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【UFC124】GSPが防衛成功、敗者いたわる余裕も

2010.12.12

■第11試合 UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R
[王者]ジョルジュ・サンピエール(カナダ)
Def.5R終了/判定
[挑戦者]ジョシュ・コスチェック(米国)

スクリーンに館内の通路を歩くコスチェックの姿が確認されただけで、ブーイングがわき起こる館内。ライトが落とされると、反対にGSPへの大歓声が発生する。かつて見せたことがないほど、厳しい表情のGSP。対するコスチェックも、さすがに試合直前には神妙な顔つきになっている。

左ジャブから、いきなりダブルレッグに成功したGSP。試合前の言葉通り、コスチェックもすぐに立ち上がる。再びスタンドの打撃戦になると、コスチェックが前に出てきたところでGSPがダブルレッグを狙うが、これは尻もちをつかせるにも至らない。


左ジャブ、左ローを繰り出すGSP、コスチェックが大きな振りの右フックを見せる。すぐに組みに行ったGSPを止め、ヒザを突き上げたコスチェック。コスチェックは真正面に回り込むが、GSPの右がヒットする。

ジャブから左を見せるGSPは、力を入れた打撃を繰り出す。これが打撃戦のためのパンチか、テイクダウンのための打撃か。右と右が交錯し、再び両者が距離を取ったところで王者の左ジャブが挑戦者の端面を捉える。

と、ここでダブルレッグを仕掛けたのはコスチェックだ。残り1分でGSPをケージに押し込む。差し返せないGSPに対し、コスチェックはダブルレッグに切り替えると、ついにテイクダウンに成功する。背中をマットにつけたGSP、残り10秒をトップで戦い終え、(アテにはならいが、今の傾向だと)コスチェックがポイントをとってもおかしくない1R終盤戦だった。

2R、右目の周囲を大きく腫らしたコスチェックに、GSPが左ローを放つ。左からの攻撃に神経質にならざるを得ない挑戦者だが、その左のスーパーマンパンチが軽く顔面をかすめる。2万3000人の声援を背にし、GSPは左インロー、左ストレートをヒットさせる。

コスチェックの右フックをバックステップでかわし、左から右を打ち込むGSPは、やはり左を中心に打撃を放ち、この3分間で1度もテイクダウンを狙わない。GSPの蹴り足を掴んで、テイクダウンを狙ったコスチェックだったが、GSPはスタンドをキープし、さらに左ジャブ、左ローを放っていく。

コスチェックの右を受け、すかさず右を返したGSPは、いつものように右ではなく左へ左へ回り、死角に入ろうと動きを続ける。さらにサウスポーにスイッチし、左ハイを見せるなど、GSPが攻め、コスチェックは終始守りの姿勢で2Rを消化した。

「待ち過ぎだ」とセコンドのボブ・クックの激を受けたコスチェック。互いに左を伸ばす3R序盤、コスチェックになくGSPにあるのが、左右のローキックだった。コスチェックの前進に、左へ移動したGSP。ここでテイクダウンを狙ったが、コスチェックはケージを背にしてワキを差し返すと、態勢を入れ替える。

再び態勢を入れ替え、コスチェックをケージに押し込んだGSPは、ダブルレッグへ。ここを耐えきる挑戦者。左ワキを差しあげたコスチェックの動きで、バランスを崩しかけたGSPが距離を取る。左ローを奥足に蹴り込むGSPは、攻撃を散らしてコスチェックを混乱させる。

頭から前に出たGSPだが、組みついてもまだテイクダウンを奪えない。脇を閉じたコスチェックは、ケージを背にした状態が続いているので首相撲など仕掛けたいところ。ここで距離を取った両者、コスチェックのダブルレッグをかわしたGSPは、左ジャブを繰り返し右ローで攻撃して、3Rを終えた。

インターバル中にドクターチェックを受けたコスチェックの右目は大きく腫れ上がっている。視界が塞がれつつある挑戦者に、意表をつくように右ローを繰り出すGSP。と、ここで組みついてバックへ回り込むと、コスチェックが足関節へ。体を捻って、トップを取ろうとしたGSP、コスチェックはすかさず立ち上がって胸を合わせる。

ケージ際の組み合いにレフェリーがブレイクを掛けると、距離ができたGSPは左ハイを放つ。前に出ることができないコスチェック。一瞬の交錯は、GSPが距離をとり、いつの間にかGSPのリズムで試合が進むようになっている。

闘牛=コスチェック、闘牛士=GSPという展開は、GSPの手数、精度が増す一方だ。左ハイの連打から、明らかに倒すことを意識した右をついにGSPが放っていく。コスチェックの左ハイは届かず、右目が塞がり距離感がつかめていないことを露呈してしまう。

闘牛が前に出られないと勝ち目はない。最終ラウンドに、セコンド陣は叱咤激励するが、コスチェックの表情はやや弱気に映る。左クロスを受け、姿勢が乱れたコスチェックが、ダブルレッグを仕掛けるが、踏み込みが甘い。

右ストレートから組みつこうとするコスチェックに対し、身を翻すように距離を取るGSP。簡単にコスチェックのシングルをかわした王者は、余裕を感じさせる左ストレートを伸ばしていく。それでも左ローで、前足を潰しくにいくGSPの前に、攻め手を完全に失ったコスチェック。思い切り振りぬいた右が無常に空を切る。

そこに右を被せたGSPは、続いて右足へシングルレッグを仕掛ける。残り2分、ケージ際で左ワキを差したGSP。盤石の態勢からダブルレッグを決め、逃げようとするコスチェックのバックに回る。胸を合わせたコスチェックだが、残り30秒で距離を取り直したGSPを捉えることはできず、左ストレートを受けてバランスを崩したところで、試合終了を迎えた。

右目の負傷で、思うように作戦を実行できなかったコスチェック。対して、その傷に付け込むように攻め方をアジャストした王者GSP。裁定結果をきくまでもなく、王者陣営は6度目の防衛成功を確信した

結果、ジャッジ3者が50-45、つまりコスチェックが思うように攻めたと思った1RもGSPが取るという裁定で、ベルトは元の鞘に収まった。まずフランス語で語ったGSPは、続いて英語で「コスチェックはサークリングからパンチを使うことは分かっていたので、ストレート系のパンチで勝負した。彼は凄くタフで、ファンのみんなには申し訳ない試合になってしまった。これはMMA、テイクダウンを狙ったけど、キックもパンチも使ってよいからね。コスチェックが試合前にアレコレ言ったのは、この試合のプロモーションだということをファンのみんなには理解してほしい」と、GSPは敗者をいたわる余裕のコメントを残した。

一方、完敗を喫したコスチェックも「GSPは本当のチャンピオンだ。できるだけのことはやった。このモントリオールの大会は、本当に凄い大会だった。いつの日か、ここに戻ってきてもっと良い試合をしたい。GSPは正真正銘のパウンドフォーパウンドだ」と発言し、最後はモントリオールのファンの拍手を受けてケージを後にした。

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