この星の格闘技を追いかける

【ADCC2019】99キロ超級─02─レスラー~モデル=柔術歴16カ月の青帯ロドリゲスがファイナルへ

Nick Rodriguez【写真】ニック・ロドリゲスはADCCがノーギ柔術とは違うことを明確として、決勝進出を果たした (C)SATOSHI NARITA

9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。

2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー21回目は最重量99キロ超級のBブロックの戦いをレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi


Rodriguez 01<99キロ超級1回戦/10分1R+ExR5分>
ニック・ロドリゲス(米国)
Def. by 本戦 0-0 延長 0-0 レフェリー判定
モハメッド・アリー(ブラジル)

ジョン・ダナハー門下の精鋭軍の最新メンバーのニック・ロドリゲスは、まだ青帯ながら強力なレスリングのバックグラウンドとバックテイクの力を武器に、現在グラップリング・シーンで旋風を巻き起こしている新鋭だ。そのロドロゲスと、昨年のスーパーヘビー級柔術世界王者のモハメッド・アリーの対戦は、今回の最重量級1 回戦最大の注目のカードだ。

Rodriguez 02スピードあふれるテイクダウンを持つロドリゲスは、当然レスリング勝負に。アームドラッグでアリーの巨体を振り回す場面を作ったと思えば、さらにスナップダウンから即座に背後に回ってみせる。しかしアリーも素早く対応して正対すると、場外際で大外刈り。すぐにロドリゲスが立ち上がると、カメラマン席に突入しつつロドロゲスを再びなぎ倒すアリーだが、ここはブレイクとなった。

その後もロドリゲスのスタンドレスリングに、アリーが柔道流のテイクダウンで応戦する攻防が続き、両者譲らないまま本戦が終了した。

延長戦でも足を飛ばすアリーと、スナップダウンで崩しにかかるロドリゲスの戦いが続く。やがてロドリゲスはスナップダウンからボディロックに入ることに成功するが、アリーは腰の強さで耐えてふりほどく。

動きの落ちないロドリゲスは、さらに低い姿勢でシュートインしてからシングルに移行する。が、アリーはそれを振りほどくと逆に浴びせ倒すもまた場外ブレイクに。

終了寸前、ロドリゲスは素早く潜り込んでの飛行機投げ。高々とアリーの下半身を舞わせるが、アリーもすぐに立ち上がると、すかさず組みついてきたロドロゲスに対し、こらえて逆に投げようとしたところで試合が終了した。

両者譲らぬスタンディングバトルのレフェリー判定は、仕掛けの多かったロドリゲスに。青帯ながら柔術世界王者をノーギグラップリングで倒してみせたロドリゲスは、15年の最重量級覇者「動かざること山の如し」ことオーランド・サンチェスとの一戦に駒を進めた。

Rodriguez 03<99キロ超級準々決勝/10分1R+ExR5分>
ニック・ロドリゲス(米国)
Def. by 本戦 0-0 マイナスポイント 0-1
オーランド・サンチェス(米国)

開始50秒、ロドリゲスはスナップダウンでサンチェスの巨体を前のめりにさせると、すぐにバックに入りフックも入れることに成功。2015年の本大会最重量級にて、その戦車の如き体型を利して決して倒れず優勝を勝ち取ったサンチェスのバランスを、新鋭ロドリゲスはあっさり崩して見せたのだった。

しかしこれはまだ加点前。グレイシー・バッハの黒帯柔術家であるサンチェスは、ロドリゲスのチョークの腕を振りほどきながら、回転して体をずらしてエスケープに成功したのだった。

試合は再びスタンディングの攻防に。前に出てスナップダウンやローシングル等で仕掛け続けるロドリゲスと、それを凌ぐサンチェスの展開が続く。やがてサンチェスはディフェンスのみで攻撃を仕掛ける場面がなくなり、レフェリーからマイナスポイントを宣告された。

Rodriguez 04終盤、両者頭を付けた状態から押してゆくロドリゲスに対し、サンチェスはスナップダウンからのがぶりを狙う。しかし素早く脱出したロドリゲスは、逆に疲労で動けないサンチェスの背後に回ったところで場外ブレイクに。バックに付いた状態での再開後、フックを狙うロドリゲス。疲労困憊のサンチェスは絶体絶命かと思われたが、ここは素早く巨体を前転させて、スクランブル。見事にロドリゲスを振りほどいてスタンドに戻ってみせたのだった。

最後に意地を見せたサンチェスだが、その後反撃するには至らず。スピードとスタミナで上回ったロドリゲスが、またしても大物喰いを果たして準決勝進出し、さらなる大物──13年本大会の無差別級王者のサイボーグことホベルト・アブレウ戦に駒を進めたのだった。

Rodriguez 05<99キロ超級準決勝/10分1R+ExR5分>
ニック・ロドリゲス(米国)
Def. by 本戦 0-0 延長 0-0 レフェリー判定
ホベルト・アブレウ(ブラジル)

試合開始後すぐに引き込んだサイボーグは、得意のハーフで絡んでのスイープを狙うが、ロドリゲスは腰を引いて対応する。サイボーグはかつてメタモリスでのブレンダン・シャウブ戦で、シャウブがひたすら腰を引いて防御に徹したため展開を作れず鬱憤を溜めたことがあったが、少しそれを思い出させるような展開のなか、試合が進行していった。

Rodriguez 06やがて5分をすぎ加点時間帯に入ると、ロドリゲスは横に豪快に飛び、またほとんど側転のような形でのパス狙いへ。すかさず反応して正対するサイボーグは、逆に横回転からの得意の仕掛けを狙うが、ロドリゲスは危ないと見るやすぐに離れてみせる。残り1分近く。ロドリゲスは右に大きく飛んでのパス狙いへ。サイボーグの頭に回り、上四方を取りかけるロドロゲス。うつ伏せにスクランブルしたサイボーグは、背中にロドリゲスを乗せたまま立ち上がると、豪快にスラム。

Rodriguez 07すぐに立ち上がったロドリゲスは、やはり立ち上がってきたサイボーグに内股一閃。両者の巨体が1回転半するほどの勢いで投げたロドリゲスは、さらにサイボーグのバックに。しかしサイボーグもすぐに前転して正対する。再び上のロドリゲスと、下のサイボーグという形に戻ったのだった。

Rodriguez 08残り30秒。ハーフで絡むサイボーグに対して、ロドリゲスはやや不用意にその頭をステップオーバー。ここでサイボーグはすかさず立ち上がってロドリゲスのバックにつくことに成功。残り時間が少ないことを悟ったサイボーグは、ここでフックを狙わずにファーサイドの左腕にアームバーを仕掛ける。

Rodriguez 09一瞬左腕を伸ばされかけたロドリゲスだが、素早く回転してエスケープ。そのままロドリゲスが逆にバックを狙うなかで本戦が終了した。

ロドリゲスはジャンプしてスタミナが残っていることをアピールするなか、スタンドから開始された延長戦。両者頭を付け合った状態から、ロドリゲスはスナップダウンのフェイント。逆にサイボーグもロドリゲスの片足に手をかけるが、ロドリゲスもすぐに逃れた。

Rodriguez 10やがてサイボーグは飛び込んで左足を狙ってのシングルレッグ。すかさずロドリゲスがふると、しばらく亀の体勢を維持してからサイボーグは引き込み。これは亀というポジションが成立したとみなされてからの引き込みなので、減点はなし。点差が開かないまま、両者は再び上下のポジションになったのだった。

動きの止まらないロドリゲスは側転パスを二度連続して繰り出すと、さらに両足担ぎに。しかしサイボーグのガードは超えられない。残り1分。今度はヒザを入れてのパスを試みるロドリゲスだが、これもサイボーグに防がれて試合終了。勝利を確信したサイボーグは、何度も大きく咆哮してみせた。

Rodriguez 11結果、レフェリー判定はロドリゲスに。次の瞬間サイボーグは何やら叫びつつレフェリーの手を引きちぎって勢いよくヒザをつき、マットを叩いて全身で不満を表現。怒りと不信感を露わにしてマットを去ったのだった。

試合後にサイボーグは「ニックはグッド・キッドだが、この試合で彼は決して勝利していない。ずっと逃げていたじゃないか。対して俺は腕を極めかけた」と主張。抗議として3位決定戦も無差別級へのエントリーもキャンセルすることを表明した。対するロドリゲスは「試合を通して終始攻めていたのは自分。サイボーグは防御に徹していた」とまったく逆の見解を披露。

とまれ──柔術歴1年4カ月、基本とレスリングも大学1年の時に34勝4敗のレコードと全米12位のランクを残し、フィットネスモデルに転向。モデル業のためにシェイプを保つために始めた柔術で、米国東海岸予選を経て初出場にて大物3連破という快進撃を見せた新鋭ロドリゲスが、決勝進出。Aブロックでこれまた超大物のマーカス・アルメイダを倒したカイナン・デュアルチとの新世代決戦に駒を進めた。

PR
PR

関連記事

Movie