ガーブラントの特長といえる。

姿勢が乱れない、よって無駄な動きが少なく、体の捩じり効果をパンチの威力に繋げている。このガーブラントのスタイルで、ドミニクのアゴ先に右を打ちぬくことはできるのか。答はきっと『否』だろう。ただし、打ち抜くことができなくても、その頭部、顔面のどこかに当たれば、他が持たないパンチ力でドミニクにダメージを与えることが可能になる。

パンチ力といのは、言ってみれば投手にとっての球速、単距離ランナーの走力と同じで、持って生まれた才能──天賦の才だ。努力だけで手にすることができる武器ではない。その持って生まれた能力が、ガーブラントには備わっている。

彼だけが持つパンチ力をドミニクを相手に、世界戦を戦ううえで最大利用するにはテイクダウン狙いを意識しないことだ。倒されるなら、倒された後のスクランブルのみに留意する。ここのサバイバル力こそ、ガーブラントが11戦目で世界王座につくポイントだ。

倒されても構わない、ヒットポイントを意識せず、とにかくドミニクの顔面か頭部のどこかにパンチが当たれば良い。その繰り返しがダメージの蓄積を生み、ドミニクに経験したことのない状況を与えることになる。

テイクダウンを防ごうと思えば、パンチの数は減り、ドミニクをより容易に戦わせることに通じる。逆にテイクダウンを捨ててまで、パンチに掛けるという姿勢がドミニクの高性能レーダーを狂わせることにも通じてくるだろう。

世界戦の挑戦者ほど、結果が全てという戦いはMMAに於いて存在しない。だからこそ、勝利への可能性の高い道を邁進することだ。ガーブラントにとって、それは拳を当てること。テイクダウンを許さず、ポイントを守ることではない。

どれだけポイントを失っても、25分間、1500秒の間にドミニクの意識を失くさせる。終着点をその一点のみ。一発で打ち抜くことが、地球上最も難しい相手と戦うのだから、どれだけ空振りが続こうが、『経験したことのなりパンチ』をヒット数を増やす。

精度でなく、数。この一戦で必要なのはコディー・ガーブラントが世界で一番強いファイターになることではない。ただ、ドミニク・クルーズを倒すこと。神より与えられし拳を持つ者だけが、許されるドミニク攻略方法だ。

■UFC207対戦カード

<UFC世界女子バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] アマンダ・ヌネス(ブラジル)
[挑戦者] ロンダ・ラウジー(米国/1位)

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ドミニク・クルーズ(米国)
[挑戦者] コディー・ガーブラント(米国/5位)

<ヘビー級/5分3R>
ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル/1位)
ケイン・ヴェラスケス(米国/2位)

<バンタム級/5分3R>
TJ・ディラショー(米国/1位)
ジョン・リネケル(ブラジル/2位)

<ウェルター級/5分3R>
ジョニー・ヘンドリックス(米国/6位)
ニール・マグニ―(米国/8位)

<ウェルター級/5分3R>
キム・ドンヒョン(韓国/9位)
タレック・サフィジーヌ(ベルギー/12位)

<ウェルター級/5分3R>
マイク・パイル(米国)
アレックス・ガルシア(カナダ)

<フライ級/5分3R>
ルイス・スモルカ(米国/12位)
レイ・ボーグ(米国/13位)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
アレックス・オリヴェイラ(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
アントニオ・カーロス・ジュニオール(ブラジル)
マーヴィン・ヴェットーリ(イタリア)

<ウェルター級/5分3R>
ブランドン・ザッチ(米国)
ニコ・プライス(米国)

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